毎朝の情報番組『ZIP!』(日本テレビ系)の「にっぽんわくわくキャラバン」。2014年4月より、シンガーソングライター・渡邊ヒロアキが「相棒犬」ジジ・ププと共に、全国を旅しているコーナーだ。



 本来、お茶の間を和ませる企画なのだろうが、見るたび違和感を覚えることがある。それは、ジジもププも、旅人のヒロアキくんにまったく懐いていないこと。

「な! ジジ(あるいはププ。以下同)」などと、ヒロアキくんがいくら笑顔で語りかけてみても、ペロペロ舐めたり、じゃれたりすることがないどころか、ヒロアキくんのほうに顔を向けることすら一切ないジジとププ。ヒロアキくんがジジの隣にひざまずき、カメラ目線でしゃべっている間も、あさっての方向を向いているし、話し終わっていないのに走りだそうとすることもしばしばだ。

 あまりの懐かなさ、息の合わなさにヒロアキくんが気の毒になるほどだが、ヒロアキくんはヒロアキくんで、一人でおいしいものを食べてジジやププにはニオイだけ嗅がせたり、ジジやププをつないだまま自分だけスポーツやレジャーをしたり、犬と一緒に楽しめる企画や、犬のためのレジャー・ご褒美がまったくないのも事実。


 こうした疑問の声は、「いつもワンコが戸惑った顔してるように見える」「なんでヒロアキはいつも犬に食べ物の匂い嗅がせるの? 絶対やらないくせに毎回匂い嗅がせてかわいそうだわ」など、ネット上にも散見される。

 それにしても、本来、見ず知らずの人にすら尻尾を振り、人懐こいはずの犬が、一緒に旅をしている人間にまったく懐かないって、どういうことなのだろうか?

 ジジとププは、「スタンダードプードル」という犬種らしいが、もしかして人に懐かない種類なのか? あるいは、よく訓練されているタレント犬は懐かないのか? 家庭犬出張トレーニング「ドッグテックジャパン」のエリアマネージャーで、家庭犬行動セラピストの山田夏子さんに聞いたところ、「番組で犬の様子を実際に見たことはない」とのことで、一般論として以下の回答をくれた。

「一般的に、スタンダードプードルが人に懐かない犬種ということはないと思いますし、『タレント犬だから懐かない』ということもないと思います。タレント犬になるのであれば、ある程度訓練されていることは必要かと思いますが、人に懐かない訓練というのは通常はしないでしょうし、警戒心は逆に強くないほうが向いていると思います。なぜなら、訓練したトレーナーの言うことしか聞かない、トレーナーしか見ていない、というのでは、タレント犬としてはとても使いにくいでしょうから」

 ちなみに、ジジとププがあまり吠えないことも、一部ネットでは指摘されるが……。

「もちろん、やたらと吠えないように、ある程度しつけられていることは、あると思います。
犬や動物、人に向かって吠えまくるような犬では人気者になれないと思いますし、食べ物を欲しがったり、かまってほしくてやたらと“要求吠え”したりするような犬も困るでしょう」

 時には、一緒に行動せず「放送後に合流」なんてナンセンスな回もあったが、結局、まだ十分に信頼関係が築けていないのだろうか?

「実際に旅人を演じている方とタレント犬たちが、どの程度絆を築いているのかわかりませんが、普段はトレーナーなり本当の飼い主と生活をしていて、収録の時間だけ犬を借りているのでしたら、やはり現場でその辺にいるトレーナーなり飼い主を探してしまうかもしれません。例えば、カメラが回っていない時に犬たちとよく遊んだり、お散歩をしたり、食べ物を与えたり、そのような交流があれば、『よく馴れているな』と感じるような振る舞いが見られると思います」

 もしかしてヒロアキくんが語りかけているとき、「あさっての方向を向いている」と感じるのは、トレーナーか飼い主を探している時だったりする!?

 ちなみに、「犬の行動に精通しているトレーナーの間では、あのコーナーはすごく評判が悪いです」と山田さんは言う。

 毎朝、犬の姿を見て、素直に無邪気に「かわいい」「癒やされる」とだけ言っていられない不思議な空気が、やっぱりあのコーナーにはある。