ストレスは心だけでなく、血糖値にも大きな影響を及ぼす。イライラやプレッシャーが続くと、知らないうちに血糖値が急上昇し、糖尿病リスクを高めることもあるという。
内科医の工藤孝文さんが監修した『「血糖値にいいこと」、ぜんぶ集めました。』(青春出版社)より、一部を紹介する――。(第2回)
■イライラすると血糖値が急上昇する
ストレスがたまると、胃が痛くなったり、夜眠れなくなったり、気分が落ち込んだりする。血糖値とは関係がなさそうに思えるが、じつはそうではない。
血糖値が高めの人にとって、ストレスは大敵なのだ。強いストレスを受けると、交感神経が刺激されて、コルチゾールやアドレナリン、ノルアドレナリンといったホルモンが分泌される。これらの働きによって、血管が収縮して血圧が上昇し、心拍数がアップする。
とてもイヤなことがあった、ひどくイライラする、焦ってどうしたらいいのかわからない、といったときに心臓がバクバクと拍動するのは、これらのホルモンの働きだ。ストレスに対抗するホルモンが分泌されるのは、緊急事態になったと脳が判断したとき。
はるか昔、人類が天敵と闘いながら暮らしていた時代、いざという際には、こうして心身を一気に戦闘モードに変えなければ生きていけなかった。現代は状況がまるで違うものの、思わぬことに遭遇すると、やはり同じような反応をするわけだ。このような戦闘モードのとき、心臓のドキドキなどと違って自覚できないが、じつは血糖値が急上昇する。

■ストレス→暴飲暴食でさらに悪循環
思い切り活動できるように、肝臓に蓄えられていたグリコーゲンが分解され、大量のブドウ糖が血液中に一気に放出されるからだ。強いストレスを何度も受けたり、ストレスが長引いたりすると、血糖値が高い状態が続く。すい臓の負担も大きくなり、インスリンの効き目が弱まっていく。こうしてダメージが積み重なれば、やがて糖尿病へとつながってしまう。
イヤなストレスが多いと、ヤケ酒やヤケ食いなど、暴飲暴食が多くなるのも良くない。憂さを晴らすためにお酒の量が増えたり、ストレス解消で甘いものを大量に食べたりすると、血糖値をうまくコントロールできなくなる。
ストレスは血糖値を上げる大きな原因だ。しかし、生きていく以上、ストレスから完全に逃れられない。少々のトラブルでイライラしない、怒らない、上手に受け流す、といったことを心がけるのが肝心だ。
ストレスをうまくコントロールしたいなら、ぜひ覚えておいて、肝心のときに実行したいテクニックがある。
■怒りのピークを鎮める「6秒ルール」
「6秒ルール」という対処法だ。相手の言動にイラッとした、カチンときた。
こんなとき、すぐに大声で言い返したりしないで、6秒だけ待つ。怒りのピークはそう長くは続かず、6秒ほどたつと鎮まっていくからだ。
怒りをやり過ごしているうちに、脳のなかでも理性的な判断を下す前頭葉の働きが増して、冷静に対処できるようになる。怒りに任せて反撃すると、事態は一層悪化する恐れが強い。受けるストレスも強くなり、血糖値が跳ね上がったままになるなど、体にいいことは何もない。腹が立っても、たった6秒待つだけで、怒りをコントロールできる可能性がある。次にイラッとしたとき、ぜひ試してほしい。
仕事をしていると、ストレスを感じることが多いものだ。想定外の事態が発生するたびに、肝臓がグリコーゲンを急いで分解し、血液中にブドウ糖がドバっと放たれる。こんな生活を続けていれば、糖尿病になるリスクがどんどん高まっていく。
ドイツのミュンヘンヘルムホルツセンターの調査でも、ストレスと糖尿病は強い関係にあることがわかった。
■プレッシャーで糖尿病リスクが45%上昇
労働者5000人余りを対象に、平均13年間に及ぶ追跡調査。
期間中に糖尿病を発症した人を調べたところ、職場で強いプレッシャーを感じている人は、プレッシャーのない人と比べて、発症するリスクが45%も高かった。
この調査の結果は重いが、働いている以上、仕事のストレスからは逃げられない。では、糖尿病のリスクを下げるのは無理なのだろうか。いや、ストレスがたまりそうになっても、うまく対処して受け流す人はいる。そんな人が身につけているテクニックのひとつが、呼吸の仕方を変えることだ。
じつは、自律神経をコントロールできる唯一の方法が呼吸。血糖値を上昇させるタイプのホルモンは、交感神経が高まることによって大量に分泌される。一方、副交感神経が優位なときには分泌が抑えられる。
この体のメカニズムを利用し、ストレスを感じたとき、副交感神経を高める「腹式呼吸」を試みるといい。副交感神経が多く集まっているのは、胸部と腹部の境目にある横隔膜の付近。普通の浅めの呼吸ではなく、深くたっぷり息を吸い込み、ゆっくり吐く腹式呼吸をすると横隔膜が動く。この刺激によって副交感神経の働きを高め、交感神経よりも優位にすることが可能だ。

通常の呼吸の仕方は、胸をふくらませる「胸式呼吸」だが、自律神経をコントロールできるのは腹式呼吸。なれないうちは、手のひらを下腹部に当てて、おなかがふくらむのを確かめながら行うといい。5秒ほどかけて息を吸って、その倍の時間をかけて吐くと一層効果的だ。
■ベストな睡眠時間は「7時間」
成人病検診で血糖値が高めだった人は、これまで以上に質の良い睡眠を取る必要がある。睡眠不足が続くと、糖尿病を引き寄せることになりかねないからだ。
ソウル大学が13万人以上を対象に行った研究によると、糖尿病やメタボリックシンドロームのリスクが最も低いのは、普段から7~8時間ほどたっぷり寝ている人だった。一方、睡眠が6時間以下の人のリスクは高かった。
睡眠不足になると、交感神経を活発化させるホルモンが多く分泌され、その影響で血糖値が高くなりやすい。加えて、やはりホルモンの影響で食欲が増進される。とくに糖質を食べたくなる傾向が強く、この点からも血糖値が上昇してしまう。
年齢や体質によって、適した睡眠時間は若干異なるが、一般的にいえば、7時間眠るのを目指すといいだろう。

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工藤 孝文(くどう・たかふみ)

内科医

工藤内科院長。
福岡県みやま市の同医院で地域医療を行う。糖尿病内科、ダイエット外来、漢方医療を専門として、テレビや雑誌などでも活躍。著書に『痩せグセの法則』(枻出版社)ほか多数。

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(内科医 工藤 孝文)
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