『ちいさな城下町』(文藝春秋)著者:安西 水丸Amazon |honto |その他の書店

◆地域の城址に歴史訪ねる
イラストレーター、安西水丸の、城下町をめぐるエッセイ集。城下町について、冒頭、安西はこう述べている。


“旅の楽しみの一つとして、何処(どこ)か地図で城址(じょうし)を見つけ、そこを訪ねることがある。たいていの城下町には城址があるわけだが、ぼくの城下町の好みは十万石以下あたりにある。そのくらいの城下町が、一番それらしい雰囲気を今も残している。”

安西の好みがわかる一文だ。大きな天守閣や、後年作った近代的な城には興味がない。裕福ではなかったに違いない地方の藩の城址から、過去の出来事を推察する。

ただ思いを巡らすだけではない。城下町めぐりをする人には2種類の人がいる(と、安西は書く)。歴史に興味を持つ人と、町並みを眺め美味(おい)しいものを食べ歩くタイプの人。安西は前者。どの城下町に行っても、その藩に起こった歴史の詳細な記述が、結構な分量を占める。

村上市(新潟県)、中津市(大分県)、亀山市(三重県)などが特に心に残った。
冒頭の村上市の記述では、盟友の村上春樹もちょっとだけ出てくる。3月に急逝した著者による最後のエッセイ。

【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。

【初出メディア】
日本経済新聞 2014年7月2日

【書誌情報】
ちいさな城下町著者:安西 水丸
出版社:文藝春秋
装丁:文庫(272ページ)
発売日:2016-11-10
ISBN-10:4167907348
ISBN-13:978-4167907341
編集部おすすめ