【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#116


 アルバム『イエロー・サブマリン』(1969年1月17日)①


  ◇  ◇  ◇


 時系列がややこしい。整理する。


 1968年(日本では69年)に公開された同名のアニメ映画のサウンドトラックである。発売は年をまたいだ69年1月(イギリス、アメリカ)。


 ただし、ビートルズの楽曲が収録されているのは、アルバムの(LP時代でいう)A面だけで、B面は、音楽監督のジョージ・マーティンが作曲し、オーケストラが演奏した映画音楽が収録されている。


 そういうわけで、白状すれば、私はこのB面、人生で数回しか聴いたことがない。言うたった。


 A面に入っている曲は6曲。うち主題歌『イエロー・サブマリン』は、66年のアルバム『リボルバー』に収録されていたのはご存じの通り。加えて『愛こそはすべて(オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ)』も67年に発表済み。


 結果、新曲は4曲。しかし、ここでさらにややこしいのは、うち3曲が、アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の録音時期=67年前半に録音されたもので、残り1曲『ヘイ・ブルドッグ』も68年前半の録音ということだ。


 以上をまとめていえば「66年の主題歌と、67年.68年前半に録音しながら未発表の曲をA面にまとめたアルバムを、68年公開の映画のサントラとして、69年に発売した」ということだ。ヤヤコシ。


 だから、すでに『ホワイト・アルバム』を越えたタイミングでの発売にもかかわらず、またサイケデリック感覚が復活した音像になっている。


 さて「録音しながら未発表」というしわ寄せは、当時のビートルズの力関係から、ジョージの曲が受け止めることになる。新曲4曲中、2曲がジョージ作。


 しかしその『オンリー・ア・ノーザン・ソング』『イッツ・オール・トゥー・マッチ』が案外いけるのだ。少なくとも、前作『ホワイト・アルバム』収録『ロング・ロング・ロング』や『サボイ・トラッフル』なんかより全然いい。


 そしてポールの『オール・トゥゲザー・ナウ』は、映画のエンディングでなかなか印象的に使われるし、ジョンの『ヘイ・ブルドッグ』も無鉄砲なグルーヴを聴かせる。


 結論をいえば、案外充実の一枚なのだ。あっ、B面抜きだから「充実の0.5枚」か。


 で、肝心の映画自体の中身は……まぁ、おすすめはしません。ビートルズの映画は『ハード・デイズ・ナイト』かそれ以外か、なのである。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。

主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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