キュアエクレールとして目覚めた帆羽くれあと、彼女の笑顔を守るため、たった一人で使命を背負ってきた森亜るるか。互いを思うほどにすれ違い、痛みを抱えてきた二人の物語は、第31話で大きな転機を迎える。

漆黒のエクリプス・シャドウを経て、るるかがたどり着いた“本当の答え”は、くれあと一緒に生きたいという切なる願いだった。インタビュー後編では、長谷川育美と東山奈央が、キュアエクレール覚醒に交錯した喜びと苦しみ、純白のキュアアルカナへと生まれ変わった瞬間の収録秘話を明かす。さらに、家族、姉妹、友達、ライバル――どれか一つでは言い表せない“奇跡の二人”の絆と、4人になったプリキュアのこれからを語ってもらった。

【写真】漆黒から純白へ! キュアアルカナに変身した森亜るるか(ほか21枚)

■キュアエクレール覚醒に交錯した喜びと痛み るるかがたどり着いた“本当の答え”

――キュアエクレールが初めて変身する姿を見たとき、東山さんご自身にはどのような思いが込み上げましたか? また、るるかとしては、あの瞬間をどう受け止めていたのでしょうか。

東山:初めて見たときは、やっぱり複雑でした。私個人としては、「ついにキュアエクレールが爆誕した!」という高揚感があって。はせちゃん(長谷川さん)の本当にきれいな声が、キュアエクレールの清廉な雰囲気を見事に表現していたんです。

初めて見る変身シーンなのに、「そうそう、これだよね」と自然に受け入れられるような、すごく気持ちのいい感覚がありました。

一方、るるかとしては、「こうはさせたくなかった」という思いがあったんです。キュアエクレールが目覚める前にマコトジュエルを砕き、記憶を呼び起こさず、大王にもさせず、ただ平穏に一人の女の子として生きてほしい。その一心で、ずっと行動してきました。だからこそ、「こんなことになってしまった」という悔しさややるせなさがあって、私の中にもいろいろな感情が入り交じっていました。


くれあは、ウソノワールによって一度記憶を失っています。そして今、せっかく取り戻した愛しい人との記憶を、今度はるるか自身の手で砕かなければならない。それは本当に心苦しいことです。それでも、やらなければならない。きっと、るるか自身も感情がぐちゃぐちゃになっていたと思います。

――世界を守り、くれあを大王にさせないという使命を背負ってきたるるかが、最後にたどり着いた“本当の答え”を、東山さんはどのように受け止めましたか?

東山:るるかは、「世界を守る」というプリキュアとしての使命と、「くれあを大王にさせず、彼女の笑顔を守る」ということだけを考え、自らの意思で怪盗団ファントムに入り、キュアアルカナ・シャドウとして奮闘してきました。

でも、キュアアンサーとキュアミスティック、そして最後にはキュアエクレールから「あなたの本当の答えを教えて」と問いかけられます。そこで見えてくる、るるか自身の本当の願いは、くれあと一緒に生きたいということなんですよね。

使命と本音の間にある隔たりがあまりにも大きいからこそ、るるかはずっと苦しみ、その思いを一人で抱え込んできた。私自身も、るるかと一緒に苦しみ、心を痛めながら演じてきました。

ただ、そんな彼女を通して感じたのは、るるかのように優秀で、名探偵として一歩も二歩も先を見通せる人であっても、自分の出した答えを間違えてしまうことがあるということです。くれあが大王になるかもしれないと思ったとき、くれあ本人に相談することは難しくても、仲間を見つけ、一緒に解決する道を探すことはできたはずです。


一人で抱え込んだからこそ、自分が選んだ一つの道を、極端なところまで突き進んでしまった。本当に必要だったのは、仲間と一緒に答えを見つけることだったのだと思います。それこそが、るるかが身をもって私たちに伝えてくれたことだと感じています。

――記憶を失ったくれあが働くパティスリーチュチュへ、るるかは何度も足を運んでいました。本編では描かれていない時間の彼女の胸の内を、どのように想像していましたか?

