■親と実家の変化は「以前との違い」に表れる
お盆に久しぶりに実家へ帰ると、「親は思ったより元気そうだし、まだ大丈夫」と感じる方は多いかもしれません。
もちろん、親御さんが元気でいてくれることは何よりです。ただ、久しぶりに会う子どもに心配をかけまいと、親御さんがいつもより元気に振る舞っていることもあります。帰省に合わせて家の中を片づけたり、身なりを整えたり、食事を用意してくれたりすることもあるでしょう。
その姿を見ると、子どもとしては安心しますし、「まだうちの親は大丈夫」と思いたくなるものです。けれど、元気そうに見える姿だけで、日々の暮らしに困りごとがないと判断するのは少し早いかもしれません。
一方で、久しぶりに帰省するからこそ気づける変化もあります。毎日のように見ていると見過ごしてしまうような小さな変化も、ひさびさに実家を訪れると「あれ、前と少し違うな」と感じることがあるからです。
私自身、実家じまいを経験した当事者として、またWebメディア「実家のこと。」を通じ、さまざまな方にお話をうかがうなかで感じるのは、親や実家の変化が“大きな問題”として表れるとは限らないということです。むしろ、以前と比べたときの“小さな違い”として見えてくることも少なくありません。
こうした違いは、実家のこれからを考えるうえで見逃したくないサインです。ただし、大切なのは「親ができていないこと」を探すことではありません。以前の親御さんや実家の様子と比べて「暮らしに負担が出ていないか」を知ることです。
今回は、お盆帰省で気づきやすい実家の変化を3つご紹介します。
注:事例はプライバシー保護のため一部設定を変えています。
■①使っていない部屋が物置状態になっている
まず見ておきたいのは、使っていない部屋が物置状態になっていないかです。
かつて子ども部屋だった部屋、客間、納戸、和室など、以前は使っていたはずの部屋に、いつの間にかモノが積まれている。季節用品、古い家具、子どもが置いていった荷物、使わなくなった家電などがそのままになっていたり、押し入れに詰め込まれていたりする。親御さん自身も「何がどこにあるのか、もうよくわからない」と話す。
こうした状態は、実家の管理が少しずつ負担になっているサインかもしれません。
関東在住のAさん(50代)は、お盆に実家へ帰省したとき、かつて自分が使っていた部屋がほとんど物置になっていることに気づきました。母親(70代)は「片づけたいとは思っているんだけど、どこから手をつけたらいいかわからなくて……」と話したそうです。
特に実家が2階建てで、2階の部屋をほとんど使わなくなっているなら、階段の上り下りが負担になっている可能性もあります。2階に子ども部屋や納戸がある場合、親御さんだけで片づけるのは難しくなりますし、換気や掃除も行き届きにくくなります。
このとき大切なのは、「なんでこんなにモノをためているの?」と責めないことです。まずは、「この部屋、最近使っている?」「私の荷物も残っているよね。今度持ち帰るね」と、親御さんの負担を聞くところから始めるとよいでしょう。
■②書類やモノがたまり、動線が悪くなっている
次に気をつけたいのが、書類やモノが増え、家の中の動線が悪くなっていないかです。
もともときれい好きで整理整頓が得意だったのに、未開封の郵便物がたまっている。ダイニングテーブルの上に書類が積まれている。廊下や玄関まわりにストックの日用品が置かれている。床にモノが増えて、歩くスペースが狭くなっている。
こうした変化は、単に「片づけが苦手になった」という話ではありません。
郵便物を開封し、必要なものと不要なものを分け、期限を確認し、手続きをする。
Bさん(40代)は、実家に帰ったとき、リビングに書類が積み重なっていることに気づきました。父親(70代)はもともと几帳面で、書類をきちんとファイルに分けて保管する人だったそうです。ところが、役所からの通知や保険会社からの書類、病院関係の封筒が、テーブルのすみに重ねられたままになっていたのです。
「この書類、中身見たの?」と聞くと、父親は「あとで確認しようと思って」と答えました。よく聞くと、どれが大事な書類なのか判断するのが面倒になり、つい後回しにしていたそうです。
このようなときは「ちゃんとしなきゃダメだよ」と言うより、「書類が多くて大変だよね。一緒に確認しようか」と声をかけるほうが話しやすくなります。
モノが増えて動線が悪くなっている場合も同じです。親御さんは立ったり座ったり動くのがつらくて、すぐ手の届く場所にモノを置いているのかもしれません。「ここ、歩きにくくない?」「よく使うモノだけ、取りやすい場所にまとめてみる?」と、困りごとを聞くことから始めてみてはいかがでしょうか。
■③庭や外まわりが手入れされなくなっている
3つ目は、庭や外まわりの変化です。
庭木が伸びている。雑草が増えている。植木鉢が倒れたままになっている。玄関灯が切れている。門扉や手すりがぐらついている。網戸が破れたままになっている。こうした外まわりの変化も、親御さんの体力や、家を維持する力に負担が出ているサインかもしれません。
庭や外まわりの管理は、想像以上に体力を使います。草むしり、庭木の剪定、落ち葉の掃除、地域によっては雪かきもあるでしょう。若いころは当たり前にできていた作業でも、足腰が弱ってくると大きな負担になります。
ここで、50代のCさんが実家で感じた変化を紹介しましょう。
■きれいだった実家の庭に「枯れた木」が
