タイの首都バンコク北部チャトゥチャック区の人気パブ「ナ・ラップラオ」で2026年7月12日深夜に発生した大規模火災は、少なくとも27人が死亡、63人が負傷する惨事となった。翌13日、市内の病院に搬送された負傷者のうち22人が依然として集中治療室で治療を受けていることが判明した。
重体患者の多くは一酸化炭素中毒や気道熱傷など深刻な症状を抱え、タイ保健省は専門医療チームを増員して救命活動に当たっている。予断を許さぬ状況が続く一方、懸命な治療により一部患者にはわずかな改善の兆しも見え始めている。

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 タイ有力紙「タイ・ラット」は13日午後の報道で、病院関係者の話として「被害者の大半が火災発生時に有毒ガスを大量に吸い込み、重度の呼吸器損傷を負った」と伝えた。同紙によれば、燃えやすい防音材の燃焼で発生した化学物質が気道や肺に深刻なダメージを与え、一部患者は高度な血液浄化措置による生命維持が必要な状態にあるという。医療陣は「昼夜を問わず全力を尽くし、最新の解毒治療や厳格な衛生管理を実施している。患者の回復の可能性を信じて治療を続けている」とコメントしている。保健省も病院間の連携を強化し、気道熱傷治療薬の迅速供給体制を構築した。

 現場検証も13日朝から本格化した。英字紙「バンコク・ポスト」は、ステージ付近の分電盤で電気系統のショートが火元となった可能性が高いと報じた。生存者の証言によれば、23時57分ごろ分電盤から不審な煙が上がり、直後に爆発音と停電が発生。暗闇の中で客は唯一の広い出口である正面入り口に殺到したが、炎と黒煙で完全に遮断されていた。逃げ場を失った多くの客は建物奥のトイレ付近に避難し、そこで多数の犠牲者が発見された。


 同店は騒音防止のため密閉性が極めて高く、窓がほとんど設置されていなかった。ニュースサイト「マティチョン」は、この構造が被害を甚大にした最大要因と指摘。天井や壁に大量使用された安価なウレタン製防音材が燃焼し、短時間で致死性の有毒ガスが充満して客の意識を奪ったとみられる。さらに、建築基準法で義務付けられた非常口や自動消火設備が設置されていなかった疑惑も浮上し、「利益優先で安全を軽視した人災だ」と厳しく批判した。

 バンコク首都警察は同日、店舗経営者や建物所有者に対する本格捜査を開始。安全基準を逸脱した営業が多数の死傷者を招いたとみて、業務上過失致死傷や消防法違反の疑いで事情聴取を進めている。過去の立ち入り検査で設備不備が指摘されていたかが焦点で、行政機関のずさんな検査体制や業者との癒着の有無も徹底調査する方針だ。警察幹部は会見で「違法な構造変更や安全対策の怠慢は明白であり、責任を厳しく追及する」と強調した。

 タイでは過去にも同様の悲劇が繰り返されてきた。2009年にはバンコクのナイトクラブ「サンティカ」で66人が死亡、2022年には東部チョンブリ県のパブ「マウンテンB」で14人以上が犠牲となった。いずれも非常口不足や防音材の危険性、劣悪な電気設備が問題視されたが、行政による規制強化や定期検査は徹底されず、法規が形骸化している現状に国民の怒りと不信が高まっている。

 事態を重く見たタイ政府首相は13日、全国の類似娯楽施設に対する緊急点検を指示。
消防設備の作動状況や非常口の確保を厳格に確認し、基準を満たさない施設には即時営業停止を命じる権限を自治体に付与した。しかし、長年黙認されてきた構造的問題を短期間で解決するのは容易ではなく、政府は法改正を含む抜本的な安全対策の確立を迫られている。集中治療室で生死の境をさまよう22人の回復を祈る家族の悲痛な叫びは、二度と同じ悲劇を繰り返してはならないというタイ社会全体への重い問いかけとなっている。
【編集:af】
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