ビール類の酒税率一本化まで2か月を切った。カテゴリー間の税率変動にともない、市場構造には大きな変化が予想される。
とりわけカギを握るのが、主要発泡酒ブランドの「ビール化」がもたらす影響だ。再編含みの市場で、各社の戦略の違いも見え隠れする。
今年で完了する一連の酒税改正で、6年前まで1缶あたり49円あった税額差がゼロになる。前回23年10月の酒税改正では、新ジャンルの酒税率が引き上げられ発泡酒に統合された。今年10月1日の酒税改正ではこれをさらに引き上げるとともに、狭義ビールの酒税は引き下げ、350㎖あたり54.25円に統一する。
現在、スーパー店頭で本体価格160円の発泡酒なら160円台後半に、200円のビールは190円程度になるイメージだ。
過去2回の改正時と同様「値段に大差ないならビールを」と考える消費者は増えるとみられる。酒税一本化が世間の注目を集めるとともに、各社が主力発泡酒ブランドの「ビール化」を進める背景である。
10月以降、新ジャンル含む発泡酒市場のうち約5割の規模でビールへの転換が図られる。ビール類市場全体の約2割を占める。
これは単なる「発泡酒②」から「ビール」への品目変更や店頭価格の変動にとどまらず、バブル崩壊後の発泡酒ブーム以来30年以上続いたビール類市場の競争構造変化を意味する。
サントリーの調べでは、23年の酒税改正時には「新ジャンル→ビール」の需要シフトが一定数あった一方、ビール離れや酒離れによる需要減少もビール類全体の約4%に達した見込み。
メーカー間で異なる事情
各社のマーケティングに力がこもる
そうしたなかでも、影響は各社間で一様ではない。巨大ブランド「スーパードライ」で圧倒するアサヒビール、「黒ラベル」「ヱビス」の二枚看板へ集中を強めるサッポロビールにとっては、強みの狭義ビールへの需要シフトは追い風だ。
一方、新ジャンルで高いシェアを持つサントリー、キリンビールの2社にとっては話が違ってくる。
サントリーでは、新ジャンル市場で約35%と高シェアを占める「金麦」をビールとして刷新。中味品質を高めながら手に取りやすい価格帯の「デイリービール市場」を創造し、市場縮小に歯止めをかけたい考えだ。
またキリンビール「本麒麟」も、18年の発売時から酒税一本化後に想定していたというビール化に踏み切る。毎年リニューアルを重ねること9回。満を持して踏み切るビール化で「価格を超えたうまさ」を抜本的に進化させる。
「クリアアサヒ」(アサヒビール)、「麦とホップ」「GOLD STAR」(サッポロビール)もビール化を行うものの、両社ともビールマーケティングの主軸はあくまでもスタンダード以上の価格帯。
アサヒの松山一雄社長は「狭義ビールに集中してきた基本的な流れを変えるつもりはない」と強調する(2月の会見で)。サッポロもエコノミー系については「非注力分野」と明言している。
「ビールの時代」再び
これまで狭義ビールでは低シェアに甘んじてきたサントリーが、新ジャンル首位「金麦」のビール化によって流れを変えることができるのか。追われるサッポロも、ビール売上数量を30年までに25年比120%とする目標を来年度からの中計で掲げる。
「酒税改正でビール類の構成比が変わることを考えれば、決して届かない目標とは思わない。従来やってきたことを後押しするチャンスだ」(8月7日の会見でサッポロ時松浩社長)。
発泡酒や新ジャンルの台頭で塗り替えられてきた市場の歴史がいま、再びビール中心の時代を迎えようとしている。各カテゴリーの枠内での競争から解き放たれ、ブランド間の競争という新たなステージに入る。近年の市場縮小傾向を脱し、再成長軌道に載せることができるのか。10月の酒税改正はその試金石となりそうだ。
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