俳優・佐藤B作(77)が、半世紀余り座長を勤めた劇団「東京ヴォードヴィルショー」の解散を5月に突然発表して約3か月。B作は休むことなく新たな道を歩み始めていた。

このほどスポーツ報知の取材に応じ、現在の心境とともに、劇団に終止符を打つに至った背景や理由を初めて語った。そして劇団とも交流の深い三谷幸喜氏から贈られた“あるもの”について明かした。

 B作は新たな活動を始めていた。9月3日開幕の劇団NLT公演「家族…リハーサル」(鵜山仁演出、東京・中野ザ・ポケット)に主演するため、けいこの真っ最中だった。俳優が俳優を演じ“家族”を演じる。おかしみの中に人生の機微が描かれる現代フランス喜劇だという。

 「死期の迫った男が不仲な家族と交流したいためにいろいろやろうとするんだけど、勝手な男ですよ。役に共感できなければ、理解しにくい役です。でもね…ずっと劇団のことばかり考えてきたから。これもできるわけでね」。しみじみと語る口調に、53年間、劇団を背負ってきた重責の大きさがにじむ。

 劇団「東京ヴォードヴィルショー」の解散は5月10日、劇団HPで突然発表された。

実は昨冬の時点で意思はかなり固まっていた。「誰に相談するとかは一切なく。劇団の総会で『閉めようと思う』と伝えて。観客の伸び悩み。自分たちの求めるものと必要とされているもののズレを感じるようになって。上演を続けるために国からもお金を借りてましたのでね」

 73年3月旗揚げ。「エログロナンセンス笑いのパンチが乱れ飛ぶ!」のスローガンのように、誰もが気軽に楽しめる軽演劇(ヴォードヴィル)を劇団名にした。半世紀以上もメジャーで続く劇団はほとんどない。

 幼少期のB作は神童と呼ばれるほど勉強ができた。「早稲田の商学部に入ったのも商社マンになるためでした」。揺るがないはずの志を一変させたのが演劇だった。「お客さんの笑い声が好きで」。

笑いのその奥にあるもの、を追い求め続けた。「解散公演を、の声もありましたが、一度やめる気持ちになると無理ですよ」。未練がないのは、常に全力を注いできた証しでもある。

 劇団と交流の深い伊東四朗(89)、三谷幸喜氏(65)にも伝えたのは発表時。劇団員の妻、あめくみちこも夫の考えを理解した。そんな中、三谷氏の言葉がうれしかった。「劇団は解散しても頼まれた戯曲は書き上げますよ、と言ってくれてね」。菊池寛の短編小説を一人芝居にするという。「ありがたいです。でもそれを実際にやるかどうかは、出来上がった脚本をよく読んで。十分考えて決めるつもりですけどね」。いたずらっぽい笑みには、すがすがしさがあった。

(内野 小百美)

 ◆佐藤 B作(さとう・びーさく)本名・佐藤俊夫。1949年2月13日、福島県生まれ。77歳。早大商学部中退。学生時代から演劇にのめり込み、1973年劇団旗揚げ。芸名は元首相の佐藤栄作を“A作”と見立てB作に。80年代に劇団員らと萩本欽一の番組「週刊金曜日」(TBS系)に出演し、全国区に。映像でも活躍し、名バイプレーヤーで知られる。2008年胃がん手術を公表。妻は女優・あめくみちこ。息子の佐藤銀平も俳優。

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