この発想はなかった! といえるゲームは、いいゲーム。

今回レビューする「Anomaly Warzone Earth」もまた、そうしたタイトルの1つです。


iPhoneアプリで急速にメジャーになった「タワーディフェンス」。イナゴの大群のように攻め寄せる敵の大群を、砲台などを作って撃退していくゲームのジャンルです。FFの世界観で遊べる「クリスタル・ディフェンダーズ」は好例です。

ところが、この逆をいくゲームが登場しました。多数の敵ユニットで防御された陣地を、ルートを指定しながら攻略していく、「タワーディフェンス」ならぬ「タワーオフェンス」なんです。

ゲームはエイリアンの侵略を受けた近未来の地球が舞台。
プレイヤーは司令官となって攻撃チームを編成し、敵陣地を攻略していきます。

最初に予算内でユニットを選択しましょう。進行ルートを道なりに設定すれば、ゲーム開始。ゲームはリアルタイムに進行し、ルートに従って攻撃チームが進んでいきます。ユニットは一列に進んでいくので、先頭に防御力の強い車両を配置するのも忘れずに!

敵ユニットに近づくと、自動的に攻撃開始。そのままでは数の暴力で撃破されるので、回復アイテムや煙幕アイテム、おとりアイテムなどを使って、敵を撃破していきます。
アイテム選択後にステージをタップすると、その周辺で一定時間、アイテム効果が働きますよ。敵を撃破すると、時々アイテムがゲットできるので、回収しながら進めましょう。

こんなふうにしてゲームを進めていき、ステージごとに決められた条件(ゴールにたどり着く、特定の敵ユニットの排除、ユニットをゴールまで輸送するなど)を達成すると、ステージクリアです。

あ、ゲームは全部英語ですけど、内容はシンプルだし、ストーリーもあってなきが如しだから、大丈夫。意味がわからなくても、十分に楽しめます。

ユニットには戦車、装甲車両、ロケット車両、シールド発生車、大型戦車、補給車両があり、それぞれ特性が異なります。
敵ユニットを撃破すると資金が増えるので、ゲーム中にユニットを追加したり、アップグレードもできますよ。相手側もレーザーやキャノン砲を発射する6種類のユニットがあり、多彩な攻撃で待ち構えます。

タワーディフェンスはリアルタイムに状況が変化していく中、限られた予算でどのような防御陣地を構築していくかという、「陣地育てゲー」的な要素があります。本作は「育てる」意味合いは薄いんですが、リアルタイムに采配をふるう楽しさ、忙しさは健在。脳みそのふだん使ってない部分が、ちりちりする感じなんですよね。

不幸にして部隊が全滅しても、チェックポイントがたくさんあるので、最小限の手戻りでリトライできます。
進行ルートの変更も随意にできるので、後半になると、ちょっと進んではやりなおし、またちょっと進んでは……という展開になりがち。でも、このプチ達成感の連続が、また楽しかったりするんですよね。

難易度は三段階で、ステージごとに変更できます。一番簡単なカジュアルモードでも、後半になるとかみ応えが出てきます。タワーディフェンス好きでも、まずはカジュアルモードで一周してみてください。ステージごとにハイスコアを競ったり、メダルを集めたりする要素もあるので、長く楽しめます。


もう一つの特徴が、iPhoneアプリでも上位クラスに入る美麗なグラフィック。もともとWindowsやMac版で人気を博したゲームの移植版とのことで、納得です。本年6月には「Apple Design Award」も受賞。満を持してiPhoneそしてiPad版がリリースされました。パブリッシャーはiPhoneアプリ大手のChillingoですが、開発スタジオはポーランドの11 bit studios。今やもう、世界中でおもしろいゲームが作られる時代なんですね。


ゲームデザインって何か、天才がゼロから発明するようなイメージがありますが、実際は既存のゲームアイディアを土台にして、そこから枝分かれしたり、複数のアイディアが融合したりして、進化していくことが多いんです。たとえば本作なら「定番ジャンルの逆のゲームを作ろう!」といった具合です。

でも、いざ作り始めると、なかなかうまくいかないんですよ。すぐにいろんな矛盾に突き当たっちゃう。進行ルートを決めて見守るだけの、何がおもしろいんだ? とかね。

そうした凸凹を一つずつ丁寧につぶして(じゃあアイテムを使って、自ユニットをとりまく環境を変化させるところに、操作の楽しみをもたせよう)、誰でも楽しめるゲームに仕上げた。そんなゲーム職人の技を感じる良作です。なんといっても、これが170円は、お買い得すぎますって! ぜひチェックしてください。
(小野憲史)