欧州における日本人サッカー選手の歴史に、また一つ新たな歴史のページが書き足された。ヨーロッパでの「5大リーグ」の一つであるドイツ・ブンデスリーガ開幕戦で、鈴木唯人がハットトリックを達成したのだ。
今回は鈴木唯人も含めて「5大リーグのクラブでハットトリックを決めた日本人選手たち」をご紹介する。
鈴木唯人(フライブルク)
(C)Getty Images
日時:2026年8月30日
試合:ブンデスリーガ フライブルク 4-1 ブレーメン
2026年、新たにこのリストへ名前を刻んだのが鈴木唯人だ。フライブルクでブンデスリーガ2年目を迎えた彼は、2026-27シーズン開幕戦となったブレーメン戦でトップ下として先発。そして、新シーズン最初の90分で歴史的なパフォーマンスを披露した。
最初のゴールは29分。右CKからヘディングで先制点を叩き込む。さらにフライブルクは前半終了間際にイゴール・マタノヴィッチが追加点を奪い、2-0で折り返した。
そして後半開始からわずか3分、今度は左サイドから折り返されたボールに鈴木が反応。左足で巧みに合わせてチームの3点目を奪った。
続いて55分、自身が起点となったショートカウンターから前線へ走り込むと、マタノヴィッチが横へ送ったパスを再びゴールに沈める。後半開始からわずか10分で2点を追加し、ハットトリックを完成させた。
80分に交代する際にはスタンドから大きな拍手が送られた。日本人による欧州5大リーグのハットトリック史に、11年ぶりとなる新しい名前が加わった瞬間だった。
高原直泰(アイントラハト・フランクフルト)
日時:2006年12月3日
試合:ブンデスリーガ アレマニア・アーヘン 2-3 フランクフルト
欧州5大リーグで日本人選手が初めてハットトリックを達成したのは、高原直泰だった。
2002年のJリーグで26ゴールを叩き出して得点王とMVPを獲得し、翌年からドイツへ渡った高原。しかし、最初に所属したハンブルガーSVでは思うように出場機会を得られず、2006年夏にフランクフルトへ移籍した。
その新天地で迎えた12月3日のアレマニア・アーヘン戦。高原は開始14分に素早い攻撃から先制点を奪う。32分に同点とされたものの、前半終了直前の43分に再びネットを揺らし、2-1としてハーフタイムへ。さらに62分には最終ラインの背後へ抜け出し、GKとの1対1を冷静に仕留めた。
チームはその後1点を返されたが3-2で逃げ切り、高原の3得点がそのまま勝利をもたらした。当時のフンケル監督は試合後、「なぜ彼を獲得したのか、これで誰にでも分かった」と喜んだ。
このハットトリックを含め、高原は2006-07シーズンのブンデスリーガで30試合11得点を決め、ヨーロッパで「スシボンバー」の実力を知らしめた。
香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)
日時:2013年3月2日
試合:プレミアリーグ マンチェスター・ユナイテッド 4-0 ノリッジ
日本人選手のハットトリック史でも特別なものだろう。ドルトムントでユルゲン・クロップ監督のもとブンデスリーガ連覇に貢献した香川真司は、2012年夏にマンチェスター・ユナイテッドへ移籍した。
アレックス・ファーガソン監督が率いる世界屈指の名門に加入したものの、初年度は負傷もあり、ノリッジ戦を迎えるまでプレミアリーグでの得点はわずか2つだった。
しかしこの試合、0-0で迎えた前半アディショナルタイムにロビン・ファン・ペルシーからのボールをゴール前で押し込んで先制点を奪取。
そして87分、再びルーニーのパスから抜け出すと、飛び出したGKの動きを見極めて柔らかなシュート。これでハットトリックを完成させた。最後はルーニーも強烈なミドルを決め、ユナイテッドが4-0で圧勝した。
この3得点によって香川は、プレミアリーグ史上初めてハットトリックを達成したアジア人選手となった。
武藤嘉紀(マインツ)
日時:2015年10月31日
試合:ブンデスリーガ アウクスブルク 3-3 マインツ
高原直泰からおよそ9年。ブンデスリーガで日本人2人目となるハットトリックを成し遂げたのが、当時マインツに所属していた武藤嘉紀だ。
FC東京から2015年夏にドイツへ渡った武藤は、すぐにマインツの前線へ定着する。加入直後から持ち前のスピードとゴールへの推進力を発揮しており、アウクスブルク戦の前節でもブレーメンから得点を奪っていた。
そして第11節のアウクスブルク戦。前半18分に先制点を奪うと、30分にも追加点をゲット。アウェイに乗り込んだマインツは武藤の2発で早々に2-0とリードした。
ただ、試合はここから大きく動く。
敗色濃厚となった後半アディショナルタイム。最後の攻撃で味方が頭でつないだボールに反応したのが武藤だった。ゴール中央から右足で押し込み、土壇場の3-3。ハットトリック完成と同時に、チームへ勝点1をもたらす劇的な一撃となった。
番外編:鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)
日時:2020年2月20日
試合;UEFAヨーロッパリーグ フランクフルト 4-1 レッドブル・ザルツブルク
リーグ戦ではないものの、5大リーグの選手としてのハットトリックとして外せないのが鎌田大地だ。
2019-20シーズンのUEFAヨーロッパリーグ決勝トーナメント1回戦。フランクフルトがホームに迎えたのは、チャンピオンズリーグでリヴァプールやナポリを相手に16得点を奪い、世界的な注目を集めていたレッドブル・ザルツブルクだった。
鎌田は12分、相手最終ラインの背後へ抜け出して先制。43分にはゴール前へ侵入して2点目を奪い、さらに後半開始直後の53分にもネットを揺らしてハットトリックを達成した。フランクフルトはその後フィリップ・コスティッチが4点目を加え、4-1で大勝。鎌田だけで試合の大勢を決めてしまった。
そしてフランクフルトは2年後の2021-22シーズンにヨーロッパリーグを制覇する。その中心選手となる鎌田にとって、ザルツブルク戦の3ゴールは「欧州の鎌田」の原点ともいえる試合だった。
番外編:稲本潤一(フラム)
日時:2002年8月27日
試合:UEFAインタートトカップ フラム 3-1 ボローニャ
高原がブンデスリーガで歴史を作るより4年前。欧州クラブで日本人選手が演じたハットトリックとして、忘れてはいけない試合がある。
2002年日韓ワールドカップでベルギー、ロシアからゴールを奪い、日本代表初の決勝トーナメント進出の立役者となった稲本潤一。その大会後、アーセナルからフラムへローン移籍した。
新天地で最初の先発出場となったのが、UEFAインタートトカップのボローニャ戦だった。敵地での第1戦では稲本とレグヴァンスキのゴールで2-2で引き分けに持ち込み、迎えたロンドンでの第2戦。12分に稲本はワンツーから先制ゴールを奪う。34分には自身の守備からボローニャに同点を許してしまったものの、後半開始から一気に取り返した。
47分、浮き球に反応して豪快なボレーシュートを突き刺し2-1。さらにそのわずか3分後にはクロスに飛び込み、さらにこぼれ球を押し込んで3点目。
稲本の欧州キャリアを象徴する試合であり、日本人選手が欧州の舞台で残した最初期の強烈なインパクトとして、今も語り継ぐ価値のある3ゴールだ。
※選出基準は、各選手の実績に基づきながら筆者またはメディアの主観的判断も含んでおります。
筆者:石井彰(編集部)
画像提供:Getty Images

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