1960年代に一大ブームとなったグループ・サウンズ(GS)。ザ・スパイダースやザ・タイガースなど多くのグループが活躍する中で、オックスも人気のあるバンドだった。
そのオックスのメンバー赤松愛の“失神”が、GSブームを終わらせたというのだ。

沢田研二堺正章萩原健一など、GS出身で今も芸能界で活躍する者は多い。彼らを語る際には、今でもGS全盛期の様子が紹介されることもある。リアルタイムには経験していない世代も、1967年から69年に起こったGSブームの爆発的で熱狂的な状況は見聞きしているのではないだろうか。

音楽評論家の大貫憲章は、ちょうどその頃に青年期を送っている。パンクロックやUKロックに詳しいことで知られる彼が、6月27日に渋谷のOrgan-Barでトークイベントを行った際にそのGSブームについても触れているのだ。
大貫憲章オフィシャルブログ『BOOBEE』では、その時の詳細が綴られている。

テーマは“80's UK New Wave”だったが、頭と終わりの時間で貴重なGS映像などそれ以外のジャンルも紹介したという。「思うに一番ウケたのは、GSの部分のほんの数秒間の映像、題して『赤松愛、失神弁明の巻』ではなかったかな?」と彼も驚いていたのが、GS“オックス”のオルガン奏者、赤松愛の人気だった。

赤松愛はオックスのステージで演奏に熱狂するあまり、失神することが話題となって観客も急増したのだ。ところが「人気を取るためにわざと失神しているのでは」という疑問も多く、あるレポーターが彼に直撃取材した。大貫は当時のそのニュース動画をブログでも紹介している。


その時、赤松愛が語った内容はこうだった。「失神のことですが、あれは思いっきりハートを込めてやっているので“陶酔”であり失神ではないと思うのです」。理由がいかにもこじつけであり、その語り口は“舌足らず”で特徴的。憎めないようで、またバカにされた気にもなる。

動画では「赤松による弁明も空しくGSのコンサートは続々と中止に追いやられた。これによりGSブームは急速に衰退して一気に終わりを告げるのである」とナレーションが締めくくる。
GSブームの人気を象徴する赤松愛の“失神”が、実はその衰退を早めたのだ。

「当時の“ヤラセ”がこうも分かりやすかった」ことに対して、トークイベントでは盛り上がったようだ。大貫は現在の芸能界が“仕掛け”が複雑で難解になったことについて「ある意味、ぜんぶウソなのかも」と指摘する。

また、彼はAKB48を例に出して、メンバーはともかく「周囲のオトナたちは度を越しており、まるで笑えません」と危機感を示している。また「それに較べりゃカワイイ失神騒動です」と赤松愛の件を比較するが、それでも“ネタ”だったことは間違いないだろう。政局をはじめ社会が混迷するなかで、エンタテインメントの世界はシンプルで明快であって欲しいものだ。

(TechinsightJapan編集部 真紀和泉