朝ドラ「あさが来た」(NHK 月〜土 朝8時〜)3月22日(火)放送。第25週「誇り高き人生」第146話より。
原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:尾崎裕和
新次郎のカウントダウン、砂時計の恐怖「あさが来た」146話
イラスト/小西りえこ

146話はこんな話


あさ(波瑠)は、経営に行き詰まっているいくつかの生命保険会社を合併し、大きくしようと図る。加野銀行最大の事業誕生への、最後の山場がはじまった。

五代の砂時計?


146回は、砂時計の恐怖に尽きる。
新次郎(玉木宏)とあさが寝室で語り合い、新次郎が珍しく昔話をすると言う話になって、その後、カメラがぐっと引くと、砂時計が映る。
これは五代のもっていた砂時計? まさか肩身にもっていた? 肩身にするなら、ペンギンの絵じゃないか、あれをもらってきてなぜ銀行に飾らなかったのか? と余計なこともよぎりつつ、砂時計の登場で、いよいよここから、最後の事業だけではなく、新次郎のカウントダウンがはじまったという宣言に身が引き締まる。
また巧いのは、砂時計だけに終わらせず、その後、五代の面影を、学校に寝泊まりしている成澤泉(瀬戸康史)にも感じさせるところだ。
五代死すとも、魂は、あさたちに受け継がれているという感じ。
そうしてあさが頑張って、金融恐慌の嵐は過ぎた。
日銀の救済融資が決定して、銀行もひと安心。
状況の変化に「現金なだけに厳禁なもんですなあ」とつぶやく平十郎(辻本茂雄)なんてベタなんだ!! 
でも、辻本茂雄は吉本新喜劇の座長のプライドに賭けて、成立させてみせた! ブラボー。
生命保険会社に賭けて炭坑を手放した、あさの勝負の勘所もブラボー。

欲を言えば、彼女のこの商才の部分を、スパイス的でなく、メインディッシュで見たかった気もするが、それだと朝ドラじゃなくなってしまうのか。
あさのお仕事エピソードが感じよく思えるのは、やっぱり波瑠の声の力だ。
彼女は元々声が低くややくぐもった声なのを、頑張ってハキハキしゃべっているので、朝ドラヒロイン特有(主に新人に多い)のへんに甲高い感じにならず、明るい説得力をもつ。
波瑠が若く見えても、なんとか今の年代のあさを演じられるのは、この声のおかげだろう。
こうしてあさがだんだん尊敬すべき人物になってきた分、千代(小芝風花)の矮小さが目立ってくる。
145回で、新しい素敵なスイートホームを建てようとしていた千代たちを見て、彼女の憧れていた結婚が、結局、家の財産を使って楽するだけのように見えた。そして146回では、啓介(工藤阿須加)が「(着物が好きだが)お母さんの洋装は悪くないね」と言うと嫉妬するなど、ちっちゃい千代。おまえは何もしてないくせに、とそしられるのは実は本人が一番わかって苦しんでいるのかもしれないが。
千代の欠けている部分を啓介がみごとにカバーして、新居を建てるのはまだ先でいいと言いだす。こちらもいい夫婦になりそうな暗示である。
(木俣冬)

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