俳優の仲野太賀(33)が主演を務めるNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」が、ここに来て正念場を迎えている。8月30日放送の第33話の平均世帯視聴率は9.2%(関東地区)と、番組開始以来初めて1桁台に突入した。


 そんな中、作品をめぐって別の波紋も広がっている。戦国武将・中川清秀の描かれ方が「史実とかけ離れている」として、ゆかりのある大分県竹田市と大阪府茨木市が8月28日、NHKに連名で文書を送った。


 問題となったのは23日放送の第32話「賤ヶ岳の決闘」。史実では羽柴秀吉方として参戦し、大岩山砦を守って討ち死にしたとされる清秀が、ドラマでは秀吉方を裏切り、拠点を敵方に差し出したかのように描かれた。両市は演出や脚色そのものは「表現の自由」と理解を示しながらも、「できる限り正確な史実を尊重することを願う」と申し入れている。


 もちろん、大河ドラマは歴史ドキュメンタリーではなく、フィクションとして描かれている。だが、それはあくまでも“史実に沿うこと”を暗黙の了解として成立するものだろう。一方で人物の会話や感情、人間関係など、史料だけでは分からない部分を脚本家が想像しながら物語にするからこそ、歴史上の人物が現代の視聴者にも身近な存在になるといえる。


■史実に必ずしも忠実ではなくても許されるケース


「2022年放送の『鎌倉殿の13人』も史実そのものを忠実に再現した作品ではありませんでしたが、脚本家の三谷幸喜さんが史料の少ない鎌倉時代を逆手に取り、分からない部分を創作で肉付けすることで人物を立体的に描きました。24年放送の『光る君へ』も紫式部について不明な部分が多いからこそ、大胆な恋愛模様などを描く余地がありました。ただ、今回の中川清秀のように、すでに知られている歴史上の行動そのものを反転させる演出となると、空白を埋める創作とは受け止められ方が違います。大河にはフィクションでありながら、視聴者側にある程度は史実に沿っているという信頼もありますから、その線引きは難しいところでしょう」(ドラマ制作関係者)


 実際、「鎌倉殿の13人」は脚本の巧みさが高く評価された。

三谷幸喜氏自身も、「あまりドラマで描かれてこなかった鎌倉幕府草創期だったことが、先の読めない展開につながった」と第114回「ザテレビジョンドラマアカデミー賞」で「鎌倉殿の13人」が脚本賞などを受賞した際のインタビューで振り返っている。


 では、なぜ「豊臣兄弟!」はここまで大胆な史実改変に踏み切ったのか。


「信長、秀吉、家康を中心とする戦国時代は、これまで大河ドラマで何度も描かれてきました。視聴者も本能寺の変や賤ヶ岳の戦い、その後の天下統一まで大まかな展開を知っています。制作側としては同じ歴史をもう一度見せる以上、新しい人物像や意外な展開を作らなければ新鮮味が出にくいという難しさがあるでしょう。23年放送の『どうする家康』でも、築山殿と信康の死を"お涙ちょうだい"の悲劇として成立させるため、従来の史実認識とは正反対ともいえる設定を導入しています。その後も史実とは直接結びつかない"築山殿の思い"が物語を左右し、一部では“メルヘン大河”などと揶揄されました。戦国時代という鉄板ジャンルを繰り返すほど、"史実通りでは既視感がある、変えれば史実改変と批判される"というジレンマは大きくなるでしょう」(前出の関係者)


 人気の戦国時代を描いて史実改変するより、小栗上野介忠順を主人公とする来年の大河「逆賊の幕臣」のような新鮮なテーマを発掘する方が「豊臣兄弟!」のような批判は起きにくいのかもしれない。演出と視聴率との兼ね合いでNHKの試行錯誤が今後も続きそうだ。


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