【AKB48 20年の軌跡 光と影】#1
「しょせんは競争社会。キレイごとをいっても始まらない」
自嘲するように話すのはAKB48が上りつめていく様子を間近で見てきたテレビ局の元ディレクター。
2009年──。国を揺るがす2つの大きな選挙が行われた。ひとつは自民党を政権から引きずり降ろした第45回衆院選。そして、女性アイドルグループ時代の絶頂をつくり出すことになる第1回「AKB48選抜総選挙」である。まるで当時の「ゆとり教育」にアンチテーゼを突きつけるかのような衝撃だった。
同年4月26日、AKB48はNHKホール(東京・渋谷区)でコンサートを行っていた。最後に大島麻衣、川崎希、早野薫の3人が卒業のあいさつをして、メンバー全員が引き揚げたあとだった。ステージ上のスクリーンに突然、AKB48劇場支配人の戸賀崎智信の顔が映し出された。戸賀崎は総選挙開催を宣言し、「ガチです」と付け加えた。どよめいたのは観客だけではなかった。舞台袖にいたメンバーたちからも悲鳴ともつかない驚きの声が上がった。誰もそのことを聞かされていなかったのだ。
「総合プロデューサーの秋元康さんは相当あせっていたのだと思う」と振り返るのは前出の元ディレクターだ。
AKB48は07年12月、紅白歌合戦初出場を果たす。秋元がグループを立ち上げてわずか2年のことである。ただ、この初出場は完全なものではなかった。AKB48単独での出場ではなかったのだ。中川翔子、リア・ディゾンと合わせて一組の扱い。いわゆるオタクたちが推す「アキバ枠」としての出場だった。
もっと頑張らなければと決意を新たにしたメンバーたちだったが、早くも陰りが見え始める。翌年の紅白にAKB48が選ばれることはなかった。80年代半ばにフジテレビのバラエティーから誕生したおニャン子クラブの二の舞いかとテレビ関係者の多くが思った。秋元が全楽曲の作詞を担当したおニャン子は2年半で表舞台から姿を消した。
しかし、なぜ総選挙だったのか。
「選抜から漏れたメンバーを推すファンからの攻撃が2ちゃんねるにずらりと並び、秋元さんはウンザリしていた。ウザいファンを黙らせるのに何かいい手はないかとひねり出したのが総選挙だった」と話すのは内情を知るフジテレビの関係者だ。
「おニャン子時代、放送作家としての秋元さんは与えられたテーマを具体化する能力にたけていた。どうすればウケるか、本能的にツボを心得ているんです」
賛否両論を生んだ総選挙だったが、おニャン子の失敗を経験済みの秋元はこれをしっかりビジネス「AKB商法」に結びつけていくのである。
09年7月8日、衆院選より2カ月近く早く、運命の投票結果の発表が行われようとしていた。会場の赤坂BLITZには固唾をのんで見守るメンバーとファンたちの姿があった。(敬称略)

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