バルス! 今日の「金曜ロードSHOW!」は『天空の城ラピュタ』。何回やるんだよって感じだが、何度でも観てしまうからしかたない。
劇場では『風立ちぬ』が絶賛公開中。
そこで、今回は『天空の城ラピュタ』をさらに楽しく観るために疑問に答えていくよ。

疑問は5つ。
疑問1:ラピュタはなぜ浮いているの?
疑問2:宮崎駿がドラえもんを演出したらどうなるの?
疑問3:実写版ラピュタがあるって噂は本当?
疑問4:フラプッターはどうやって羽ばたいているの?
疑問5:「バルス!」に込められた思いは?

【疑問1】ラピュタはなぜ浮いているの?
『天空の城ラピュタ』を観るとき、いま一番たよりになる本が、『ジブリの教科書2天空の城ラピュタ』。本書の帯の言葉が「ラピュタはなぜ浮いているの?」だ。
宮崎駿監督が同書に掲載されているインタビューで、この疑問に答えている。

「いや、そんなものはどんな理屈でもくっつくから、とくに考えてはありません。なんで浮いているかといったって、浮いているんですから(笑)。あとは浮いている感じが出ればいいんで、逆に、これで浮いているんだといって、大きな心臓部のエンジンを見せたとしても、観客は納得しないですよ。島を浮かせている飛行石そのものが魔法なんですから、いちいち説明してもしようがないわけです。観客は、その魔法に期待しているわけじゃなく、それを使って、人間の活動が拡がること、地面から離れられることを期待しているわけだしね」
宮崎駿監督は、たびたび設定や理屈はアニメで描ききれないし、描いている暇はないと答えている。
監督は、つづけてこう語る。

「物事に何か理由をつけないと落ち着かないというのは、想像力の領域に対する自信のなさだと思います」


【疑問2】宮崎駿がドラえもんを演出したらどうなるの?
突然、バカバカしい疑問だと思った人もいるだろう。でも、実は宮崎駿監督は「ドラえもんが空を飛ぶ、それをアニメーションでやるとしたら」という疑問に答えているのだ。
83年12月8日、宮崎駿と藤子不二雄の座談会(『映画天空の城ラピュタGUIDE BOOK』収録)の中でこう語っている。
「ドラえもんが空を飛ぶ、それをアニメーションでやるとしたら、たとえば踏み出したときに、フッと力がたまってね、そこに空気があるという感じがわかって、落ちるかなと思ったら、ウッととまって飛んでいく、そんな感じが出せたらいいなあと思いますね」
これ、観たい!!
一話でいいから、ぜひ宮崎駿版ドラえもんを観てみたい。

【疑問3】実写版ラピュタがあるって噂は本当?
友達が言った。「ラピュタって、ハリウッド実写版があるよね?」
ええええー、ないない。
知らないよ。
「なんか、映像を観た記憶がるんだよなー」
こいつ寝ぼけてるのか、と思ったのだけれど、なんと、実写映像は存在していたのだった。
といっても、ハリウッド実写映画版ではない。
CMだ。
ライトフルーツソーダ「天空の城ラピュタ」がAJINOMOTOから発売された。
パッケージが「ラピュタ」イメージの缶ジュースだ。

このCMが、何故か(権利関係の問題?)アニメの絵を使っていないのだ。
どんなCMかというと……。
「アニメ「天空の城ラピュタ」のイメージより」というテロップが出る。その後、フラップターが飛行してくる。乗っているのは、パズー役を演じる外国人少年。「すごいぞラピュタは本当にあったんだ」というナレーションと商品映像の後は、フラップターに乗ってるパズーとシータ。

あれこれ探してみたら、Youtubeに映像があったので、リンクを貼っておく→味の素 ラピュタ CM 1986年
おそらく友人は、この映像が記憶に残っていて、勝手にハリウッド映画版を妄想してしまったのだろう。

【疑問4】フラプッターはどうやって羽ばたいているの?
空中海賊一家ドーラたちが乗っているのがフラップター。虫型羽ばたき機だ。
宮崎駿監督は、このアイデアをずっとあたためていて、アニメーションの中で飛ばすことが夢だったようだ。
『宮崎駿イメージボード集』には、羽ばたき機(オーニソプター)への憧れが4ページにわたって描かれている。
その中に、フラップターの原型が登場する。
「かくて生まれたのがこの虫型ソプターである ダサイときめつけても無駄である なにしろこいつの魅力はフィルムにしなければ絶対に判らない」
羽ばたきをとめてすーっと滑空させる独特な飛び方も解説しているし、実際にどういうふうにアニメーションすると「らしさ」が出るかという案も描いている。
『天空の城ラピュタ』のフラップターの羽ばたきは、この案もふくめ、幾通りものバリエーションで試行錯誤した(『THE ART OF天空の城ラピュタ』に詳細が載っています)。
まず羽ばたきを4枚の繰り返しで描こうとするが、速すぎて目がついていかず同じ所で羽根が出てたり消えたりするように見えるだけ→8枚の繰り返しパタンでやってみるが、まだ虫のように速く羽根を動かしている感じにならない→8枚をランダムで出してみるが、これは何が何やらわからなくなる。
他にも、残像を薄く書き込むオバケという技法を使う、羽根の大きさを大小とりまぜてみる、など、あれこれ試すも、どれもうまくいかず。
結局、羽ばたいているようなイメージで斜線のタッチに処理することで羽ばたかせることになる。
イメージイラストの最後に宮崎駿監督はこう書いている。
「どなたかスポンサーになってオーニソプターが登場する映画を作らせて下さい。プラモデルにしても売れっこないしヒットするかどうかは判りませんが絶対に楽しくてワクワクする作品になることは保証できます」
このイメージボードを描いた3年後、現実に、監督は『天空の城ラピュタ』というワクワクする作品を創りあげるのだ。

【疑問5】「バルス!」に込められた思いは?
「「バルス」の瞬間のツイート数は秒間2万5088件、Twitterが「新記録」公式発表」なんてことになるぐらい、みんなバルスが大好き。おいおい、滅びの呪文だぞ。
ニコニコ動画では、「バルス祭りニコニコ会場」も開催(鈴木敏夫プロデューサーなど豪華出演陣による実況番組まである!)。
その「バルス」、たったワンワード、一瞬のセリフだが、アフレコはたいへんだったらしい。『ジブリの教科書2天空の城ラピュタ』のアフレコ密着ルポには、こうある。
“「バルス!!」という滅びの呪文もなかなかイメージ通りにきまらない。こういう時に助け船を出してくれるのは、高畑さんだ。「声の“キー”をすこしあげてみれば」”
何度もトライする。ほんとうにどれがピッタリなのか、わからなくなってくるぐらい繰り返す。
“「シータの声は澄んだ声にしたい」という宮崎さんの思いは、十数回のテストののち、ようやく表現された”
さて、バルスのタイミングは、ムスカの「3分間待ってやる!」発言の65秒後だよ。

以上、あれこれ書いたが、『天空の城ラピュタ』は予備情報ゼロで、大人から子供まで楽しめる冒険活劇だ。みんなでワクワクしよう。(米光一成)