東山:くれあが記憶を取り戻すまで、るるかの胸の内は詳しく描かれていません。だからこそ、その裏側にあったであろう思いを想像し、寄り添うようにしていました。

くれあにとって、るるかは「いつも来てくれるお客さん」だったでしょうし、きっと優しく声をかけていたと思うんです。るるかは、記憶を失っても変わらず優しいくれあを見て、「私が大好きなくれあのままだ」と、うれしく思えば思うほど、同時に胸が締めつけられるような切なさも感じていたんじゃないかなって。

そして、その姿を見るたびに「絶対にこの子を守らなければ」と決意を強くしながら、何度も店へ足を運び、アイスを食べながら、くれあをそっと見守っていたんだろうなと思いますね。

■漆黒から純白へ キュアアルカナが刻んだ“ゴール”と4人の始まり

――キュアアルカナ・シャドウとして、キュアアンサーやキュアミスティックの前に立ちはだかってきたるるかですが、探偵の先輩として二人を試したり、時にはお茶目にあしらったりする姿も印象的でした。敵として振る舞う場面では、その奥にある目的や感情をどのように捉えていましたか?

東山:たとえば、“ほっぺツン”は、単純にるるかのお茶目さが表れたものだと私は思っています。もしかしたらスタッフさんには何か意図があるかもしれないので、合っているかは分からないですけど(笑)。


キュアアルカナ・シャドウを演じるときは、毎回「今回はなぜ彼女が出動したのか」を一つひとつ確認していました。実は、話数によって目的が違うんです。

初めてキュアアルカナ・シャドウとして登場したときは、偽物を展示していた宝生さんに、その行いを改めてもらう目的もありました。そこには、るるかなりの正義があったんです。同時に、初めて対峙する名探偵プリキュアが、どれほどの力を持っているのかを見極めようとしていました。

もし彼女たちが自分に代わってウソノワールを倒してくれれば、キュアエクレールのマコトジュエルを取り返せるかもしれない。敵のような顔をして現れながら、実はウソノワールを倒せる可能性があるのか、二人を試す意味もあったんです。

ただ、その時点では「まだまだ足りない」と感じたから、その後は二人を鍛える意味で姿を現すこともありました。一方で、マコトジュエルを奪うという明確な目的で出動したこともあります。

本来、プリキュアであるるるかにとって、マコトジュエルは守りたいものです。でも、キュアエクレールのマコトジュエルを人質に取られている以上、それを取り返すには、ほかのマコトジュエルと交換しなければならない。だから本気で奪いに行き、「自分はきちんとウソノワール様に従っている」と示さなければならないときもありました。


同じようにキュアアンサーやキュアミスティックの前に立ちはだかっているように見えても、その裏にある目的や感情は毎回違うんです。正義感で動いているのか、二人を試そうとしているのか、くれあを守るために必死になっているのか。私も一つの型にはめず「今回はこれが目的なんだ」「今度はそんなことを考えているんだ」と、その都度るるかの心情をスタッフさんにこっそり質問した上で演じていました。

――第31話では、エクリプス・シャドウを経て、るるかが純白のキュアアルカナへと変身します。キュアアルカナ・シャドウと比べ、声の表情や変身時のセリフには、どのような変化をつけましたか?

東山:大きく違うものになったのではないかと思います。しかも直前までのエクリプス・シャドウが相当追い詰められていた状況で、漆黒と言えるほどに堕ちていたので。そこから、パーンと真っ白になる。これまで一人で抱えてきたものをすべて解き放ち、自分の本音ときちんと向き合えた。さらに、くれあが手を差し伸べてくれた。そんな多幸感に溢れていたからこそ、声の明るさからまったく違うと思います。

アフレコでは最初にテストを行うのですが、そのときは「このあとの本番で、また漆黒の気持ちに戻らなきゃいけないんだよな」と考えてしまって(笑)。いま、明るさ全開でやり切ってしまったら、もう戻ってこられないような気がしたので、少し控えめにしたんです。
もちろん、テストであってもキュアアルカナをちゃんと演じなければいけないんですが、本番のときにベストな演技を持っていけるように、まだ片足を闇に残すようなイメージ、といいますか。

