本日、『金曜ロードSHOW!』で『耳をすませば』が公開されます。
どのくらいの数の「鬱だ」「爆発しろ」ツイートが飛び交うか、今から楽しみですね。

あんな青春なんて!……うらやましいなあ。

さて、『耳をすませば』の舞台は多摩市聖蹟桜ヶ丘です。
主人公の雫の住む、いかにも日本的な団地。京王線聖蹟桜ヶ丘駅。地球屋のあるロータリー。告白された神社。
秘密の場所……いずれも実際に見ることができます。
耳をすませばモデル地案内マップ

この町では、『耳をすませば』を地域活性化につなげたい、という思いから、現在では観光としての取り組みがなされています。
いわゆる町おこし。現在は有名な観光地になっていますが、……これがなかなか苦労の道を追っているので、ちょっとご紹介します。

聖蹟桜ヶ丘で、『耳をすませば』の町おこしが始まったのは、2005年でした。
ここで、あれ?と思った人は鋭い。

そうです、『耳をすませば』は1995年の映画。
舞台になっているとわかっていても、動き始めたのは10年も後なんです。

最初に行われたのは、公開10周年記念として、地元大学と商店街による、10周年記念イベントでした。
16mmフィルムでの上映や複製背景画展などで、三日間でおよそ2500人が来場します。
中心になった人は、猛烈な『耳をすませば』ファンの大学生。10周年であるからにはなにかやりたい!という熱意ではじまったものです。


これは「大成功」ですが、町おこしに大事なのは「有名であるか」「ネタとして楽しいか」だけではありません。
「一過性にならないよういかに続けるか」が一番大事なことです。

どう地域を盛り上げていくか考えるため、「せいせき観光まちづくり会議」が発足。
大学生や商店街の有志のみならず、市民、行政を巻き込んだ任意組織が誕生します。本格化ですね

ここで大問題が出てきます。
『らき☆すた』『サマーウォーズ』『ガールズ&パンツァー』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
』など、町おこしで成功しているところはだいたい、アニメ制作会社と地域が密接な関係を保って、版権絵が利用できることが多いです。
ところが、『耳をすませば』は具体的に、「ここが舞台です」とスタジオジブリが明言していない。そのため、版権絵を借りたり、協力を仰いだり出来ない。公認しようがないのです。
紛れもなくロケ地であることには変わりありませんが、確定じゃないのでOKできない。一切版権絵や設定を使えない。

それでも、ファンは観光にやってきます。さてどうする?

ここで考えられたのが、一つ目は先ほどリンクにも貼った、モデル地案内マップです。
見ての通り、『耳をすませば』の解説をしていますが、基本的に手書きイラスト。
このモデル地案内マップってすんごく「アニメ町おこし」には重要。だって、ロケ地を見に来たんですもの、どこに何があるか知りたい。

次に「せいせきハートフルコンサート」。

『耳をすませば』といえば、欠かせないのが「カントリーロード」ですが、これを月島雫役の声優、本名陽子を招いて行い、日本全国から観客が来るようになりました。
それは聞きたいよ生で!現地で!

そして、定期的に「ロケ地ツアー」を行うことになりました。ツアーガイドはボランティアで、市民が自主的に講座をうけてやっています。
多摩市「まちあるきガイド養成講座 ロケ地ガイドになろう」(PDFファイル)

ここで問題が再び。
聖蹟桜ヶ丘は、本来閑静な住宅街。別に「観光地」ではないんです。
そりゃー、住宅地にわんさか観光客が押し寄せてきてバシャバシャ写真撮ったりしたらド迷惑なわけで。
一時期は住民から苦情やイベント中止の訴えも出ます。仕方ないことです。
これをなんとか解消するため、上のようなガイド養成講座が定期的に開かれたり、地元町内会でツアーがどのように行われるか根回しされたり、ファンのマナーの徹底化を呼びかけたりと、努力が積み重ねられています。

2012年4月8日には、京王電鉄と多摩市の協力により、聖蹟桜ヶ丘駅の電車接近メロディが「カントリーロード」になります。
ロケ地めぐりする人には、駅は欠かせないポイントなのでこれはうれしい。しかも1番線と2番線で流れるメロディが違うという凝りようです。

どんどん町を巻き込んで、聖蹟桜ヶ丘は『耳をすませば』の観光地として大きくなっていきます。
ジブリから許可は出せない部分が多いものの、うまーく人力で盛り上げ続けている。
特に今回の放映のように、定期的に映画がテレビで流れるため、観光客も定期的に増え続けているというのは、ポイントの一つです。

その後、駅前には「地球屋風モニュメント」も設置。
あくまでも「風」ね。そのままはムリなのです。ここも努力してやっとこぎつけたもの。
桜ヶ丘の地元まちづくり協議会と連携するための打ち合わせをして、来訪者に地元集会所が使えないか話し合いもされています。
もちろん来た人はおみやげや食事もするので、桜を利用した特産品「せいせきさくらふぶき」を制作。

『耳をすませば』が大好きな人達が、本気で自力で作り上げ、多くのファンを喜ばせるための町づくりをしている。
映画を見てから、聖蹟桜ヶ丘に行って、雫と同じ道を走るのも楽しそうです。
あ、訂正。走ったらダメですね、静かにね。

ところで、雫が杉村に告白されてしまう神社、金毘羅宮に、あるものが設置されているそうです。
それは恋みくじ
ワハハハ! ……自爆覚悟で回したいものです。

(たまごまご)