「美輪さんがご自宅で、家人に伝えた最期の言葉は“ありがとう”でした。それからしばらくして、眠るように静かに目を閉じ、天に召されました」(関係者)

6月20日、老衰のため91歳で亡くなった美輪明宏さん。

歌手、俳優としてだけでなく、“唯一無二の表現者”として、その生き方や言葉に励まされた人たちもたくさんいるはずだ。

『女性自身』にも定期的に登場してくださった美輪さん。古くは、昭和41年(1966年)に「常識に反論する 男の頼りなさを叱る!」というテーマで、働く女性たちとの座談会に参加。当時は、本名の“丸山明宏”として登場されていた。以後、60年にわたる長いお付き合いが始まりました。

特にこの20年近くは、毎年のように年末年始の発売号で、美輪さんの愛のメッセージを読者に届ける記事を掲載。その年に起きた政治、経済、芸能、スポーツ、災害、事件、事故……。ありとあらゆる出来事を“美輪さん視点”で振り返ってもらい、最後に新たに迎える1年を生き抜くための“金言”をアドバイスしてもらうのが恒例となっていた。

今回の追悼特集では、その金言の中から美輪さんが語った貴重な「人生教則」を7つ厳選してお届けします。

■理知を磨いて、頭は冷たく、心は温かく

生きていればさまざまなトラブルに巻き込まれます。そのときに、いかに冷静に考え対応できるか。これができるかできないかで人生は大きく変わってきます。

冷静に考えるためには学ぶこと。ただ“知識を増やす”のではなく“生きるうえでの知恵を養う”ことが重要となってきます。本能や感情に支配されることなく、論理的に考えるための“理知を磨く”ことを心がけましょう。

理知とは、理性と知恵で物事を判断する能力のことです。身につけた理知が、学校や家庭での生活に光をもたらしてくれます。

その先に、自分の人生やこれからの生き方も見えてくることでしょう。

ただ自分の好きなことだけをやって、人生がうまくいくなんて、世の中そんなに甘くはありません。後悔しないためにも、あなた自身を成長させる理知を磨く生き方をなさってください。

今の世の中は無関心があふれる不安定な時代。だからこそ、自分を見失わないことが重要です。そのためには、つねに冷静沈着でいることが大事です。感情に任せて行動すると、物事の判断を誤ります。

つねに頭は冷たく、心は温かく。これを心の中に留め置くためにも、大いに学んで、理知を磨いてください。

■ニッコリしていれば、すべての活路は開ける

対人関係がうまくいってない人はたいてい、喜怒哀楽をあまり顔に出したがりません。表情が乏しく、暗くよどんだ顔つきをしている。そんな顔をしている人とお近づきになりたいと思いますか?

誰も話しかけてこないから、無表情な人は孤立しがちです。だから、恋愛もうまくいかない。友達から食事や旅行にも誘ってもらえない。

些細なことですが、それが積もり積もると、自暴自棄な人生を送ることになりかねません。

では、どうすれば人生を謳歌することができるのか?

答えは簡単です。いつもニコニコして、ほほ笑んでさえいれば、人生はおのずと開けていきます。

ただニッコリするだけ。たったこれだけのことをやるだけでいいのです。

ところが、それをできない人が多すぎるように思います。

私は90年間の人生でいろいろな人を見てきましたが、人生がうまくいった方の顔はみんな笑顔です。いつもほほ笑んで過ごせれば、必ず活路が見いだせる。

何か問題が起きても、ほほ笑んで考えるのと、泣きそうな顔をして考えるのとでは結論が違ってきます。ほほ笑みはプラス思考になるからポジティブな発想ができるのです。そして余裕も生まれます。そうすると解決を早める知恵も浮かんでくるのです。

みなさん、ほほ笑みを絶やさない人生を送ってください。きっと、すべてがうまく好転すると思いますよ。

■“人は人、自分は自分”そう考えれば腹は立ちません

アメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプさんが海外ニュースを毎日にぎわせています。目まぐるしく日々変わる彼の言動に、世界中の国々が翻弄されているように見えます。

そもそも世界中の人々が、すべて同じ思想や価値観で生きているわけではありません。

しかし、いつの時代にも“われこそが正義だ”と、一つの価値観を押し付けようとする指導者が現れます。そしてその結果、犠牲になるのはいつも市民たちです。

世の中は、さまざまな人が集まり社会を作っています。それなのに、異なる思想や価値観を否定して、単一単色にしようという発想自体が無理なことなのです。

“人は人、自分は自分”と考えることができれば、悩みもなく、腹も立ちません。さまざまな価値観があって当たり前。

そして、いろいろな価値観を排除せず、お互いを尊重して共生していく。そういう多様性のある社会があなた自身を生きやすくすると思います。

■正しい戦争、国民のための戦争など存在しません

令和の今、日本が戦争をする国に逆戻りしているように見えます。この10年でも、法律を改正し、防衛費を拡大し、さらに近隣諸国に対する挑発的な言動が幅をきかせてきています。しかし、正しい戦争とか、国民のための戦争なんていうものは存在しません。

