連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第25週「時の魔法」第144回 3月24日(金)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎
「べっぴんさん」144話。最終回につぐ最終回展開、あのワンピースの少女登場
イラスト/小西りえこ

144話はこんな話


引退してヒマを持て余していたすみれ(芳根京子)たちのところへ、かつてショウウインドウに飾ってあったワンピースをもらった美幸(星野真里)が訪ねて来た。

諦めた 恋だから


諦めた 恋だから なおさら 会いたい会いたい

五木ひろしの粘り気のある歌い方が印象的なヒット曲「夜空」を社長室で歌う武。
これはついに栄輔と結ばれてしまった明美への捨てきれない想いなのか。
初恋の思い出は甘くて苦い。

武「いつからおおったんや」
健太郎「ずっとです 見てましたよ」

自分より学歴が低く、しかもこんな感じで歌っているような武の下で働く、東大卒の健太郎(古川雄輝)の気持ちを慮ってみるも、キアリスの魔法にかかって、そんな尖った気持ちはすっかり浄化されているのだろう。
そう、ここはワンダーランド。

武と健太郎は、すみれたちが描いたワンダーランドの絵を見て「これはみんなの夢じゃ」と決意を新たにする。

私にとっては宝物です


引退してヒマになったキアリスの4人ということだが、やっていることがとくに変わった印象がない。なぜなら、すみれ(芳根京子)たち、この数週間、ほとんど仕事している描写がないから。
映画つくったり、レリビィに集ったりしていただけだから。

そんな彼女たちの元に、突然、訪ねて来た若い女性・美幸(星野真里)。
キアリスができたばかりのとき、1号店だったところのショウウインドウに飾っていたワンピースを着せて貰って入学式に行った少女だった!(34〜35話のエピソード)
大人になって子供ができて、娘・小雪にそのワンピースを着せたいと思って、お直しを頼みに来たのだ。
あのときのすみれたちの優しさが忘れられず「わたしも人に優しくしようと思いました」と言う美幸。
画面がキラキラして、じーんとなる。これぞ「べっぴん」ワールド!

さっそく、お直し準備。
引退してもメジャーをもってる君枝(土村芳)。そこはやはり手仕事大好きなんだなと思わせる。
百田夏菜子が、ワンピースをそっと撫でる仕草もいい。なにしろ良子の型紙が生きたワンピースだ。
これぞ「べっぴん」ワールド!

時代はめぐり、今度は、娘がワンピースを着て、母に髪を結ってもらって、サクラが舞うなか、入学式へ。
やってきたことが報われて、さらにその先につながっていく。
満たされた4人の表情。
これぞ「べっぴん」ワールド! これで最終回でも良かった。
だが、田中要次がこそこそ百田夏菜子いじりをしていることで(これはこれで大変微笑ましい)、まだこれは最終回ではないのだと現実に引き戻された。最終回まで、あと7回!

星野真里は再放送中の「ごちそうさん」にも出演していた。朝ドラ歴は「春よ、来い」(94年)、「ゲゲゲの女房」(10年)など。「君の名は」(91年)にもゲスト出演していたらしい(ウィキペディアで知りました)。

下世話な話をすれば、アナウンサーと結婚したという点において、「べっぴんさん」の脚本家・渡辺千穂と同じ。SNS時代に合った話題豊富なゲストである。
(木俣冬)