マンションリサーチは、東京都内における最寄り駅別の50㎡以上の中古マンション在庫の推移についての調査結果を7月10日に発表した。

はじめに、東京都内の各駅を最寄りとする50㎡以上の中古マンションを対象に、在庫の増減傾向を可視化。
赤プロットは在庫減少傾向(流動性が高い)、黄プロットは在庫横ばい(流動性は標準的)、青プロットは在庫増加傾向(流動性が低下)。在庫が減少しているエリアは市場に供給されても比較的短期間で成約していることを示し、反対に在庫が増加しているエリアは、売り物件が積み上がり販売期間が長期化している可能性を示している。

地図を見ると最も特徴的なのは、山手線内側を中心とした都心部で青プロットが非常に多い点。港区、千代田区、中央区をはじめ、都心の主要駅周辺では大型マンションの在庫が増加し、市場全体の流動性が以前より低下していることが分かる。

この背景には、ここ数年続いた急激な価格上昇がある。都心部では海外投資家や富裕層、法人による購入需要に加え、短期転売を目的とした売買も活発化した。その結果、実需だけでは説明できないほど価格が押し上げられ、高額帯マンションが数多く供給される市場へと変化している。

価格上昇局面では「今買わなければさらに高くなる」という期待が需要を呼び込む。しかし一定水準を超えると購入できる層は急速に限定される。供給は続く一方で購入できる実需層が減少するため、市場には徐々に在庫が積み上がる構造となる。

特に広面積帯の大型住戸は販売価格も高額になりやすく、住宅ローン金利の上昇や購入コストの増加も重なったことで、以前ほどスムーズに売買が成立しなくなっていることが在庫推移からも読み取れる。

つまり、在庫増加は単純に人気がなくなったことを意味するのではなく、「価格上昇によって市場参加者が限定され、流動性が低下した状態」と考える方が実態に近い。


一方で、非常に印象的だったのが墨田区。墨田区では、多くの駅周辺が黄色または赤色となっており、在庫は横ばい、もしくは減少傾向を維持している。これは市場の流動性が非常に安定していることを意味している。

墨田区は都心へのアクセスが良好でありながら、都心部ほど極端な価格高騰は見られない。そのため、購入層の中心は投資家ではなく、実際に居住するファミリーや共働き世帯などの実需層。

実需主体の市場では、価格は所得や住宅ローン返済能力に支えられるため、過度な価格変動が起こりにくく、供給と需要のバランスも比較的安定する。

投資マネーの流入が少ないことは一見すると派手さに欠けるようにも見えるが、市場という観点ではむしろ健全性の高さを示している。

価格だけが先行する市場ではなく、「住みたい人が購入する市場」が維持されていることは、中長期的な安定性という意味でも評価できるポイントと言える。

この傾向は墨田区だけではない。江戸川区、葛飾区、足立区など城東エリア全体でも在庫は減少傾向を示す駅が多く確認された。

近年、東京都心ではマンション価格が急激に上昇したことで、予算面から都心購入を断念する世帯も増えている。その結果、交通利便性を維持しながら比較的価格が抑えられている城東エリアへ需要がシフトしている可能性がある。


また、城東エリアは生活利便施設や教育環境も充実し、ファミリー層との相性も良い地域。実際に市場データを見ても、価格上昇局面であっても一定の成約件数が維持されており、実需によって市場が支えられている様子がうかがえる。

市場全体が二極化する中でも、実需を基盤とするエリアは流動性を維持しやすいことを今回の分析結果は示している。

今回、駅単位で分析したことで特に興味深かったのが大森駅。

大森駅は、大規模再開発やタワーマンション開発が続き、大きく価格上昇した大井町駅に隣接している。

大井町駅周辺では再開発への期待や新築供給によって価格が大きく上昇したが、その反面、高額帯マンションを中心に在庫が増加し、流動性の低下も確認されている。

一方、大森駅では逆に在庫が減少している。この違いは非常に興味深く、大井町駅で価格が上昇した結果、「同じ沿線で利便性が高く、より割安な大森駅」を選択する購入者が増えている可能性がある。いわば需要が隣接駅へ波及している状態であり、価格上昇局面ではよく見られる市場の特徴でもある。

再開発エリアそのものが成熟期に入り価格が高止まりすると、その周辺駅へ需要が移転する現象は過去にも数多く見られてきた。

今後も大規模開発が進むエリアでは、開発駅だけでなく、その周辺駅の在庫や流動性にも注目することで、新たな需要の変化をいち早く把握できるかもしれない。

「マンション価格は上がり続ける」という見方が広がる一方、市場では少しずつ変化も始まっている。
価格だけを見るのではなく、「在庫が増えている街」と「すぐ売れる街」の違いを知ることで、不動産市場の今をより立体的に読み解くことができそうだ。
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