【伝説のカメラマン加納典明氏が見た草間彌生さん】#1
水玉模様や「かぼちゃ」の作品などで世界的に知られた前衛芸術家・草間彌生さんが14日、多臓器不全のため97歳で死去した。
今や「世界の草間」と呼ばれる巨匠だが、半世紀以上前のニューヨークで、その姿を間近で見ていた日本人がいる。
作家・増田俊也氏による連載「増田俊也 口述クロニクル『時代に挑んだ男 加納典明』」から、半世紀以上前にニューヨークで交錯した2人の姿を伝えた回を、全3回で再掲載する。今回は第1回。
◇ ◇ ◇
増田「渡米するときに国内では平凡パンチ以外にも何か依頼はありましたか」
加納「うん。あった。『ニューヨークから帰ってきたら加納さん、うちのギャラリーで個展やってよ』って言う人がいて『うん、いいよ。なんか撮ってくるよ』って。平凡パンチの仕事終わってから向こうでヌードやら街の景色やらスナップショットも随分撮った」
増田「そのときに草間彌生さんと会ったんですね」
加納「そうです。石川次郎が『ちょっと変なのがいるんだよ』って。当時、彼女は男根の大きな模型を無数に作って並べたり……ご存じですよね。あの時代です。
※アンディ・ウォーホル:20世紀のアメリカを代表する画家。版画家。芸術家。1928年、スロバキア移民の両親の元でペンシルベニア州に生まれる。カーネギー工科大学卒業後、ニューヨークへ移った。1961年、キャンベルスープの缶や紙幣をモチーフにして描いて大ブレーク、ポップアートの旗手となって世界の美術界を牽引した。
増田「まさに世界の芸術が変わるその瞬間の時ですね」
加納「うん。で、僕もブルックリンブリッジの上とか、セントラルパークとか、普通だったらパーミット(許可)は絶対おりないようなところでヌードを撮りましたね」
増田「ゲリラ撮影ですね」
加納「そう。撮ってはサッと逃げるというやり方で。例えばウォール街なんかじゃ普通、ヌードは撮れないですよね。
増田「そういうときに草間彌生さんと会って、あの伝説的な写真集『FUCK』に行き着くと」
加納「そうです」
増田「『FUCK』の撮影以外で典明さんと草間さんの関係は?」
加納「いや、もう全然ないです。その時だけですよ。で、その時も、『じゃあ加納さんのためにパフォーマンスしてあげます』って、イーストビレッジの彼女のスタジオに行ったわけですよ」
増田「マンハッタンですね」
加納「そう」
増田「1969年といったら、まさにイーストビレッジに芸術家やヒッピーたちが住み着くようになった頃。カウンターカルチャーの世界の中心地となっていく」
加納「そのとおりです。それで草間さん、何をやるのかなと思ったらいきなり乱交パーティーですよ。いったいなんだこれはと思いつつ、撮るっきゃねえっつうんで、もう撮りまくった」
増田「衝撃的な光景ですね」
加納「そう。乱交パーティーなんて、見たことも、やったこともないわけでしょ。
増田「乱交には草間さんも参加してるんですか」
加納「いや、セックス自体には参加してない」
増田「コーディネーション?」
加納「ハンドリングですね」(つづく)
▽かのう・てんめい:1942年、愛知県生まれ。19歳で上京し、広告写真家・杵島隆氏に師事する。その後、フリーの写真家として広告を中心に活躍。69年に開催した個展「FUCK」で一躍脚光を浴びる。グラビア撮影では過激ヌードの巨匠として名を馳せる一方、タレント活動やムツゴロウ王国への移住など写真家の枠を超えたパフォーマンスでも話題に。日宣美賞、APA賞、朝日広告賞、毎日広告賞など受賞多数。
▽ますだ・としなり:1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。

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