Cさん(50代)は、久しぶりに実家へ帰ったとき、門扉から玄関までのアプローチに雑草が増えていることに気づきました。父親(80代)は庭いじりが好きで、以前はいつもきれいに手入れしていたそうです。ところが、その年は庭木の枝が伸び、玄関先の植木鉢もいくつか枯れたままになっていました。
父親に聞くと、「暑いし、腰も痛いから、最近はあまり庭に出ていない」と話したそうです。Cさんはそのとき初めて、庭の手入れが父親にとって大きな負担になっていることに気づきました。
庭が荒れているからといって、すぐに「もうこの家に親は住めない」と考える必要はありません。庭木を減らす、草むしりを外部に頼む、防草シートを敷くなど、住み続けるための工夫もあります。
ただ、庭や外まわりの管理が長期的に難しくなっている場合は、これから先その家をどう維持していくのかを考えるタイミングかもしれません。親御さんが施設に入ったり、別の住まいに移ったりしたあとも、空き家になった実家の管理は残るからです。
■小さな変化を見過ごすと発生しうる負担
こうした変化は、今すぐ大きなトラブルにつながるとは限りません。だからこそ、「まだ大丈夫」と見過ごしてしまいやすいものです。
ただ、時間が経つほど、片づけや家の管理にかかる負担は大きくなりがちです。
庭や外まわりの管理も同じです。草木の手入れができないまま時間が経つと、近隣への配慮が必要になることもあります。実家が空き家になったあと、外部の見守りサービスや巡回サービスを利用する場合、月1回の簡単な巡回でも月額数千円から1万円前後かかるとされています。
草刈りや庭木の剪定、修繕などを依頼すれば、さらに費用が必要になる場合も。一つひとつは大きな金額でなくても、年に何度も頼むことになれば、年間で数万円から十数万円ほどの負担になることもあります。
だからといって、親御さんに「このままだと大変なことになる」と追い詰める必要はありません。小さな変化は、実家のこれからを考えるための早めのサインとして受け止めておくとよいでしょう。
■「実家じまい」か「住み続ける工夫」か
今回紹介したような変化に気づくと、子ども側は不安になるかもしれません。
「このまま親はこの家で暮らして大丈夫だろうか」
「実家にある大量のモノの片づけは後回しにしていいのだろうか」
「親が亡くなったあと、この家をどうすればいいのだろう」
そう考えると、つい「今のうちに実家じまいを考えたほうがいいんじゃない?」と親に言いたくなることもあるでしょう。
でも、親御さんにとって、実家は長く暮らしてきた大切な場所です。子どもにとっては管理が大変な家に見えても、親御さんにとってはかけがえのない家でもあります。変化に気づいたからといって、必ずしもすぐに実家じまいを考えなければならないわけではありません。
使っていない部屋が物置状態になっているなら、まずは子ども側の荷物を引き取る。
書類やモノが増えて動線が悪くなっているなら、よく使うモノだけを取りやすい場所にまとめる。
庭の手入れが負担になっているなら、庭木を減らしたり、外部サービスを利用したりする。
そうした小さな対応で、親御さんが今の家に住み続けやすくなる場合もあります。
一方で、片づけや庭の管理、生活動線の見直しだけでは負担が減らない場合もあります。「親の体力や判断力が落ちてきている」「子どもが遠方に住んでいて日常的なサポートが難しい」「将来的に空き家になる可能性が高い」といった場合は、住み替えや実家じまいを選択肢のひとつとして考え始めるタイミングかもしれません。
大切なのは、実家じまいを唯一の答えにしないこと。今の家に住み続けるための工夫と、将来的に家をどうするかという話を分けて考えることで、親御さんも子ども側も向き合いやすくなるはずです。
■「実家が前と違う」は話し合いのヒント
久しぶりに会うからこそ、親御さんの「元気そうな姿」に安心するかもしれません。だけど、久しぶりに帰省するからこそ、以前との違いに気づけることもあります。
実家の様子が「前と少し違う」と感じても、それは親御さんを責めるための材料ではありません。親御さんが今の暮らしのなかで何に負担を感じているのか、これからどんなふうに暮らしたいのかを知るためのヒントだととらえましょう。
「まだうちの親は元気だから大丈夫」と思える時期こそ、家族で話し合いを始めやすいタイミングです。お盆の帰省で気づいた小さな変化が、ご家族で実家のこれからを考えるきっかけになればうれしいです。
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大井 あゆみ(おおい・あゆみ)
WEBマガジン『実家のこと。」編集長/エディット合同会社 代表
1980年、大分県生まれ。両親・祖母・弟と5人で暮らす家庭で育つ。大学進学を機に上京し、そのまま東京で就職。会社員を経て、2009年にフリーライターとして独立。2017年に実家じまいし、当時60代だった両親を大分から東京に呼び寄せることに。実家じまいから親の上京に至るまでの経験をもとに、2020年『両親が元気なうちに“実家じまい”はじめました。』(光文社)を出版。「親が元気なうちにこそ、家族で実家やこれからの暮らしを話し合うこと」の大切さを伝えたいという思いから、2024年に「実家のこと。」を立ち上げた。終活アドバイザー、実家片づけアドバイザー®1級取得。
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(WEBマガジン『実家のこと。」編集長/エディット合同会社 代表 大井 あゆみ)

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