もし江戸時代にタイムスリップしたらどうしよう。
せめて冷蔵庫の中を片付けてからお願いしたい。


漫画『JIN-仁-』は脳外科医「南方仁」がひょんな事から138年前にタイムスリップしてしまうそんな困ったお話だ。
2月4日には最終巻も発売され約10年の連載を経てその物語に終止符を打った。

仁は江戸時代で四苦八苦しながらも懸命に生きていくが、もし自分が同じ状況に陥ったらと思うと……ヘビーだ。
だって幕末だもの、当然ケータイもパソコンも無い時代。
テレビどころかラジオも無い。
ましてやそんな時代で外科手術なんて出来るはずも無い……
と、思うじゃないですか。

出来るんですよ。

「麻酔をかけます、エーテルをください」
外国人の水兵が侍に切られた時に仁は手術をする。
自分が持つ未来の技術でなら助けられるであろう目の前の病人、怪我人を放っておけず江戸時代でも医師としての活動を始めていたのだ。
しかし江戸時代にそんな高度な物があるわけないじゃないか、と次のコマに目を移すと
「エーテルを? クロロホルムの方が導入が早く楽ではないか?」
なんて普通に返答するその時代の医師が。
あ、あるんだ!?
138年前に麻酔あるんだ?
お侍さんが刀をぶら下げてる時代だと思って油断していた。

さらに仁は職人に依頼して様々な医療器具を作ってもらう。

なかには注射針なんて物も。
幕末の職人があんなに細くて中が空洞の針を作れるなんて。
ほかにも点滴の道具、遠心分離器などなど、実用性は抜群だ
そういえば以前「横浜美術館」で「ポンペイ展」というのを見に行った時、約2000年前のベルトのバックルが現代でも使われている物とほとんど同じで驚いた。
ユニクロで買ってきたんじゃないのかと疑ったほど。
その展示では蒸気を利用した当時の床下暖房施設まであった。
昔の職人って僕が思ってたよりすごいレベル高いのだなぁと痛感する。


さらに2009年に放送された「JIN-仁-」のドラマでは
「ゴム管って……あります……?」
「あります」
「あるんですか!?」
というシーンもある。
思わず僕も一緒に「あるんですか!?」と聞いてしまった。
幕末にもゴムがあるのか。
そもそもゴムの素材ってどうやって手に入れるのかもよく分からないよ。教えて江戸い人。

『よくわかる最新ゴムの基本と仕組み』を読むとゴムはあのコロンブスが500年以上前に世界に発表していたという。

卵を立てるだけのイメージしか無かったコロンブスだったがゴムの存在にも大きく関係していたようだ。
さらに西暦1839年にはグッドイヤー社がゴムの改良に成功。
僕は以前靴屋でアルバイトしてたけどもちろんグッドイヤーの靴も扱っていた。
そんな昔からある会社だったのか。
そういえば『JIN-仁-』でも醤油の「ヤマサ」がペニシリンを作るために倉と人員を貸してくれるシーンがあった。
知っている会社の名前が出て来ると、江戸時代もなんだか近くに感じる。

ちなみにゴムが日本に入ってきたのはペリー来航と共に、のようだ。
学生のころ歴史のテストは赤点ばかりだったけどこう身近な物から攻めてみると面白い。

さて、漫画はすでに最終回を迎えた『JIN-仁-』だが今春からはドラマの2期も始まりこちらでもしっかりと完結させるらしい。
ドラマには漫画に無いオリジナル要素を組み込んでいて原作をくまなく読んでいる読者にも新たな楽しみがある。
普段ドラマはあまり見ない僕だが「JIN-仁-」は今から楽しみだ。(渡りに船/イラストも)