すると、「事前に収録したおもちゃのキュアアルカナの音声と全然違います」と言われて。「そうですよね。分かっています、分かっています!」と思いながら(笑)、本番ではしっかり、すべての闇をパーンと脱ぎ捨てました。

まるで憑き物が落ちたように、背負ってきたものをすべて手放して。「もうここからは、みんながいる。くれあがいる。一緒に未来へ歩んでいく。本当の答えにたどり着いたんだ」と演じることができました。すると、「ちゃんと白になっていました」と言っていただけたので安心しました。

長谷川:あの瞬間は、本当に幸福感に満ちていました。私としても、やっとこの姿を見られたことがうれしくて。
「笑ってくれてありがとう。笑顔を取り戻せて、本当によかった」という気持ちでしたね。

東山:周りのみんなも、「アルカナがこんなふうに笑うなんて」と、温かく見守ってくれていました。私たちも第31話までの歩みをずっと見つめてきたので、「ようやくここまでたどり着いた」というゴールの感覚と、「ここからは4人で歩いていくんだ」という新たなスタートの感覚があって。その二つが重なった第31話でしたね。

――同じ第31話では、4人のプリキュアによる初の4人合体浄化技も披露されました。初めて4人で声を重ねた収録はいかがでしたか?

東山:これがなかなかそろわなくて、苦戦しました(笑)。キュアアンサーとキュアミスティックがこれまで何度も声を合わせてきたからこそ、スタッフさんが求める“そろい方”のレベルもすごく高いんです。

長谷川:ブースの中で聞いている私たちとしては、「今のはぴったりだった!」と思うんです。でも、それでも「まだもっとそろいます」と言われて。そこから何度も重ねていきましたね。

東山:ただ、キュアアンサー役のひかちゃん(千賀光莉さん)が上手に音頭を取ってくれたので、苦戦はしたものの、何度か挑戦するうちに本当にぴったりそろったテイクを出すことができたので、あのときに感覚を大切にこれからも頑張って収録していきたいですね。

■家族、姉妹、友達、ライバル――“奇跡の二人”を結ぶ絆

――探偵テストでは、同じ答えにたどり着きながら、くれあとるるかは違う選択をしました。お二人は、そこに表れた二人らしさをどう感じましたか?

東山:二人は、本当に唯一無二の関係だと思います。出会ったときから、くれあは優しくて、包容力にあふれていて。

探偵テストでも、実はくれあは答えにたどり着いていたんです。でも、「事実を伝えることが、本当に相手のためになるのだろうか」と考えて、あえて口にしなかった。一方、るるかは、「名探偵なら、事実をきちんと伝えるべきだ」と考える。二人とも優秀だけれど、探偵として大切にしているものが少し違ったんですよね。

そのとき、二人は少し切なそうな表情を見せます。でも、それは相手にがっかりしたからではなく、ただ「私たち、やり方が違ったんだね」と受け止めた表情なのだと、アフレコのときにスタッフさんから伺いました。

違った考えを持っているからこそ、るるかは自分にはないくれあの優しさをすごいと思い、リスペクトしていたんだと思います。くれあには、名探偵プリキュアになれる力も、優れた“第六感”もある。その才能を誰より近くで感じていたのが、るるかでした。

自分が先に名探偵プリキュアになっても、ずっとくれあと一緒にいたい。だから日本へ来るときも、彼女を助手として連れていくことを選んだ。それくらいくれあを信頼し、その才能をまぶしく感じていたんですよね。るるかにとってくれあは、誰よりもそばにいてほしい存在だったんだと思います。

長谷川:くれあから見ても、るるかは自分にない魅力を持っている存在です。きっと、お互いにそうなんですよね。どちらが正しいということではなく、違うものを持っているからこそ補い合える。そこに二人ならではのバディー感があると思います。

ここからは私の想像ですが、探偵テストに合格できなかったときのくれあにとって、るるかの存在は本当に大きかったんじゃないかなって。探偵になれなかったくれあの隣にいて、励まし、香水を渡してくれた。くれあは人当たりも良くて、何でもできそうに見える子ですが、あのとき、るるかにどれほど救われたんだろうと思います。

普段は見えなくても、気持ちの上ではるるかに背中を預けたり、そっと肩に寄りかかったりしているようなところが、きっとあるんじゃないかなって。

第31話で、くれあが「あなたが認めてくれたから、私は今こうしていられる」と涙ながらに伝える場面からも、その思いが伝わってきました。るるかは、くれあにとって、いなくてはならない人。そばにいてくれなければ、まっすぐ歩けないくらい大切な存在なのかなと思います。

――二人は、“頼るべきものがいない子たち”でもありました。お二人には、くれあとるるかがどんな関係に見えていますか?

