芦田愛菜(9)主演の児童養護施設を舞台にした連続ドラマ『明日、ママがいない』(日本テレビ系)の第6話が19日に放送された。熊本県の慈恵病院や全国児童養護施設協議会などから「施設の実態と違いすぎる」「イジメの原因になる」などと抗議され、日テレ側が「子どもたちに配慮する」と内容変更を明言していた同ドラマだが、第6話の作中でクレームに対する“反論”をしたのではないかと話題になっている。
第6話では、施設の卒業生で職員として働くロッカー(三浦翔平=25)が過去のトラウマから警察沙汰を起こし、子どもたちが「自分たちまで白い目で見られたくない」と彼を施設から排除しようとする場面があった。これに対して今まで悪役だった「魔王」と呼ばれる施設長の佐々木(三上博史=年齢非公表)が子どもたちを集め、その間違いを丁寧に諭すというシーンがドラマの山場として用意された。
この長ゼリフが、抗議団体に向けた番組側からのメッセージになっているのではないかといわれている。具体的に抜粋すると以下のようなものだ。
「大人の中には価値観が固定され、自分が受け入れられないものを全て否定し、自分が正しいと声を荒げて攻撃してくる者もいる。それは胸に『クッション』を持たないからだ。
「この世界では、残念だが目を背けたくなるような酷い事件や辛い出来事が実際に起こる。だが それを自分とは関係ない、かかわりたくないとシャッターを閉めてはいけない。歯を食いしばって一度心に受け止め、何が酷いのか、何が悲しいのか、なぜこんなことになってしまうのか、そう考えることが必要なんだ」
「うんざりだろ? 上から目線で『かわいそう』だなんて思われることに。
「いいか最後にもう一度言うぞ。一度心に受け止めるクッションをその胸に持ちなさい。
抗議前から決まっていたのか、クレームがあって変更したものなのかは不明だが、番組側からの“反論”としてもシックリくる内容だ。このセリフに対し、ネット上では「ドラマ制作者の心の叫びが聞けてよかった」「クレーマーはクッション抱いて聞くべし」「魔王がまさかの金八先生に」「クレーマーのおかげで神回が生まれたな」などといった賞賛の声が多数挙がっている。
「騒動のきっかけは、第1話で三上演じる施設長が子どもたちに『お前たちはペットショップの犬と同じ』などと言い放ち、平手打ちをするなどの過激なシーンだった。しかし、それがあったからこそ今回の施設長の言葉や本当の人格が視聴者の胸に迫ってくる。そういったフィクションの仕掛けを理解してもらえないと、制作側は本当にドラマが作れなくなる。
そんな中、騒動の思わぬ余波も生まれている。個人が運営する三上のファンサイトに抗議が殺到し、閉鎖に追い込まれてしまったのだ。
母娘二代で三上のファンだという運営者は、今月19日に「実在の児童養護施設のかたから、うちのサイトにも苦情のメールが届きました」と報告。その抗議は「あんな職員はいない」「ドラマのせいで誤った認識をされる」「三上博史のせいだ」「子供に何かあったらどう責任をとってくれるんだ」といった内容だったといい、サイトの閉鎖を迫られたという。運営者は何度かメールのやり取りをして精一杯の対応をしたものの「ただ『子供が傷付く』と繰りかえされ、こちらの思いは受け入れてもらえなかった」とのことだ。
「まるで戦犯探しか魔女狩りのよう」と嘆く運営者は、母親が入院中で自身も受験生として多忙なためこれ以上の対応ができず、抗議のヒートアップに身の危険を感じたこともあり、同日にサイトを閉鎖してしまった。
施設の名をかたったイタズラの可能性もあるが、少なくとも三上は用意された脚本と演出に沿って演技しただけであり、しかも公式ですらない私設のファンサイトが抗議を受けたのであれば完全にトバッチリである。ドラマの内容に抗議の声があるのは事実だが、それに乗じた異常なクレーマーが増殖しているようだ。
第6話は平均視聴率11.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と過去最低を記録した『明日ママ』だが、五輪の影響で軒並みドラマ視聴率が下がっている中で第1話から二桁をキープしており、全話平均は『S -最後の警官-』(TBS系)に次ぐ今クール第2位に位置している。注目度は依然として高く、ドラマの内外で波乱が巻き起こっているだけに今後も目が離せなさそうだ。
(文=佐藤勇馬/Yellow Tear Drops)