【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#126


 アルバム『アビイ・ロード』(1969年9月26日発売)⑥


  ◇  ◇  ◇


■『マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー』


『ホワイト・アルバム』(68年)に収録された『ハニー・パイ』の系列という感じの、いかにもポールらしい楽しい曲調。「♪ブンチャ・ブンチャ」というツービートのリズムで、気分がウキウキしてくるではないか。

コマネチッ。


 が、実はこれ、連続殺人犯の歌なのだ。そして「銀のトンカチ=シルヴァー・ハンマー」は殺人道具なのである。物騒だ。


 曲調と歌詞のギャップという意味では、結婚式の定番になっているホイットニー・ヒューストン『オールウェイズ・ラヴ・ユー』(92年)が実は別れの曲だったというのに近いものがある。


 ご丁寧にも「♪カンカン」とトンカチを叩く音が入っている。映画『レット・イット・ビー』(70年)ではスタッフ=マル・エヴァンズが適当に叩いていたが、レコード音源ではリンゴがちゃんとしたタイミングで叩いている。


 でも歌詞によれば、この「♪カンカン」も金床ではなく人体に向かっているのだ。こわーっ。


 ここにも出てくるのがシンセサイザー。前回の『ヒア・カムズ・ザ・サン』よりも、さらに大胆に使っているのだが、例えば試聴リンク再生時間「0:51」からなどは、今聴くと、さすがに時代がかっていてつらいものがある。


 あっ、つらいといえば、マル・エヴァンズの最期もそうで、この曲の歌詞を地で行くつらいものだった(検索されたい)。

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■『オー!ダーリン』


 アルバム3曲目の『マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー』に続く、4曲目もポールの曲。『ウィズ・ザ・ビートルズ』(63年)の『ユー・リアリー・ゴッタ・ホールド・オン・ミー』を思い出させるような、正統派のロッカバラード。


 おそろしくキーが高く、ポールと同じキーで歌える人は、まぁ少ないだろう。しかし当初は、レコード音源(キー:A)よりも、キーがさらに半音高かった(B♭)というから驚く。


 そのせいもあり、歌入れにはかなり苦労したようだ。1週間ステージで歌い続けたような荒削りな声を目指し、歌入れに何日もかけた甲斐もあって、ポールのド迫力のボーカルが堪能できる。


 この曲の影響により、その後の日本において、多数の「オー!ダーリン・チルドレン」が生まれた。矢沢永吉『アイ・ラヴ・ユー、OK』(75年)や、南佳孝『スローなブギにしてくれ』(81年)はその中の長男・次男的存在である。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。

日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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