金利のある時代には、どのようにして資産を守ればいいのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「今の定期預金は一考の価値がある選択肢だ。
加えて、個人向け国債も注目を集めている」という――。
※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーを考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。
■「金利のある時代」がやってきた
今年6月、日銀が約30年ぶりに政策金利を1%に引き上げました。さらなる利上げも予想される中、金利上昇局面における“お金の守り方”を考えていきたいと思います。
講演などで各地に伺うと、お金への“感度”の差を感じます。こまめに経済ニュースをチェックして資産運用について勉強している方がいる一方、いまだに普通預金の金利が0.001%時代の感覚のままで、「預金なんかどこに預けても一緒でしょ」という方が少なくありません。まずはファクトを見つめ、私たちの中に根付いてしまった“ゼロ金利時代”から脱却すべく、意識をアップデートしていきましょう。
高市政権は7月下旬に、2026年の「骨太の方針」をまとめました。そこには、「『強い経済』の実現に向けては、『安定的な物価上昇』の実現に資する適切な金融政策運営が行われることが非常に重要である」と書かれています。実際、消費者物価指数(2020年=100、生鮮食品を除く総合)は、2022年以降、前値比2~3%台で上昇しています。

これはつまり、今持っているお金が物価上昇と同率で増えなければ、同じ1万円でも購入できるものの量は少なくなり、お金の価値が下がってしまうことを意味します。たとえば年3%ずつ物価が上昇した場合、金利0.4%の普通預金に預けていた1000万円は、30年後には450万円ほどの価値になってしまうことを意味します。恐ろしいですよね。
■金利上昇局面の「定期預金」
そうした物価上昇と金利上昇局面で少しでもお金の価値を減らさないための手段の一つが、「定期預金」です。NISAやiDeCoなどでお金を育てている方もいるかと思いますが、投資に不安を感じる方や、別の安全資産を考えたい方にとって、実は“今の定期預金”は一考の価値がある選択肢なのです。
金利のない時代から社会人をしている世代の方は、「いまさら定期預金?」と思われるかもしれません。たしかに、2024年頃まで定期預金の金利は0.005%前後と、非常に低い水準で推移していました。しかし2026年現在、利用の諸条件はありますが、ネット銀行では1.4%前後の金利がつく1年ものの定期預金が出てきています。
2026年8月現在、大手3行の普通預金の金利は0.4%です。これと仮に1.4%前後の金利がついた定期預金を比較すると、1000万円を1年間預けた場合、普通預金なら1004万円、定期預金なら1014万円になることになります。「預金なんかどこに預けても一緒」とは言えない差になってくるのがおわかりいただけるかと思います。ちなみに、実際には利息から税金が引かれた金額が手取りとなるので、ご注意ください。

■「セット定期」には要注意
長らく定期預金から遠ざかっていた方も多いと思いますので、メリットとデメリットをおさらいしておきましょう。定期預金は、基本的には満期になるまで引き出すことも、追加でお金を入れることもできません。そのため、数年使う予定がないまとまった預金があり、普通預金よりも高い金利で元本保障される商品を探している方に向いています。
満期前に解約する場合は、契約時より金利は低くなります。それでも、元本保障は変わりません。また、金利上昇局面である今は、1年ものといった短期で金利のいい定期預金へ預け替えをしていくと、よりお金が育ちやすいでしょう。
元本割れのない定期預金は非常に安定した商品ですが、落とし穴として気をつけたいのが、ボーナスの時期などによく出てくる「セット定期」商品です。セット定期とは、定期預金と投資信託や外貨預金などがセットになった商品で、通常より定期預金の金利が高く設定されているのが特徴です。
このセット定期の場合、金利が3%などになっていて、定期預金単体の商品に比べて金利が高く設定されていますが、よくよく説明を見ると、「最初の3カ月間だけ3%」といった期間限定になっているケースが多いというのが、落とし穴ポイントです。この場合、トータルで見るとお得感はほとんどないので、注意してください。
■注目が集まる「個人向け国債」
そして、定期預金よりも今さらに注目を集めているのが、「個人向け国債」です。2026年度の個人向け国債は4~8月の5カ月で約4兆円と、過去最高ペースで発行額が伸びています。
好調の要因は、利回りの上昇です。2026年8月発行分(7月募集分)の金利は、「固定3年」が1.56%、「固定5年」が1.95%、「変動10年」が1.80%でした。
個人向け国債には「固定3年」「固定5年」「変動10年」と3つの商品があり、「固定3年」と「固定5年」は満期まで同じ金利が続きます。「変動10年」は市場金利に合わせて半年ごとに金利が変わるタイプで、どのタイプも最低金利の年率0.05%が保証されています。
また、個人向け国債には安定的に資産形成しやすいポイントが複数あるのも、人気の理由でしょう。「国債」は国が発行する債券のため、日本が破綻しない限り元本割れしないという、安定した商品です。さらに1万円から購入できるため、資産運用に慣れていない方でもはじめやすい傾向があります。そして、購入から1年経てばいつでも中途換金できるため、ローリスクで手軽にはじめることができるのです。ちなみに、中途換金した場合は直近2回の金利が差し引かれますが、元本割れはしません。
■半年ごとに利子が受け取れる
利子は半年ごとに受け取れるため、ちょっとしたお小遣い感覚で使うこともできるでしょう。たとえば100万円分の個人向け国債を買った場合、半年ごとに1万円くらいが利子で入ってくるイメージです。そして元本は、満期に戻ってくる仕組みとなっています。

市場の金利が上がれば個人向け国債の利回りも連動して上がっていくため、金利上昇局面では、半年ごとに金利が見直しされる「変動10年」が金利上昇の恩恵を受けやすいと考えられます。金利が下がってきた場合には、中途換金ができる1年後以降であれば元本割れもないため、別の商品に切り替えてもいいからです。個人向け国債は銀行や証券会社、郵便局などの金融機関のほか、ネット銀行や証券会社でも購入できるので、気になる方はチェックしてみてください。
■「増やす視点」と「返す視点」
いいことづくめに見える個人向け国債ですが、「国債」は「国の借金」であるという点はひとつ、心に留めておきたいポイントです。個人単位で見れば嬉しい利子も、政府にとっては利払い費が増えていることにもなります。
いずれにしても、2026年現在は物価・金利上昇局面であることには違いありません。この事実を前にしたとき、すべてのお金を金利の低い普通預金だけで管理しておくことは、むしろリスクが高いといえるでしょう。
また、お金を増やすという点で金利上昇は嬉しいことですが、各種ローンを抱えている方にとっては、金利の上昇が家計を圧迫します。つまり今は、「増やす視点」と「返す視点」の両面から金利の上昇に対応する必要があるのです。
収入がなかなか上がらない今、お金の価値を目減りさせないためにも、「ただ預けているだけ」になっているお金がないか、今一度見直してみてください。

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高山 一恵(たかやま・かずえ)

Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士

慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。
10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年前後のお金の強化書』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)
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