スウィフト衛星救助に向かったLINKに異変!機体の回転が止まらず通信が不安定に
Image credit:NASA Goddard

スウィフト衛星救助に向かったLINKに異変!機体の回転が止ま...の画像はこちら >>

 大気圏落下の危機に陥っているNASAの観測衛星スウィフトを救うためのミッションに関して新たな情報が入った。

 半世紀前の旅客機最後の生き残り「スターゲイザー」が、スウィフトの軌道を押し上げるために開発したロボット宇宙機「LINK」を積んだペガサスXLロケットを、無事目的地に送り届けることに成功したのは前回お伝えしたとおりだ。

 LINKは無事に軌道に乗り、順調に任務を行っていたが、機体の向きを保つ装置に不具合が生じ、回転が止まらない状態になってしまったことが、2026年7月28日のNASAの発表で明らかとなった。

 LINKとの通信も途切れがちになっており、現在プロジェクトチームが全力で復旧にあたっている。

順調な滑り出しだったロボット宇宙機「LINK」

 2026年7月3日、ロッキード社の最後の生き残りである52年前の旅客機スターゲイザーが、ロボット宇宙機「LINK」を積んだペガサスXLロケットを抱えて飛び立った。

 ペガサスXLは空中で放たれてから点火する使い捨てのロケットで、これが最後の1基である。

 スターゲイザーはマーシャル諸島のクワジャリン環礁の上空約1万2000mまで上昇し、ペガサスXLを送り届けることに成功した

 ペガサスXLは、LINKを目的の軌道まで導いた。

[画像を見る]

 LINKに与えられた任務は、大気圏へ落下しかけているスウィフトに近づき、3本のロボットアームでつかんで、軌道を元の高さまで押し上げることだ。

 軌道に入ったLINKは、順調な滑り出しを見せた。

 7月8日にはスウィフトへ向かうためのエンジンの噴射に成功し、翌9日には搭載されたカメラで、両側に広がる約6mの太陽電池パネルを自撮りして地球へ送ってきた。

[画像を見る]

 7月15日、NASAはLINKの打ち上げ後の点検作業が半分ほど終わったと発表した。

 多少の不具合はあったもののすべて修正され、電力も、機器を制御する装置も、エンジンも問題なく働いており、すべての点検を終えれば、いよいよスウィフトへ向かう飛行が始まる予定だった。 

LINKに異変、回転が止まらず通信も途切れがちに

 ところが7月下旬、LINKに異変が生じる。

 姿勢を保てなくなり宇宙空間で回転が止まらなくなってしまったのだ。機体が回ればアンテナは地球からそれるため、通信も途切れがちになった。

 7月28日、NASAが調査の結果を発表した。

 LINKには機体の向きを保つリアクションホイールという装置が3つ積まれていたが、そのうち2つが動かなくなっていた。

 宇宙には空気も地面もないため、機体の向きを変えるには何かを回した反動を使うしかない。

 リアクションホイールは内部の円盤を高速で回し、その反動で機体をゆっくり向け直す仕組みで、燃料を使わずに姿勢を保てる。

 さらに、圧縮したガスを噴き出して姿勢を整えるコールドガススラスタという装置にも、機能の低下が見つかった。

 姿勢を制御する手段を二重に失ったLINKは、自分の向きを決められないまま、宇宙で回り続けることになった。

[画像を見る]

LINKを救う作戦を開始

 だが幸いなことに、LINKの他の主要な装置は正常に動いていることが確認された。

 太陽電池パネルが生む電力には余裕があり、通信も完全に切れたわけではない。

 スウィフトを救うためには、まずはLINKを救わなければならない。

 そこで新たな作戦が開始された。

 スウィフトへ向かうために積んでいたエンジンは、キセノンガスをイオンにして噴き出す電気推進式で、本来は何か月もかけて軌道を押し上げるために使うものだが、噴射の向きを調整すれば回転を止めるのにも役立つ。

[画像を見る]

 LINKを生み出した米カタリスト・スペース・テクノロジーズ社は、このエンジンを使って数日かけてLINKの回転を止める作業に取りかかった。

 回転が止まって姿勢が安定したら、次は機体の状態を詳しく調べる。

 そのうえで、動かなくなった装置を前提とした新しい飛び方を、機体を導くプログラムに書き込み直す計画だ。

 失った手足の分を、残った手足で補う動き方を教え込むことになる。

スウィフト救出計画も練り直し

 LINKが立ち直っても、スウィフト救出がそのまま再開できるとは限らない。

 スウィフトを捕らえるには、猛烈な速さで地球を回る相手にぶつからないぎりぎりまで近づき、3本のアームで正確につかむ必要がある。

 姿勢を細かく制御できなければ、接近そのものが危険な行為になってしまう。

 カタリスト社はNASAと協力しながら、接近が安全かどうか、そしてLINKがどこまで正常に動くかを見極めたうえで、スウィフトに近づいて捕まえる計画を練り直すとしている。

[画像を見る]

 だが、スウィフトに残された時間はそう長くはない。

 自力で軌道を上げる装置を持たないスウィフトは、今も少しずつ高度を下げ続けている。

 整備を想定していない衛星を宇宙で捕まえて押し上げる試みは、史上初のミッションであり、これまで誰も成し遂げていない。

 半世紀を生きた先輩たちが最後の力で送り届けてくれたLINKと、その助けを待つスウィフトのために、プロジェクトチームは総力を挙げてこのミッションに挑んでいる。

 幸い途切れながらではあるがLINKとは通信できている。なんとかハッピーエンドを迎えられるよう、地上から我々も元気玉みたいなものを飛ばしていこうじゃないか。

References: Commissioning Update for Spacecraft to Boost NASA’s Swift - NASA Science[https://science.nasa.gov/blogs/swift/2026/07/28/commissioning-update-for-spacecraft-to-boost-nasas-swift/] / Spacecraft Commissioning On Track for Mission to Boost NASA’s Swift - NASA Science[https://science.nasa.gov/blogs/swift/2026/07/15/spacecraft-commissioning-on-track-for-mission-to-boost-nasas-swift/]

編集部おすすめ