世界の一流が就寝前に行っている習慣は何か。クロスリバー代表の越川慎司さんは「129社428名を対象に12週間、海外の一流が実践するルーティンを取り入れる検証を行ったところ、睡眠の質が改善したと感じた参加者は全体の82%に達した。
参加者が行った4つのルーティンを紹介する」という――。
※本稿は、越川慎司『世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■世界の一流が寝る前に筋トレをする理由
1日の締めくくりに、「筋トレ」を取り入れている人は、決して少なくありません。
会社帰りにジムへ立ち寄ったり、就寝前に自宅で軽く体を動かしたりする人もいるでしょう。
私自身、かつては「運動は朝に行うもの」と信じ込み、夜は疲労回復のために休むべき時間だと考えていました。
しかし、マイクロソフトに勤務していた際、夜のジムで精力的に動くエグゼクティブたちの姿を目の当たりにして、その認識は大きく変わりました。
50代や60代の幹部たちが、仕事を終えた後にウェイトを上げ、ストレッチをして帰宅するのは、彼らが自身のコンディションを維持するために確立した手法だったのです。
日本のビジネスパーソンの多くは、1日の仕事を終えて帰宅し、シャワーを浴びてベッドに入るだけで精一杯、というのが実情かもしれません。
しかし、世界の一流と呼ばれる人々は、疲れているはずの夜にあえて体を動かしています。
彼らが夜の運動を欠かさない理由の1つに、睡眠へのポジティブな影響が挙げられます。
米国National Sleep Foundationが2013年に実施した調査によれば、定期的な運動習慣がある人ほど、自身の睡眠の質が良いという自己評価をする傾向が報告されています。
運動による睡眠への影響には個人差があり、医療的な効果を保証するものではありません。
しかし、多くの人がその恩恵を実感しているのは事実です。
■「筋肉は裏切らない」が精神的な救いに
また、筋トレには精神的な救いとなる側面もあります。
仕事で目に見える成果が出ない日であっても、筋肉は鍛えた分だけ成長するため、注いだ努力が裏切られることはありません。
実際に、汗を流す過程で嫌な出来事を忘れられたり、悩みが些細なことだと思えるようになったりする人もいます。
ただし、就寝直前にトレーニングを行う際は、限界まで負荷を高める激しい運動は控えてください。
交感神経を過剰に刺激し、スムーズな入眠を妨げる原因となります。
一流の人々が夜に実践しているのは、脈拍が少し上がる程度の穏やかなメニューです。例えば、スクワット20回と腕立て伏せ10回を2~3セット、時間にして15分ほど行います。
あるいは、軽いストレッチやヨガ、20分程度の散歩でも十分な効果が得られます。
こうした適度な運動には、デスクワークで凝り固まった筋肉をほぐし、1日の疲労を運動によって解消する効果があります。
体を動かすこと自体が今日という日を「完了させる」ための儀式となり、心身を健やかなリカバリーへと導いてくれるのです。
■帰宅後の時間が遅い人でもできる快眠習慣
弊社が日本企業を対象に実施した、快眠を得るためのルーティンの効果検証実験を紹介します。

日本のビジネスパーソンは長時間労働が常態化しており、夜の自由時間が限られているという実情があります。
このような状況下で、海外の一流が実践する習慣を真似することができるのか。
短時間かつ最小限の行動であっても、確かな効果を得られるのかを検証しました。
弊社は、製造業やIT、金融、サービス業など20業種815社、計17万3208人に及ぶデータベースを保有しています。
今回の検証では、その中から129社428名を対象に選び、12週間にわたる実験を行いました。
なお、本検証は参加者の自己申告に基づくものであり、医学的検証や臨床試験ではないため、結果には個人差が生じます。
検証したルーティンは、大きく分けて4つあります。
①就寝1時間前にデジタル機器を手放す
スマホ、パソコン、テレビ等と接触しない時間を設けます。
②寝室にスマホを持ち込まない
スマホはリビングなどで充電します。
③寝る前の7分間に1日を振り返る
今日1日に対する感謝や達成したことをノートに書きます。
④就寝前のルーティンを繰り返す
シャワーを浴びてからストレッチを行うなど、毎日同じ動作を繰り返します。
参加者は、これら4つのルーティンのうち、自身が取り組みやすいものから開始し、12週間継続しました。

検証期間中は、週次の自己申告アンケートを通じて、睡眠の質、翌朝の疲労感、午前中の集中力、および仕事への前向きさを測定しました。
12週間が経過した結果、参加者の睡眠の質と仕事のパフォーマンスには、明確な変化が現れました。
睡眠の質が改善したと感じた参加者は全体の82%に達し、翌朝の慢性的な疲労感が軽減したと回答した人は74%にのぼりました。
■79%の人が仕事への前向きさが増加
また、午前中の集中力が上がったと感じた人は68%で、仕事への前向きさが増したと回答した人は79%を記録しました。
参加者からは、試せばある程度効果が出ることはわかっていたが、ついスマホを見てしまうなど、これまで実践できなかったので、いい機会になったという声が寄せられました。
夜にデジタル機器を使わなくなった分、家族との会話が増えたことを喜ぶ声や、翌朝のコンディションが整ったことで心に余裕が生まれ、職場で部下を褒めることができたという変化も報告されています。
日本人も海外の人も脳の基本的な構造は共通しているため、世界の一流が実践して効果を上げている習慣は、私たち日本人にも同様の効果をもたらすと考えられます。
今回の実験を通じて、帰宅後の自由時間が少ない日本のビジネスパーソンであっても、提示した習慣をどれか1つ実践するだけで一定の効果を得られることがわかりました。
ぜひ今夜から、先に紹介した習慣を1つでも試してみてください。意外に早く、その効果を実感できるはずです。

----------

越川 慎司(こしかわ・しんじ)

クロスリバー代表

元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。
2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。

----------

(クロスリバー代表 越川 慎司)
編集部おすすめ