脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎
140話はこんな話
東京銀座の3階建てのビルに、お母さんと子供たちのためのワンダーランドをつくることにした。
お買い物もできてそこで遊べて、相談もお友達もできる、子育てを共有できる、そんな空間に、
すみれ(芳根京子)たちは胸をときめかせる。
お腹も夢も膨らむわ
すみれ「藍大きくなったかな」
君枝「1日で・・・」
東京の銀座にビルを見に行ってきたすみれと君枝が帰ってきた場面。こういうナンセンスな話、あるあるである。親(おばあちゃん)バカ・エピソードだ。
その後もおばちゃんの話の飛躍を鮮やかに描き出す。
ビルの話→お土産→「あれよあれよ エレベーターも・・・」→天ぷらを食べた話→「ふんわりねえ、藍ちゃん」→「海老も」→「ふんわりねえ、藍ちゃん」
わたわたして、あれもこれもと話が飛ぶ。記憶も飛ぶ。でも最終的に、すべてが孫の藍に集約するという見事な日常のスケッチだ。
芳根京子の声が徐々に低くなっている。そう、年をとると声が低くなるもの。高良健吾や永山絢斗もそうで、身体と所作と外観から入っていくアプローチを徹底している「べっぴんさん」。蓮佛美沙子も肩まわりの丸さなど、ちょっとふっくらした感じに見せている。なかでもメイクのテクニックにうなる。俳優、スタッフ一丸となって「老い」に挑んでいる。
その資金、うちが提供しましょう
盛り上がったものの、不景気で資金がない。昭一(平岡祐太)の銀行での融資も受けられなかった。
急に意気消沈するすみれたち。
そこへKADOSHOから連絡が入り、古門(西岡徳馬/徳の字旧字)がキアリスにやってくる。
4人が譲り合って、結果すみれが紀夫の隣に座る、という細かい動きを経て、古門との話し合い。
資金を提供してくれると言う。
条件は・・・ない。 あやしい・・・。
理由は「企業理念が、みんなの信念にもとづいているということ」だと言う。 あやしい・・・。
その場面に乗っかるSE も不穏。
エイスの倒産はKADOSHOのせい。
と悩むキアリスの4人。
銀座のビルを借りたいという人も出てきて、さあ、どうしよう。
すみれ「あきらめきれないのよね」
良子「そうあきらめきれない」
君枝「私も」
明美「私もや」
がぜん結束力が高まっている最近の4人。少女の頃に戻ったかのように情熱を燃やすが、老いには勝てない。白髪探しで、141話につづく。
お猿の毛づくろいみたいにも見えないことのない終わり方は、ある意味衝撃だった。笑いを狙っているのか、淡々とした日常描写に真面目に取り組んでいるのか。このどちらにもとれる表現は新しいとしか言いようがない。赤ちゃんの笑顔に癒やされるのと同じ、なにげない日常に笑いを見出すということかもしれない。
3月18日に放送されたラジオ番組『岡田惠和の今宵ロックバーで〜ドラマな人々の音楽談義』(NHK ラジオ第一)に渡辺千穂がゲスト出演していて、そこで彼女は、最後のほうは余力があったと語っている。確かに、ここのところ、ドラマの内容にあまり思い詰めた感じはない。
(木俣冬)