ウォーキング以外にも運動不足を解消する方法はたくさんある。特に、中高年の悩みの種となるひざ関節にやさしい運動法もあるという。
内科医の工藤孝文さんが監修した『「血管と心臓にいいこと」、ぜんぶ集めました。』(青春出版社)より、一部を紹介する――。(第4回)
■スクワット不要で足腰を強くする方法
足腰に集中している大きな筋肉を鍛えるには、スクワットに励むのが最適。けれども、体力があまりない人の場合、数回続けるだけでギブアップ、といったことがあるかもしれない。そういった人でも、足腰の筋肉を効率的に鍛えられる方法を紹介しよう。
やり方は簡単、階段の一段目を上り下りするだけだ。階段のすぐ前に立ち、まず片方の足を上げて一段目に置く。次に、もう片方の足も上げて、一段目の上に立つ。今度は下りる動作。最初に上げたほうの足をまず下ろし、もう片方も下ろす。
この1サイクルを3秒程度。1分間に20サイクルほど行えば、かなり効く足腰の運動になる。
フラフラする場合は、壁に手を当てて、体を支えながら行おう。
「第二の心臓」ともいわれるのがふくらはぎ。血液が下半身に流れると、重力の関係で、そのままたまりがちになる。むくみの原因ともなるこの血液を送り出すのが、ふくらはぎの役割だ。歩いたり動いたりするとき、その筋肉が収縮・弛緩し、血液が心臓へと送り返される仕組みになっている。
そこで、毎日行いたいのが「かかと上げ」。
立った姿勢からつま先立ちになり、5秒ほどキープする。少しインターバルを挟みながら繰り返し、ふくらはぎの筋肉にちょっと効いてきた、と感じるまで続けよう。壁に手を当てて行ってもかまわない。
「かかと上げ」のあと、床にストンと落とす「かかと落とし」も加えると、さらにいい運動になる。かかとに適度な衝撃が加わって、骨づくりを担う骨芽細胞が刺激され、骨密度が上昇して骨が強くなる。
■ひざ関節に優しい「5分家トレ」
ウォーキングを日課にしているけれど、今日は雨。
傘をさしてまで歩く気はしないので、休むことにしよう。問題ない行動だと思われるかもしれないが、梅雨どきや雪の多い地方の冬なら、毎日のように運動はお休みになりそうだ。習慣は続けることが大切。
いろいろと理由をつけて休むようになると、さぼりグセがついて、やがて実行しなくなってしまう。外出するのが難しいときは、家の中で同じような運動をしてはどうか。その場でジョギングをするのだ。
それほどきつくない運動だが、ただ歩くよりも3倍近くエネルギーを消費するという。その場で足踏みをするようなものだから、ひざ関節にやさしいのも中高年にはうれしい。テレビでも観ながら、気楽にやればいいだろう。目標は5分程度。ここまで続ければ、血流が随分良くなっているはずだ。
■ふくらはぎのマッサージは実は逆効果
下半身の血流を促すのに、大きな役割を持つふくらはぎ。
そのポンプ機能を高めるには、マッサージが効果的という説がある。確かに、上手にもみほぐせば、血行が良くなりそうだ。しかし、やめておこう。ふくらはぎは血液がとどこおりやすく、血栓ができやすい。下手に強くもむと、血栓がはがれて流れ出し、肺などの動脈で詰まってしまうことも考えられる。
ふくらはぎの血流を促すには、もむよりも動かすほうがおすすめだ。足首をぐっと内側に曲げ、それから真っすぐに伸ばす。この動きを左右の足で繰り返そう。足先を「パタパタ」と動かすような要領だ。1分間ほど続けると、血流がぐっと良くなる。デスクワークの人は、1時間に1回ほど、椅子に座ったままで行おう。足先だけの動きで、ほかの席からは見えないので安心を。

