eスポーツは競技だけではなく、企業間・地域間のコミュニケーションを生み出すツールにもなり得る――立飛ホールディングスとNTT東日本 東京西支店が開催した「立川立飛eスポーツカップ TACHI-STA」は、立川エリアの企業・団体が交流する場として6回目を迎えた。地域活性化を目的とした取り組みの狙いと、参加企業の反応を取材した。

企業交流を目的に25の企業・団体が参加

立飛ホールディングスとNTT東日本 東京西支店は6月24日、NTTe-Sportsの協力のもと、立川エリアの企業・団体が参加する、地域交流eスポーツイベント『第6回 立川立飛eスポーツカップ TACHI-STA』を東京都立川市のドーム立川立飛にて開催した。

2021年より開催されている同イベントは、eスポーツをきっかけとして、立川エリアで働く人々のつながりを深め、地域の活性化につなげることを目的としている。

今回はイベントの原点である「企業・団体に所属する社会人同士の交流」に立ち返り、参加対象を企業・団体の社会人に絞ることによって、より密度の高い交流の場となることを目指しての開催となっており、立川を拠点とする25の企業・団体から28チームが参加した。

名刺交換から始まるユニークなeスポーツ大会

使用されるゲームタイトルは、スマートフォン向けオンラインアクションゲームの『ブロスタ』。各チームは3人1組の構成で、ステージ1からファイナルステージまでの全5ステージを勝ち上がることにより、先着順で決勝トーナメントに進出する4チームを決定する。

イベントのオープニングには、立飛ホールディングス 取締役 総務部長の守屋信雄氏が登壇。「eスポーツを通じて、多摩地域の新たなイメージとして、より魅力ある地域にしていきたい」という、イベントを主催する同社の思いを述べ、「回数を重ねるごとに、親和性も高まっており、各団体の関係構築の有用な機会になっている」と、イベントに対する確かな手応えを明かした。

「企業・団体に所属する社会人同士の交流」がテーマとなっている同イベントの大きな特徴は、試合前に握手を交わすのではなく、名刺交換を行うところ。一般的なeスポーツ大会とは異なり、異業種交流会のようだった。

予選では全5ステージを勝ち上がり、決勝トーナメントへの進出を目指すが、『ブロスタ』歴の長いメンバーがそろっているチームから、イベントのためにプレイを始めた初心者ぞろいのチームまで、レベルはさまざま。実力差の大きな対戦もあったが、上級者も初心者も、スマートフォンの画面を真剣に見つめながら、その結果に一喜一憂しつつ、対戦を楽しんでいた。

約1時間30分に及ぶ予選の結果、決勝トーナメントには、「村井三兄弟(ALSOK)」「ウオールナット」「立川プリモティックFC(立川アスレティックFC)」「立川ワシントンホテル」の4チームが進出。
注目の決勝は、予選1位の「村井三兄弟(ALSOK)」が、予選2位の「ウオールナット」を激闘の末に下し、悲願の初優勝を飾った。

なぜ競技タイトルに『ブロスタ』を選んだのか

ゲームタイトルに『ブロスタ』が選ばれている点も同イベントの特徴だ。その理由は、3人1組という企業として参加しやすい人数構成であることに加え、誰もが持つスマートフォンで気軽にプレイできることにある。

立飛ホールディングス 総務部 総務課 主任の尾川拓生氏は、「社会人交流ということを考えた場合、企業や団体には若い方から年配の方までさまざまな方がいらっしゃるので、スポーツという舞台では、やはりeスポーツが老若男女を通じて参加しやすい」と説明する。

加えて、『ブロスタ』は初心者でもルールを理解しやすく、「参加のハードルを下げるという意味でも、手軽に取り組める『ブロスタ』が最適だった」という。

eスポーツはタイトルによって年齢による有利・不利が生じやすいが、「やはり若い人のほうが有利になってしまうのですが、幅広い年齢の方に参加していただけるのは、『ブロスタ』のおかげという面もあると思います」と尾川氏。実際、イベントには経験者から初心者まで幅広い参加者が集まり、企業交流の場として機能していた。
eスポーツをコミュニケーションツールとして活用

立飛ホールディングスは、立川市中心部に約98万平方メートルの土地を所有し、複数の施設を運営・開発している。それらを社会資本として、芸術・文化・スポーツを通じた地域貢献を進めており、「立川立飛eスポーツカップ TACHI-STA」もその取り組みの一つだ。

同社 総務部 総務課 主任の尾川拓生氏は、「会場などのハード面だけでなく、ソフト面での地域貢献」と開催の意義を説明。「参加いただいた企業の方からも『来年も絶対にやってほしい』『来年は優勝を狙いたい』などの声をいただいています」と、回を重ねるごとに企業間交流が広がっている手応えを語った。

イベントの企画・運営を支援するNTT東日本 東京西支店 ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネス担当 チーフの関根綾乃氏は、「エリアごとの特性によってターゲットを見極めることが重要」と話す。
「若者の少ない地方であれば、高齢者のフレイル予防などにeスポーツを活用したりしますが、立川のように企業・団体が多い地域では、企業交流という形がうまくはまりました」と、地域特性に応じた活用方法を説明した。

さらに、地域の未来を支えるソリューションを掲げるNTT東日本として、「決して直接的に利益につながるものではない」としながらも、「地域のコミュニケーションを活性化することは、長い目で見れば、ゆくゆくはわれわれの何かにつながっていくはず」と、その意義を語る。

一方、NTTe-Sports 経営企画部 課長の山下明希氏は、「eスポーツは、ただゲームを楽しむだけでなく、コミュニケーションツールとして活用できるところに大きな意味がある」と強調。「普段の業務ではなかなかつながれない業種の方と接点を持つことで、新しい取り組みにつながる可能性がある」と、企業同士を結び付ける場としての価値を挙げた。

これに関根氏も「世代を問わず活用できる点が大きい」と同意。同イベントはコロナ禍で企業間だけでなく社内コミュニケーションも難しかった時期に企画されたことから、「コミュニケーションツールとしてeスポーツがうまく機能した」と振り返った。
「立川モデル」は他地域にも広がるのか

地域交流や地域活性化のツールとしてeスポーツを活用する取り組みは、「立川モデル」として他地域へ広がる可能性を秘めている。

関根氏は「地域ごとの特性を見極める必要があり、まだ具体的な形にはなっていませんが、決して競技だけではないという捉え方は、今後の活動におけるひとつの選択肢にはなると思います」と話す。

NTTe-Sportsの山下氏も「このイベントを単発で終わらせるのではなく、ここからどのような広がりを持たせるかが重要」と続け、「イベントを続けることで、地域の企業がつながり、立川のまち自体がさらに盛り上がっていけばよいですし、それが立川以外の地域にも広がっていけば」と、今後の展開に期待を寄せた。

一方、立飛ホールディングスの尾川氏は「参加チーム数を増やし、もっと大きな大会にしていきたい」と話す。一方で、その先にある目標については、「ここから何か新しいもの、面白いもの、そして文化のようなものが生まれてくることを期待したい。それこそがイベントを継続する大きな意味」と語り、地域に新たな価値を生み出すことへの期待を示した。
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