【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#96
アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』(1967年11月27日)④
◇ ◇ ◇
■『愛こそはすべて』(オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ)』
『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』と並んで、1967年のビートルズを代表する曲だろう。
イギリスBBCが音頭を取って、5大陸.14カ国の放送局が参加。
代表曲となったのには、実に分かりやすく、シンプルなタイトルの力が大きいだろう。
「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」=「あなたが必要としているすべては愛である」=「愛こそはすべて」。ここでは邦題も完璧である。【オリジナル記事で試聴する】
ただ、そんな立て付けの力もあって、神聖かつ高尚な歌だと捉えられすぎているように思う。
久々にゴーマンかますと、『愛こそはすべて』はコミックソングだと思う。
まずフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」から始まるのが、いきなり大げさである。
ジョンによる歌い出しの歌詞は「ちょっと何言ってるか分からない」。「出来ないことは出来ない」なのか、「出来ることはすべてやってきた」なのか、翻訳には2つの説があるというではないか。
また、そのパートは、4拍子+3拍子の7拍子という妙なリズムになっていて、人を食ったよう。
エンディングでは、グレン・ミラー楽団の『イン・ザ・ムード』やイングランド民謡『グリーンスリーブス』、さらに自身の『シー・ラヴズ・ユー』までワラワラ出てくる。
世界に向けて放送された映像は、私も若い頃に見て、結構感動したものだが、今見ると、コント的というか、バカ騒ぎという感じで、少なくとも神聖で高尚なものだとは思えない。
という意味で「コミックソング」なのだ。でも逆にいえば、そんな曲が、タイトルの妙もあり、かつ時代のムードをギュッとつかんで、ビートルズの代表曲の一つにのぼりつめたのだから、痛快と言えば痛快、ビートルズ的と言えばビートルズ的である。
最後に、満を持して「ラトルズ」の話をしたい。70年代後半に活躍(?)したビートルズのパロディーバンドなのだが、彼らの代表作であるテレビ映画のタイトルが、この曲の見事なパロディーとなっている――『オール・ユー・ニード・イズ・キャッシュ』。
そしてここでも邦題ががんばる──『4人もアイドル!』。
▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。

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