【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#110


『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』(1968年11月22日発売)⑩


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■『マザー・ネイチャーズ・サン』


『ホワイト・アルバム』におけるポールのベストトラック。


「ジョンが『レボリューション9』やら何やら変なことやっているけれど、俺はちゃんと地に足のついた音楽をやっていくぞ」という意志が伝わってくるような曲だ。


「地に足」は「大地に足」である。タイトルが「母なる大地の息子」という意味なのだから。


 大自然の中で、日がな歌を歌っている少年の歌。いわば、音楽の授業で習う合唱曲として知られる『大地讃頌』のビートルズ版といっていい。


 世界中の大都会をコンサートで駆けずり回り、ロンドンのど真ん中で、最先端サウンドを追求してきたポールの疲労感を反映したのだろうか。【オリジナル記事で試聴する


 印象深いのがポールの弾くアコースティックギター。LPのB面3曲目『ブラックバード』もそうだが、ギターの伴奏だけを取り出しても、うっとりするほど美しい。そして、とてもうまい。


 ベースはもちろん、アコギもエレキも、そしてピアノも、メンバーの中でいちばんうまいのはポールである。ドラムスは……そりゃやっぱりリンゴでしょう。


 しっとりとしたアレンジがいいのだが、ホーンセクションが余計な気もするなぁ──と、私と同じように感じる人向けに、また同じような話をするが『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』(1996年)にギター1本で歌う「テイク2」が収録されていておすすめ。そっちも、いやそっちの方がいい。


■『ヘルター・スケルター』


 タイトルはイギリスにおけるらせん状のすべり台の意味。また「慌てふためく」「混乱する」などの意味もあり、原語の語感も合わせれば「シッチャカ・メッチャカ」といったところか。


 かつて、よく「ハードロックの元祖」として紹介されていたと記憶する。でも、コーラスが多用されていたり、トランペットやサックス(なぜかジョンが吹いている)が入っていたりと、レッド・ツェッペリンなどの同時期のハードロックとは根本的に異なる音像なので「ハードロックの元祖」というよりは、唯一無二の「シッチャカ・メッチャカ・ロック」として解釈した方がいいだろう。



 一度フェードアウトして、またしつこくフェードインしてきた後、ラストでリンゴが叫ぶ──「アイ・ガット・ブリスターズ・オン・マイ・フィンガーズ!」


 この響きが、何だかかっこよくて、私は少年時代、意味も知らずに、このフレーズをよく叫んだ。意味を知ったのは大人になってからだ──「指にマメが出来ちゃった!」。えっ、そんな意味だったのん? 


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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