中国の結婚式が、いま猛烈な勢いで“常識崩壊”を起こしている。かつては赤い箱にミルクキャンディを詰めて配る「喜糖(シータン)」が定番だったが、若者はこの伝統をあっさり裏切った。
甘い飴? そんな昭和の名残みたいなもの、誰が欲しいのか——とばかりに、無糖グミ、プロバイオティクスグミ、辣条(スパイシースティック)、ドリップコーヒー、ティーバッグ、ビスケット、さらにはスクラッチくじまで投入。もはや“糖”どころか“菓子”ですらない。

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 光明日報が伝えるところによれば、若者の喜糖は「ヘルシー系」「刺激系」「ギャンブル系」へと爆走中。澎湃新聞はさらに、牛肉干や味付けウズラ卵まで登場していると報じる。結婚式の演出も奇想天外で、ウェディングカーがトラクターや自転車、観光ミニトレインに変身。伝統の枠を軽々と飛び越え、「どうやって自分らしさを見せつけるか」の勝負になっている。

 テンセントニュースによれば、菓子大手「徐福記(Xu Fu Ji)」までこの波に乗り、喜糖を“婚礼のミニチュア・ファッション”と再定義。ドーパミン風ドット、レオパード柄、花とリボン——まるでコスメの新作発表のようなパッケージが並び、味も“軽甜系”へと進化。若者の「喜糖は婚礼美学の一部」という意識に合わせ、ブランド側も必死に若者の感性に寄り添っている。

 一方、東方新報は結婚式そのものの価値観が変わっていると指摘する。杭州の婚姻登記センターでは、宋代の婚礼文化をデジタルで体験できる「デジタル婚俗博物館」が人気。若者は赤い紙で「囍」を切り抜き、自分の手で“幸せの象徴”を作る。
伝統を尊重しつつも、形式に縛られない自由な表現を楽しむ姿が浮かび上がる。

 ——だが、この華やかな“結婚式の進化”の裏側には、もうひとつの現実がある。

 いまの中国で結婚できる若者は、実はかなり恵まれた層だ。
 就職難は深刻で、都市部では若者の失業率が高止まり。仕事を見つけられず、人生設計すら描けないまま、結婚どころか恋愛を諦める人も増えている。SNSには「結婚式どころか、生活の喜びすら見つからない」という声が溢れ、未来への不安が若者の心を覆っている。

 そんな中で結婚式を挙げられるカップルは、経済的にも精神的にも“勝ち組”。だからこそ、彼らは結婚式を「自分たちの人生観を表現する舞台」として使い、喜糖ひとつにも徹底的にこだわる。無糖グミも辣条もスクラッチくじも、トラクターのウェディングカーも、デジタル婚俗体験も——すべてが「自分たちは幸せをつかんだ」という強烈なメッセージなのだ。

 かつての「甘い飴を配る」習俗は、いまや「どうやって自分の喜びを伝えるか」という競争へと変わった。伝統と革新が交差する中国の結婚式文化は、若者の自己表現の爆発と、結婚できる者だけが持つ“特権的な幸福”の象徴になりつつある。

 喜糖の再定義は、そのドラマのほんの序章にすぎない。

【編集:af】
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