質の高い仕事をするにはどうすればいいか。心理学者の内藤誼人さんは「性格が完ぺき主義の人は、いつでも100点を目指すが、そんなに無謀な目標を立てていたら、人は行動できない。
仕事は大雑把でいい加減なくらいが結果的にうまくいくことを証明する研究がある」という――。
※本稿は、内藤誼人『「すぐやる人」に変わる心理学』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■大量の創作が「名曲」をつくる理由
物事を先延ばしにする人には、「完ぺき主義すぎる」という特徴があります。
物事をいいかげんにやることができないのです。
私のように性格がちゃらんぽらんな人間は、何事に対しても「まぁ、適当なところでいいか」と考えます。100点満点のうち、70点もとれれば十分に合格点だと考えます。
ちなみに私は原稿の推敲もしません。誤字脱字があろうが、意味の通らない箇所があろうが、気にしません。完ぺきに100点の作品を書こうなどとはまったく考えていないので、かなりのスピードで文章を書くことができるのです。
ところが完ぺき主義の人は、こういう態度をとることができません。98点でも満足しないでしょう。「100点以外は0点と同じ」と考えるのです。

これでは仕事もはかどるわけがありませんし、同じ場所でずっと足踏みしつづけることになりがちです。
もっといいかげんでいいのです。仕事というものは、「質」より「量」で勝負したほうが結果的にうまくいく、ということを示す研究もあります。
モーツァルトは35歳で死去するまでに約600曲、ベートーベンは生涯で約650曲、バッハはなんと1000曲以上も作っています。では、それらすべての曲がどれもこれも素晴らしい作品なのかというと、そんなこともありませんよね。
高く評価されているのはそのうちのいくつかにすぎません。
■大雑把でいいかげんなくらいがちょうどいい
ニューヨーク市立大学のアーロン・コズベルトは、65名の著名な作曲家の15657曲を分析しています。
その結果、5年ごとに見ると、もっともたくさん曲を書いているときに名曲も生まれやすいことがわかったのです。
とにかく大量に創作すること。
すると、クオリティの高い名曲も生まれるのです。
最初からクオリティについて考えてはいけません。そんなことを考えていると、行動できなくなってしまいますから。
たくさんの仕事をしているうちに、偶然に良い仕事ができることを期待しましょう。
性格が完ぺき主義の人は、いつでも100点を目指すわけですが、そんなに無謀な目標を立てていたら、人は行動できません。
大雑把でいいかげんなくらいがちょうどいいことを覚えておきましょう。
■歴代オリンピックの予算オーバー確率は100%
計画やスケジュールは、立てないほうがいいですよ。
何時間もかけて完ぺきな予定を立てても、どうせ「想定外」のことがどんどん起きて、最初の計画通りに進まないに決まっているからです。せっかく計画を立てても、その通りに行くことのほうが珍しいのですし、いちいちそのたびに変更・修正していたら面倒くさくてたまりません。
見切り発車でかまいません。
とりあえず「今すぐ」に行動を起こしましょう。「立派な計画ができるまでじっくりと案を練り、それまでスタートしない」という態度では、いつまで経っても行動することができません。
オックスフォード大学のベント・フリウビヤは、公表されたデータが入手可能な1960年以降の夏季・冬季オリンピック大会の予算オーバーを分析してみました。
読者のみなさんは、予算オーバーが全体のうちのどれくらいの割合だと思いますか。
答えをいうと、100%。

つまり、「すべての」オリンピックが予算オーバーでした。しかも、ほんのちょっぴりのオーバーではありません。予算オーバーの平均値は172%。2倍にはいきませんが、相当の予算オーバーです。
ちなみに、予算オーバーのトップは1976年のモントリオール・オリンピックで、その超過率は約720%でした。
2025年の大阪・関西万博も最初の予算は約809億円でしたが、万博に直接に関係する費用である、会場建設費、運営費、基盤整備費などを合わせると、費用総額は約7600億円にも達するそうです。
■専門家でさえ予想は外れる
だいたい人間というのは、自分に都合よく物事を考えるクセがあります。ですので、計画や予定を立てても、どうせ思うようにはいかないのです。計画を立てるだけムダ、ということです。
オリンピックや万博では、それなりの専門家が予算の見積もりを立てるのでしょうけれども、専門家でさえその予想はたいてい外れます。
ましてや、私たちのような素人が計画を立てたところで、変更につぐ変更、修正につぐ修正が起きるに決まっているのですから、最初から計画など立てないほうがいいのです。
「とりあえず自分ができそうなところから始めてみるか……」と気軽にスタートしましょう。
ものすごく大雑把な計画くらいは立ててもかまいませんが、完ぺきな計画を立てようとしてはいけません。
仕事というものは、気軽にやるからこそフットワークよく行動することができるので、あまり重苦しく考えないほうがいいでしょう。考えれば考えるほど、動きが遅くなってしまうので要注意です。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)

心理学者

慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。

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(心理学者 内藤 誼人)
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