「プリキュア」の芸能人ゲスト回を思い出す。
空気を読む者同士
「おそ松さん」は、全体の設定とか整合性は適当(しれっと死ぬし)。一方、六つ子の性格に関しては丁寧に描かれており、会話の前後で人間関係が変わることも1期ではあった。
3話Aパート「チョロ松と一松」。ファンの間では「年中松」と呼ばれる組み合わせ。
部屋で二人きりになってしまった、チョロ松と一松。普段はあまりない状態。
別にイヤではないけど、どうにも落ち着かない。
おそ松は誰にでも絡むので、沈黙はあまりない。カラ松は自分の美学にのめりこみマイペース。十四松は何人でも変わらず暴れる。トド松はドライなので、気にしていなさそう。
このメンツに囲まれていると、チョロ松と一松はツッコミに回るか、無視できるので楽。
ところがなまじ、空気を読むアンテナが高く、本心を隠して自分のキャラを演出している同士なので、二人きりになると、まーしゃべることがない。
気まずい空気あるある
二人になってからは「気まずい空気あるある」のオンパレードだった。
なかなか鋭いところを突いていたのでチェック。
1・集中できない
二人は、無視するために本を読み始める。
ところがどうにも集中できない。六人いたときは読んでいたのに。
ここから負のスパイラルがスタート。
2・とりあえず普段言わないことを言ってしまう
一松の「ねえ、テレビいい?」の一言が、場を固くさせる。
気を使っている時、言わなくていいことまで言ってしまうもの。
沈黙に耐えられないからだ。たいてい「気を使っている」と気づかれて、雰囲気は悪化する。
3・「最近どう?」
チョロ松会話の糸口のつもりで「最近どう?」。
焦ったときほど、抽象的で、かつ意味のない言葉が出てしまいがち。
4・天気の話は広げ方が重要
会話のネタが無いときは天気の話を、というのは昔から言われているコミュニケーション術。
みんな興味があって、だれも傷つかないからだ。
ここで口火を切ることができれば、会話の幅を広げられる可能性は大。逆にここで終わってしまうと、お互い天気ネタが決戦兵器なのもわかっているので、次の会話を撃つのがさらに難しくなる。
ちなみに、政治、宗教、野球の話は、初対面や仕事の場でタブーとされているそうな。
5・やろうとすることのタイミングがかぶる
二人が立ち上がる。本を取る。ほぼ同時。さすがに硬直。
これは「この空気から逃げるために動きたい」という心理がお互いにあるからだ。
学校やレストランで、同時にトイレに立とうとして微妙な空気になった経験のある人は多いのでは。
6・距離を置くと本音が話せる
部屋の両隅に離れた途端、いつも通り悪口を言い合えるようになる二人。
ネットを介した会話では相手をけなしまくる親しい仲なのに、リアルで会うとぎこちなくなって何も言えないのと似ている。
「気まずさ」は、好感度や親しさと比例しない。二人仲はいいんです。
7・敬語になる
近づいた途端使ったこともない敬語で話し始める二人。
嫌われたくない、傷つけたくない、という相手への感情で「とりあえずへりくだる」行為をつい取ってしまう。
チョロ松がこのあとに「きらい?」と聞くのも印象的。ぼんやりとした不安はあるから、下手に出る。
取ってつけた感じは、距離を置かれたように取れてしまうので、さらに場の空気が厄介になる。
8・相手にマウントを取らせようとする
一松は、チョロ松が資格のとり方を学んでいるという「ちゃんとしている」ところに怖さを感じ、できない自分を卑下する。
チョロ松は、一松の闇のオーラや復讐心が怖い、自分も殺されそうだ、と言う。
これは、相手が「そうなりたい」と考えているペルソナを優先させるために、自分を下げる行動だ。
人は「怖い」と言われるのが意外と嬉しい。相手のマウントを取っている気持ちになるからだ。
チョロ松と一松は自分のことを、「真面目な人間」「暗い人間」と演出しているキャラ。
お互い持ち上げたことが功を奏し、いきいきと会話ができはじめたように、見えた。
9・自分の本音を無駄に言っちゃう
チョロ松は唐突に「(アイドルの)楽曲に興味あるとか嘘、エロい目で見てるよ」と、普段隠し続けていた気持ちを暴露。
一松はハロウィンに興味があると言い出す。インスタとかいうやつで、仲間たちとわちゃわちゃしたい、と寂しがり屋告白。
今まで絶対言わなかった話だ。
気まずい空気の時、なぜか唐突に自分の本音をさらけ出してしまって、後悔した経験のある人は少なくないと思う。
自分が弱みをさらけ出せば、この場はなんとかなるのではないか、という心理だ。あなたのことは信頼しているんですよ、とちらつかせて乗り切ろうとする本能なんだろうか。
結果、腹を割って仲良くなる時と、踏み込まれるのが嫌で険悪になる時がある。諸刃の剣もいいところ。
10・気が合うところを無理やり探す
場を和ませるために、相手の興味のあるところ(ネコとアイドル)に擦り寄ろうとした二人。
相手の会話を立てることができたら効果は抜群だが、結局ベクトルが全く合わない、と気づいて、涙目に。
無理矢理な趣味の話は、たいてい相手の地雷を踏むので、避けたほうが無難。
なぜ六人だと成立するのか
チョロ松に、きらいとかイヤというのはない、兄弟だし、という一松。兄弟愛はちゃんとある。
けど話が合わないのは、うまく会話しようと考える理性とは別の、本人の資質の問題だ。
人間関係の空気と戦う田舎の女の子を描くコメディ「すうの空気攻略」というマンガの3巻で、場の空気をうまく乗りこなすためのフォーメーションを考察している。
役職は5つ。
明るく盛り上げる道化者。繊細で空気を読む感受者。親しまれ受け皿となる被弾者万能タイプの中和者、会話の中心で場を回す司令者。
これはまんま六つ子に当てはまる。
道化者は十四松。どんな状況でも絶対明るくしてくれる。
被弾者はカラ松。みんなからお約束的にバカにされることで、場が和む。
中和者はトド松。コミュニケーションモンスター。立ち回りがうまい。
司令者はおそ松。一番アホに見えて、しっかり場を整えるお兄ちゃん体質。
ここまでは、かなり役割分担できていて、バランスがいい。
問題は感受者にあたるのが、チョロ松と一松両方だというところ。
どちらも繊細で、場を見て動くタイプだ。
お互いなんとなく、六人の中の立ち位置がわかっているがゆえに、今回の事故が起きてしまった。
もっとも今回の話で、怪我の功名的にお互いの本質が見えた。
特に一松の「ドメスティックパリピー」告白。二人の今回の暴露話が後々の回で出てきて、それが六つ子間の空気に影響を与えてきたら、熱いですね。
(たまごまご)
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