海外ではロシアとウクライナ、そしてイスラエルとハマスが戦争をしています。

そこでは兵士だけでなく、市民や子供たちが犠牲になっています。

戦時中、小学生だった私も、庭に防空壕を掘ったり、消火訓練をしたり、いざというときに備えていました。

敵機来襲のサイレンが鳴ると、みんな防空壕に逃げ込んで、外には一切出られない。空襲警報を解除するサイレンが鳴るまではじっと息をひそめて、そのときを待つ。生きた心地などあったものではありません。私も実際にそういう恐ろしい体験をいたしました。

人はみないずれ死にます。ただし、罪なき市民を殺めたり、虐殺・略奪を繰り返した人は、死んだ後もその犯した罪は消えません。そんな“消えない罪”を未来ある若者には当然、何人にも背負わせてはいけないのです。

今こそ「反戦」と「平和の尊さ」を強く訴えなければならないのです。

■人生は何もかもがありがたく、感謝することだらけ

“上見れば、きりがないぞよ、桐の花。下見て暮らせ、藤の花”という昔の言葉があります。

欲を出したらきりがないけれど、下ばかり見ることもない。下には下がいっぱいいるわけだし、上には上がいっぱいいる。だから上を見たり、下を見たりしていればいいということだと、私は理解しております。

ところが、人は不幸ばかり数えます。自分の容姿や欠点を気にして、それをコンプレックスにする。そして他人に対しても、自分と同じような欠点がないかと粗探ししようとする。下ばかり見て自分や他人の不幸の数ばかりを気にして、幸せを数えようとしない人たちが数多くいます。

でも、冷静に考えてみてください。まず元気で生きていられること。そして食べられる、飲める、雨露をしのげる家も、寒さをしのげるセーターだってある……。

本来、不幸の数よりも幸せの数のほうが多いはずなのです。みなさん、そのことを見失ってはいませんか?

ふだん当たり前に思っていることが、どれだけ幸せなことか。まわりの方たちに支えられて生きていることが、どれだけ感謝すべきことか。もう一度、幸せと感謝を数えてみることです。

人生は何もかもがありがたく、感謝することだらけ。これをつねに頭の中に入れておけば、幸せでいられます。

不幸の数ではなく、幸せを数える人生に切り替える。

そうすれば、多少嫌なことやつらいことがあっても、明るく穏やかに毎日を過ごせるようになりますから。

■“自分より相手”見返りを求めない『無償の愛』こそ美しい

恋はすべて自分本位、愛はすべて相手本位。「恋」と「愛」の違いについて、私はずっとこう言い続けています。

「恋は思案の外」といって、恋は理屈で考えることではないという諺があります。

でも、少し先のことを考えないとお互いが不幸になるかもしれません。ですから、好きになった相手とお付き合いをしたときに、冷静に相手を見ることが大事になってきます。

まず、相手の容姿、財産、地位などを引き算する。それで何が残るか。残ったエキスが素敵だったら、それは本物。

そこからその人とずっと一緒にいたいという気持ちになるようであれば「恋」は「愛」へと変わっていきます。

お相手の方も自分の性格や才能をあなたが評価してくれるとわかれば、あなたのことがどんどん好きになってくるでしょう。お互いが人間的な魅力をトータルで理解し、好きになることで、“自分を認めてくれる、ありがたい存在”という気持ちになります。

さらに“自分より相手”――。愛する人さえ幸せだったら自分はどうでもいい。見返りを求めない「無償の愛」は与えっぱなし。相手の顔を見るだけで満たされます。自分が少々つらいときでも平気で我慢できるようになります。

そうなると、ひたむきに愛しぬく純粋な「無償の愛」の世界は、もうあなたのすぐそばにあります。

■イキイキと生きるコツは、真っすぐ姿勢を正すこと

人間というのは、死ぬときに地面が恋しくなるんです。どんどん年を取ると頭も腰もみんな曲がっていくでしょ? だんだん地面に近くなるんです。草花や木も枯れてくると、みんな地面に向かっておじぎをするじゃないですか(笑)。

だから、ふだんから姿勢をよくしておけば、若さが保てるんです。

私がいつも真っすぐ姿勢を正しているのは、とにかく地面とは仲よくならないため。つねに上へ上へ。若いうちはず~っと伸びていくんです。そしてつねに姿勢を正していれば、年を取れば取るほど、さらに上へ上へと、ず~っと伸びていく。“あと10センチ伸びるな”“あと30センチ背が伸びるといいな”と、いつもそうやって意識していると、かえって若くいられるんです。細胞も若くなりますからね。

これは生きるためのコツ。ありとあらゆる生きるコツを知ると面白いですよ。

本誌は、美輪さんのご自宅で“金言”を伺うことが多かった。

取材前、いつも緊張している記者に対し、美輪さんは冗談を言って和ませてくれたことを昨日のことのように思い出す。

取材後も、広いリビングからわざわざ玄関先までお見送りしてくださり、ご挨拶を終えると、美輪さんは両手の手のひらを記者に向け、玄関の扉が閉まるまで笑顔でバイバイ――。

もうあの笑顔と優しさに触れることができないと思うと寂しいばかりである。

60年に及ぶ長いお付き合い、本当にありがとうございました。

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