長谷川:二人は、生い立ちが似ているんですよね。特にるるかは内気で、人とコミュニケーションを取ることが得意ではなく、くれあと出会った頃もすごくたどたどしかった。そんなるるかが心を通わせられた相手だからこそ、二人の絆は、ほかの人には計り知れないほど深いものになったんだと思います。

その絆を知れば知るほど、その後に待っている展開が、より苦しく感じられて……。あんなとみくるも“奇跡の二人”ですが、くれあとるるかも、出会うべくして出会った“奇跡の二人”なんですよね。

るるかの「ただ笑顔でいてくれれば、それでいい」という思いには、本当に涙が出ます。自分がどれだけ苦しくても、すべてを背負ってでも救いたい。そこまで思える相手に、みんなが人生で出会えるわけではないと思うんです。物語を追うほどに、二人はやっぱり“運命の二人”なんだと感じました。

東山:私は、るるかの「くれあを守りたい」という思いを抱えながら、この半年間演じてきました。でも、なぜここまでくれあにこだわるのか。それは、くれあがただの友達ではなく、「もう、あなたしかいない」と思える存在だからなんです。

もちろん、世界を守るという大きな使命もあります。でも、その前に、一人の人間として「あなたには笑顔で生きていてほしい」と願っている。きっと、二人が似た寂しさを抱えてきたからこそ生まれた思いなんですよね。

そうした背景を知ったときは、その重さがずしんと胸に入り込んできました。るるかが抱えているものに、私もきちんと向き合わなければと思いましたね。

……私たち、家族なんだろうね。

長谷川:そうですね。家族であり、姉妹のようでもあり、友達のようでもある。でも、少しライバルでもあるんです。「相手にはこれができる。自分はこうだ」と、互いの違いを意識し、刺激を受ける関係でもあったと思います。

東山:家族、姉妹、友達、ライバル……。どれか一つだけでは言い表せない関係ですよね。こちらはこちらで、やっぱり“奇跡の二人”なんだと思います。

――くれあとるるかの物語がひとつの節目を迎え、プリキュアも4人になりました。ここから先、お二人が楽しみにしていることや、気になっている謎を教えてください。

長谷川:ここまでの展開は事前にある程度聞いていたのですが、この先は本当に何も知らないんです。くれあとるるかの物語は、ある意味、ひとつやり切ったところがありますよね。

そうなると、次はみくるが一番、何かありそうな“匂い”がします(笑)。視聴者の皆さんも、少しずつ感じ始めているんじゃないかな。

最後はあんな自身の謎につながっていくのかなと思うのですが、まずは、みくるがどんな子なのか、どういう経緯で今ここにいるのかを、もっと知りたいです。

東山:ポチタンのことも気になりますよね。集めたマコトジュエルのかけらを、一体どこへ送っているんだろうって。すごく気になります。

長谷川:ポチタン役の加藤英美里さんも、現場で私たちと一緒にいろいろ考察しています。でも、本当は知っていて、ウソをついているかもしれないですよね(笑)。

東山:でも、「知らない」って言ってたよ?

長谷川:私も最初は、エクレールの正体について「知らない」って言っていましたから(笑)。

東山:たしかに!(笑)

長谷川:私たちも視聴者の皆さんと同じように、この先の物語を一緒に楽しんでいきたいです。

(取材・文:吉野庫之介)

 テレビアニメ『名探偵プリキュア!』は、ABCテレビ・テレビ朝日系列全国24局ネットにて毎週日曜あさ8時30分から放送。

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