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◆行動力、素直、実直さを備えた杏奈
『君の好きは無敵』は第5話付近から、やっと恋愛要素が開花しはじめたラブコメディ。元コンサル会社勤務・草壁杏奈(松本)とキャラクターデザイナーの瀬尾深月(佐野勇斗)が出会い、世界的キャラクターを作ろうとタッグを組む。ただ一筋縄では進まない厳しい業界、ふたりは数々の困難に直面する。
まずは現在、フリーランスで仕事をしている瀬尾の懐事情。おまけに世間一般的な金勘定も苦手で、とにかくあるのは「かわいい」ものを愛する精神のみ。そんな瀬尾を杏奈はコンサル時代に培った経済知識でフォローしていく。どんな小さな仕事でも真摯に向き合い、ボス=瀬尾の生み出す「かわいい」を理解しようと必死で勉強をして、専門家を集めてシンクタンクを実施する。加えて些細な情報を見逃さず、キャラクターの権利を守るためなら即座に飛行機に乗って、交渉をする。つまり、とても行動力にあふれた女性だ。
あふれているのは行動力だけではなく、素直、実直さもある。杏奈は自分の感情にも嘘をつかず、すぐに露呈する。例えば大好きな恋人がいたのに、瀬尾と夢中になって仕事をしているうちに浮気をされて、一方的に振られてしまう。
が、彼女の場合はその様子を見ていられるのだ。そりゃ、俳優・松本若菜の美しさ、非日常空間であるドラマであれば当たり前なのかもしれないが、そこに視聴者の羨望視線もある。第4話の終盤の杏奈のように人目も憚らず、思い切り泣いたのはいつだろうか……。さらにその杏奈を見て胸にズキュンが走る瀬尾は、もう恋が始まっていると断定したい。
◆「かわいい」感情、ついに着火
杏奈の素直、実直さをもうひとつ。彼女は瀬尾に出会うまでキャラクターにハマった経験もなければ、何かに「かわいい」と胸をときめかせたこともない。つまりビジネスにおいて、肝心の要素が抜けている。これではまずいと「かわいい」自主トレをして、キャラカフェに行ってみたり、瀬尾が過去に作った「まんぷくもる子」を眺めてみたり……。どの方法も今ひとつ効果が見込めない最中、ついに瀬尾が新キャラを提案してくる。
まだ名前も決まっていなかったラフを見て「かわいい」に目覚める杏奈。もう寝ても覚めてもキャラのことばかりを考えて「や~ん!」とうれしそうに満面の笑顔でいる。このシーンで「ああ、この様子は人が“推し”に落ちる瞬間だ」と思った。恋愛対象者とはある程度の理想のタイプのうえに成り立っているけれど、“推し”とはある日突然、意味もわからず脳内がその人で侵食されていく。更地に雷が落ちたようなもので、もうこれは事件。でも当の本人は例えようもない恍惚感に浸っている。
そして前述した杏奈をなんの淀みも感じさせることなく、松本若菜はやっぱり魅力的な人だ。彼女の人気ぶりを見ていると、改めて人は明るさについていく、と思い知らされる。2024年に放送された『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)でも「ババーっとやっちゃう!」と、快活な女性・西園寺さんがよく似合っていた。あのときと同じ、いやそれ以上のエネルギーを杏奈からチャージされている。暑さの厳しい昨今、気落ちしている人たちにおすすめしたい。
さあ、無事に「チュチュチュエラ」とキャラクター名が無事に決まった。
(文/コラムニスト・小林久乃)
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