椅子に座ったまま、長時間、仕事をし続ける業務もあるだろう。このような仕事をしていると、どうしても腰から下の筋肉が固まってしまう。とどこおりがちな血流を促すには、ときどき立ち上がって、体を少しでも動かすことが大切だ。
しかし、業務によっては席を立つのが難しい場合もある。そんなときには、椅子に座ったまま、下半身の筋肉をリフレッシュ。足先を動かす「パタパタ運動」に加えて、ストレッチで筋肉を伸ばしてあげよう。ふくらはぎの血流改善に効くのが、足首を反らせるストレッチ。
片足を真っすぐに伸ばして、つま先を手前にぐっと曲げる。上体を前に倒して腕を伸ばし、足先をつかんで引き寄せたら、ストレッチ効果はさらにアップする。ああ、気持ちいい、筋肉が伸びている……と感じるところまで刺激しよう。
■デスクワークの合間にこっそり行う腹筋術
デスクワークをしながら、こっそりできる筋トレがある。筋肉をギューッと収縮させ、「効く~」と思いつつ頑張っても、まわりからは絶対に気づかれない。
この秘密の筋トレは「ドローイン」。体の深い部分にあるインナーマッスルのひとつ、腹横筋を鍛えられ、腸のぜん動運動も良くなる運動だ。
背もたれにもたれずに、骨盤を真っすぐに立てるイメージで、背すじを伸ばして座る。その姿勢から、ぐっとおなかをへこませていく。ゆっくり呼吸をしながら、限界までへこませた状態を30秒ほどキープする。立った姿勢でも、仰向けでもできるので、ふと思いついたら試してみよう。
繰り返し行ううちに、へこませた状態が正しいと腹横筋が記憶。力を入れなくてもおなかがへこんだ状態になり、自然と腹回りが引き締まるといううれしいメリットもある。
■「5分の貧乏ゆすり」で血流が改善
下半身の血流を良くするには、ふくらはぎの筋肉を鍛えることが大切だ。でも、筋トレをするのはつらい……などと思う人がいるかもしれない。そんな人は、日常生活のなかでも、ちょっと意識すれば、いいトレーニングになる動作があることを知っておこう。
ふくらはぎやすねの前面の筋肉を鍛えられるのが、靴下を履いたり脱いだりするとき。
もちろん、床に座らないで、片足立ちになって行う。筋肉の強化、血流の改善に加えて、年を取ると失われがちなバランス感覚も養える。ただし、転倒には十分な注意を。
ちょっとでもフラフラするようなら、壁にもたれかかって、体をしっかり支えながら行おう。毎日続けているうちに、筋肉が強化され、バランス感覚も良くなって、片足立ちでできるようになるものだ。
周囲の人にイヤな印象を与えるクセのひとつに、ひざを小刻みに動かす「貧乏ゆすり」がある。しかし、まわりに誰もいないのなら、あえて積極的にやってみることをおすすめする。じつは血管にとって、貧乏ゆすりはとてもいい運動。
国立長寿医療研究センターの研究では、椅子に座って貧乏ゆすりを5分間してもらったところ、ふくらはぎの皮膚の温度が平均で約2℃も上がった。素晴らしい血流改善効果を持っているのだ。貧乏ゆすりを3分行うと、ウォーキングを20分続けるのと同じ程度の健康効果を得られるという説もある。
また、座る時間が長い人は重大な病気になりやすいが、英国の研究によると、貧乏ゆすりをよくしていると死亡リスクが下がった。血管の健康を保つため、周囲に気をつかいつつ、貧乏ゆすりをしてみよう。
■「ずっと座っている人」も筋トレできる
体を適度に動かさないと、年齢を重ねるうちに筋肉は次第に減っていく。とくに足腰の筋肉が衰えると、血流が悪くなって、血管にも支障が出かねない。運動があまり好きではない人は、暮らしのいろいろなシーンのなかで、何かをしながら筋肉に刺激を与えてはどうだろう。
職場や自宅で椅子に座って過ごすことが多いのなら、立ったり座ったりするときにひと頑張りしてみよう。立ち上がるとき、あるいは座ろうとする際に、中腰になって数秒静止。いわば「空気椅子」の姿勢を取ると、太ももの前面やお尻、おなかの筋肉がギュッと収縮し、意外にいいトレーニングになる。
ほかに、椅子からゆっくり立ち上がり、ゆっくり座る。片足を浮かせて、もう片足だけに力を入れて立ち上がる。こういった「ながら筋トレ」もけっこう効くものだ。

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工藤 孝文(くどう・たかふみ)

内科医

工藤内科院長。福岡県みやま市の同医院で地域医療を行う。糖尿病内科、ダイエット外来、漢方医療を専門として、テレビや雑誌などでも活躍。著書に『痩せグセの法則』(枻出版社)ほか多数。

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(内科医 工藤 孝文)
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