タイ国際航空(TG)の客室乗務員によるオーストラリア・メルボルン空港でのヘロイン密輸事件は、背後に国際的な麻薬シンジケートが関与している可能性が濃厚となった。タイ政府および航空当局は事態を重く受け止め、再発防止策として全乗務員を対象とした手荷物検査の厳格化を決定。
国家の威信をかけた信頼回復への動きが急ピッチで進んでいる。

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 謎のアカウント「Rose」の背後関係と巧妙な手口

 タイ麻薬取締委員会(ONCB)とサイバー犯罪捜査局の合同捜査により、新たな事実が判明した。タイの有力英字紙『バンコクポスト』の7月4日付の報道によると、乗務員にSNSを通じて接触したFacebookアカウント「Rose」のIPアドレスは、タイ国外の周辺国にあるサーバーを経由し、巧妙に偽装されていたことが特定された。同紙は「背後には、周辺国を拠点とし、航空関係者を運び屋として利用する大規模な多国籍麻薬シンジケートが存在する」と報じている。

 また、タイ語日刊紙『タイラット』は、「乗務員はSNSでのやり取りの中で、荷物の中身について疑問を呈していたものの、最終的には報酬の誘惑と『絶対にバレない』という相手の巧妙な説得に屈した」とする捜査関係者の証言を引用し、一般市民や航空業界のスタッフを狙う犯罪組織の悪質さを厳しく糾弾した。

 タイ政府による抜本的な再発防止策の導入

 事件を受け、タイ政府は迅速な対応を見せている。運輸省幹部は7月3日の緊急会見で、「この事件はタイの航空業界全体の信頼を大きく失墜させる極めて遺憾な事態だ」と非難した。その上で、タイの空港を運営するタイ空港公社(AOT)に対し、スワンナプーム国際空港を含む国内主要空港において、国際線で出発する全ての航空機乗務員の手荷物を対象とした「100%X線検査および無作為の徹底的な開錠検査」を即時導入するよう命じたと発表した。

 これまで、制服を着用した身元確認済みの乗務員に対しては、保安検査が一部簡略化される「ファストトラック」の慣例が存在したが、今後は一般旅客と同等、あるいはそれ以上の厳格なセキュリティチェックが義務付けられることになる。

 タイ国際航空の決断と今後の行方

 渦中のタイ国際航空(TG)も7月4日午前、最新の公式声明を発表した。同社は「従業員がこのような重大な犯罪に関与したことは痛恨の極みであり、国民および関係各国に深く謝罪する」と改めて陳謝。当該乗務員については、社内規定に基づき厳正な解雇処分に向けた手続きに入ったことを明らかにし、オーストラリア連邦警察(AFP)およびタイ当局の捜査に全面的に協力する姿勢を強調した。


 さらに同社は、全客室乗務員および運航乗務員を対象に、「第三者からの荷物預かりの絶対禁止」を再徹底するための緊急コンプライアンス研修を同日より開始したと表明している。一人の乗務員の軽率な行動から発覚した密輸事件は、タイの航空セキュリティの根幹を揺るがす事態へと発展した。国際的シンジケートの全容解明と、失墜したフラッグ・キャリアの信頼回復に向け、両国当局による執念の捜査が続いている。
【編集:af】
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