夏休みに増える海や川など水辺でのレジャー。その一方で、14歳以下の子どもの溺死・溺水事故は、不慮の事故による死亡原因の上位を占めています。
特に10~14歳では最も多く、5~9歳でも交通事故に次いで2番目に多い死因となっています。(※こども家庭庁調べ)

水難事故予防の啓発活動を行うNPO法人AQUAkids safety projectのすがわらえみさんは、「水辺の事故を防ぐには『知識』『泳力』『アイテム』の3つが必要ですが、多くの人がその意味を誤解しています」と指摘します。

子どもを水の事故から守るために、親が知っておくべき「3つの真相」と事前の備えについて、すがわらさんに聞きました。

■【知識の誤解】「晴れてるから大丈夫」は危険
1つ目の備えは「知識」ですが、ここで多くの親が陥るのが「川は波がないから海より安全」「現地が晴れているから大丈夫」という誤解です。

監視員がいる海水浴場と違い、川は見た目が穏やかでも急に深くなったり流れが速くなったりします。さらに恐ろしいのは「上流の天気」です。現地が晴れていても、上流で大雨が降れば時間差で一気に水位が跳ね上がります。

そこで重要な知識となるのが、あらかじめ「Bプラン(代替案)」を用意しておくことです。

現地で危険を感じても「せっかく来たから」と無理をするのが一番危険です。「天候があやしければ水族館や屋内施設へ行く」というBプランを子どもと共有しておくこと。予定変更は遊びを諦めることではなく、命を守るための立派な備えです。

■【泳力の誤解】「プールで50m泳げる」は通用しない
2つ目の備えは「泳力」です。
ここでいう泳力とは、クロールで速く泳ぐことではありません。水に落ちたときに「慌てずに浮いて助けを待てる力」のことです。

「プールで50m泳げるから、川幅25mなら渡れる」と考えるのは大きな誤解です。川では流されながら進むため実際の距離感は狂い、水温の低さやパニックで一瞬で体力を奪われます。

また「自分は泳げるから助けられる」という親の過信も危険です。助けに入った大人が流される二次事故が後を絶ちません。親も自分の泳力を過信せず、海水浴場の場合は監視員の近くを選ぶなどし、子どもを手の届く範囲で見守ることが大切です。

さらに、泳ぎの練習として「お風呂で顔をつけたり潜ったりする」のは今すぐやめましょう。

お風呂を「泳ぐ場所・遊ぶ場所」と認識してしまうと、子どもが一人で入浴した際にも潜るようになり、自宅のお風呂での重大な事故につながる恐れがあります。泳ぎの練習は、必ず安全管理の整ったプールで行いましょう。

■【アイテムの誤解】「うちの子は泳げるからライジャケは必要ない」のわな
3つ目はライフジャケットなどの「アイテム」です。ここで陥りやすいのが、「うちの子は泳げるから必要ない」という誤解です。


ライフジャケットは泳ぐための道具ではなく、「浮力を確保し、救助を待つ時間を引き延ばす命綱」です。泳げるかどうかに関わらず、子どもだけでなく大人も着用すれば、「水辺では着るもの」という意識を親子で共有できます。

また、足元には脱げにくいアクアシューズを選べば、サンダルが流されて追いかける事故そのものを防げます。

さらに、現場に着いたら「監視員へ一言あいさつする」ことも有効な対策です。

「今日の流れはどうですか?」と声をかけるだけで、その日の波や流れ、危険な場所が分かるだけでなく、監視員に家族の人数を認識してもらえるため、万が一の際の発見が劇的に早くなります。

監視員がいない川などの場所では、応急手当バッグを準備し、最寄りのAEDの場所を事前に確認することをお勧めします。

■「溺れたらどうするか」より「溺れないための準備」を
子どもが溺れた際、家族は動揺して冷静に行動できなくなります。だからこそ水難事故対策は「予防が8割、あるいは9割」です。

天候を確認し、危険なら予定を変更する。泳力を過信せず、ライフジャケットや脱げにくい靴を準備し、子どもから目を離さない。

「知識」「泳力」「アイテム」の本当の意味を理解し備えることが、大切な命を守る第一歩になります。夏のレジャーがよい思い出となるよう、ぜひ家族で取り組んでみてください。


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すがわら えみさん
NPO法人AQUAkids safety project代表理事。大阪芸術大学 卒業後(株)リクルートホールディングス入社。その後、水泳インストラクターとして障がい児水泳指導に携わった後、2019年に子どもの水難事故予防を目的としたAQUAkids safety projectを設立。2020年に、水に流されたサンダルなどを追いかけて起こる事故を防ぐための啓発キーワード「#サンダルバイバイ」を考案し、全国で水辺の安全教育を展開している。

この記事の執筆者:廣田 美絵子
大手化粧品会社で人事部にて採用・教育・広報を担当。その後教育系のベンチャー企業を経てフリーランスで取材・編集・執筆を行う。キャリアコンサルタントでもあり、人のキャリアや生き方にフォーカスした記事執筆を得意とする。
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