
75話はこんな話
東京にやって来たあさ(波瑠)は築地の東弘成館で、五代友厚(ディーン・フジオカ)から、大久保利通(柏原収史)を紹介してもらって、びっくりぽんや、と目を丸くする。
あさには五代、新次郎にはふゆ
あさを東京に行かせたものの、五代の存在が気になってならない新次郎。
五代さまのもってるものをあさに与えてあげられない、その点では男として負けていると、認めざるを得ないのだ。
顔の良さも互角で、お金も家柄も五代のほうが上らしい。
亀助(三宅弘城)が勝ってるところを挙げようとするが、背の高さしかない。
だが、玉木宏とディーン・フジオカのオフィシャルサイトを見たら、ふたりとも180センチとタイだった!! 背の高さも勝ってない!!
とりあえず、ドラマ上では、背の高さしか勝ってない新次郎を、ふゆ(清原果耶)がかばう。
彼女のお父さんが女性をもののように扱うのを見て育ったため、新次郎のような人に惹かれてしまうようだ。6人姉妹っていうのも、異母姉妹なのだろうか、もしかして。
東京にて
新次郎を見つめるふゆ、あさを見つめる五代の、しっとりした視線が対になった75話。
あさと五代のいる東京(ドラマの順番だとこっちのほうが先に描かれている)では、あさはさらなる大物に会う。東京はこの時代、まだ東京都ではなく、東京府。明治22年(1889年)に東京市になって、東京都になるのは、昭和18年(1943年)のことだ。
いずれにしても日本の中心として発展の一途をたどる場であさはアイスクリームをいただきながら、日本一の鉱山王・五代友厚と日本の政府のてっぺんにいる内務卿・大久保利通のビッグ2と語らう。このことを新次郎が知ったら、さらに自信をなくしそう。
五代と大久保は、故郷・薩摩のいろは歌に倣って、お互いをお互いの鏡として切磋琢磨してきた話だとか、いまの日本における自分たちの立場の話だとかをあさにする。わりと真面目な話題が続き、ともすれば単調になりそうな場面を、旅の疲れが出て居眠りするうめ(友近)の姿を描くことで回避し、かつ、馴染みの薄い言葉(この場合は内務卿)を繰り返し強調する。こういう説明的な場面をおもしろを足すことで違う役割に転じる手法は、堤幸彦監督作品でよく見かける。演出段階で脚本にプラスαしていく堤作品に対して、「あさが来た」の大森美香はおそらく脚本の段階でそれをやっている。そして、それほど笑い大盛りではないのが、大森らしさだ。
74話でうめに、陸蒸気の椅子の座り心地の悪さを語らせ、75話で、それに比べて東弘成館の椅子の心地よさに感動させるので、居眠りしてしまう根拠も完璧。こういう大きなエピソードのつなぎ部分も疎かにしないところにも、「あさが来た」の人気の一端があるように思う。玉木とディーンの背の高さは180センチ(公式サイトだと)で同じみたいだが、そんなのはどうでもいい話である。
(木俣冬)
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