では、どうして空気を読むことが消極性を生み、自分で考えられなくなる原因となるのか。まず、考え、考えさせられるというのは、課題やプレッシャーでしかありません。課題やプレッシャーを楽しめるような人なら話は別ですが、多くの人は辛い思いを避けようとし、なるべく考えないように消極的になっていきます。
思考停止の悪循環に陥ってしまうそれとは対照的に、「空気を読むのだから、周りや状況をよく考えている」との意見もあります。しかし、実は空気を読み、考えているのではなく、ただ周りに気を遣っているだけです。
しかも、この心理は無意識に働くため、本人が意識しているわけではありません。このような心理が働けば、自分のことばかり考えて物事を客観的に見ることができなくなり、徐々に思考が自分の内側に向いてしまい、周りに対して消極的になります。
すると、「自分はこんなにダメな人間なんだ」と自分を責めるようになり、周りに対して気を遣うも、なかなか合わせられず、期待に応えられない自分を更に責め続け、最終的にはどうしたらいいのかわからなくなって思考停止の悪循環に陥ってしまうのです。
空気を読むことを優先して思考力を失わないつまり、空気を読み過ぎれば自分を責めてしまう心理が働き、物事に対して消極的になるばかりか、思考が停止して何も考えられなくなる危険性もあります。
ただでさえ空気を読むのに必死で疲れているにも関わらず、その上、責任を負わされるなど、プレッシャー以外の何物でもありません。今やビジネスにおいても発想力や思考力といった「考える力」は、あらゆるシーンで求められています。しかし、いくら考える力のある人でも、一度考えられなくなり消極的になれば、うつ病などの精神疾患を患って社会復帰を困難にさせます。
(宮本 章太郎/心理カウンセラー)