【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#18


 記憶の中にある一番古いオリンピックの映像は1964(昭和39)年、小学4年生の時に見た東京大会だ。三波春夫の「東京五輪音頭」は、今でも歌詞を見ないで歌える。

次のメキシコ大会以降のオリンピックも、毎回テレビの前にいた。


 今からちょうど10年前、2016年の8月に行われたのが「リオデジャネイロ五輪」だった。5日に始まったこの大会で、日本は史上最多(当時)の41個のメダルを獲得。テレビは競技中継に多くの時間を費やし、ニュース・報道番組も五輪一色になった。


 NHKの「ニュースウオッチ9」(NW9)も例外ではない。8月18日の放送では、1時間番組の中で、何と五輪に45分も割いていた。番組の前後で中継しているにもかかわらずだ。もちろん、レスリング女子3人が金メダルに輝いたことも、卓球男子団体が銀メダルを取ったことも結構だが、はしゃぎ過ぎだった。


 驚いたのは、男子卓球のエース・水谷隼がお笑いタレントの波田陽区に似ているからと、福岡でユニホーム姿の波田に水谷選手の真似まで披露させたシーンだ。さらに、リオのスタジオにやってきた水谷に、東京の鈴木奈穂子アナが「似ていること」について感想まで求めていた。こんな愚かしい海外中継インタビューなど前代未聞だ。


 この頃、「NW9」はNHKの看板とも言える報道番組だった。

だが、前年春にキャスターが河野憲治・報道局国際部長と鈴木アナに交代。番組全体がやけにマイルドになる。何か起きた際に、「今夜のNW9はどう伝えるだろう」という期待感も薄れてしまった。


 7月の参議院選挙でも、投票3日前だというのに、ひと言も報じないことさえあった。視聴者からも皮肉を込めて「ニュースに政治を持ち込まない」と揶揄されたほどだ。


 政治ネタを避ける報道番組は論外だが、安易なバラエティー化も困る。NHKもくだけたところを見せたかったのか、視聴者に媚びたのか、五輪を盛り上げるにしても方向が間違っている。この番組の中で、「自己満足のための練習は100時間やったとしても無駄な練習」という水谷の言葉を紹介していた。この「練習」の文字を、「報道」に置き換えたくなる。


 ちなみに、リオ五輪の閉会式では安倍晋三首相(当時)が「マリオ」に扮して登場し、世界的な失笑を買ったことも思い出す。16年当時、すでに私たちはオリンピックについてさまざまなことを知っていた。それは単なるスポーツの祭典ではない。

テレビをはじめとするメディアによって、劇的に演出された“メディアスポーツ”である。マーケティング戦略を駆使した“ビッグビジネス”の側面をもつ、世界最大規模のイベントなのだ。


 だからこそ報道番組まで本分を忘れるほど浮かれてはならない。そのことを痛感させられた“五輪の夏”だった。


(碓井広義/メディア文化評論家)


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