北朝鮮が10年以上にわたり完成できずにいる大型海軍基地で、ようやく工事再開の兆候が確認された。

北朝鮮専門メディア「NKニュース」は12日、米衛星企業プラネット・ラブズの画像を分析し、江原道文川市の沓川湾にある海軍基地の建設現場で、6~9日に白い構造物やテント状の施設が新たに設置されたと報じた。

工事要員の宿舎や支援施設である可能性があるという。

この基地は、北朝鮮が進める海軍近代化の重要拠点になるとみられている。金正恩総書記は2024年9月に現地を視察し、大型水上艦艇や潜水艦を収容できる「現代的な海軍基地」の建設を急ぐよう指示した。しかし、その後も工事はほとんど進まず、今年に入っても完成にはほど遠い状態だった。

その間に、肝心の軍艦の方が先に出来上がった。

北朝鮮は昨年、5000トン級の新型駆逐艦「崔賢」を進水させ、今年6月に就役させた。さらに同型2番艦「姜健」も建造するなど、大型水上戦闘艦の整備を急速に進めている。

興味深いのは「崔賢」の配備先だ。進水当初には東海艦隊の艦隊旗が伝達され、日本海側への配備を想定していたとみられた。ところが実際には黄海側で試験を続け、今年6月、西海艦隊への配備が正式に発表された。文川の基地建設が大幅に遅れていたことが、配備計画に影響した可能性は否定できない。

いわば「軍艦はできたが、基地がない」のである。

これは北朝鮮軍が抱える問題の一端を象徴しているようにも見える。

兵器は造っただけでは軍事力にならない。大型駆逐艦なら専用埠頭だけでなく、燃料や弾薬の補給、機関や電子機器の整備、乗員の訓練、通信・指揮設備など巨大な後方支援システムが必要になる。

どれほど強力なミサイルを積んでいても、故障した艦を修理できず、十分な燃料を補給できず、乗員の訓練時間を確保できなければ、その戦闘能力は大きく制約される。

北朝鮮空軍も、燃料や交換部品の不足が長年指摘され、韓国や米国の空軍と比べれば飛行訓練量にも大きな差がある。

北朝鮮が誇示する弾道ミサイルの移動式発射台(TEL)にも問題がある。巨大な車両を自由に移動させるには、それに耐えられる道路や橋梁が必要になる。山岳地帯が多く道路網も十分とは言えない北朝鮮では、TELの実際の機動範囲は地形やインフラによって制約される。

つまり北朝鮮軍を見る際、「新兵器を何種類造ったか」だけを数えても意味がないのだ。文川の基地建設が艦艇建造に追いつかなかった背景には、北朝鮮という国家そのものの資源配分能力の限界が透けて見える。

それでも、北朝鮮の核武装は現実であり、核弾頭と弾道ミサイルを中心とした戦略戦力は着実に増強されている。通常戦力についても、ロシア・ウクライナ戦争を通じて兵器の実戦データや戦闘経験を得るという、これまでになかった機会を手にしている。

新型兵器を次々と公開する北朝鮮を必要以上に恐れる必要はないにせよ、現在の弱点がこれからも弱点であり続けると考えるのもまた危険かもしれない。

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