馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はビリーヴが勝った2002年のセントウルSを取り上げる。

まだ、地方所属だった名手・岩田康誠騎手のJRA重賞初勝利をもたらしたのは、“信じる”という意味の名前の馬だった。

 馬の力を信じることで他の11頭を圧倒した。直線で一気に抜け出すと、ビリーヴは後続を突き放すだけだった。セントウルS史上最大の4馬身差をつけるワンサイドの勝利。従来のレコードを0秒5更新する1分7秒1の高速決着で、偉大なる父サンデーサイレンスの産駒ではJRAの古馬混合の重賞(2歳、3歳限定戦は除く)で初めての勝利を挙げた。

 包まれるのを嫌がるSS牝馬に難題の最内枠。しかも前半は33秒1のハイペースだ。園田で2000勝を挙げる岩田康は、ターフ上で混乱していた。「4コーナーまでは“どないしよう、どないしよう”と思ってばかりだったんです。でも、この馬は一瞬の切れがすごいですからね。本当に馬の力で勝たせてもらいました」。JRA重賞6度目の挑戦での初勝利。

28歳の名手は興奮を隠せない。これで今年18勝目となり、地方騎手にとって、JRA移籍への目標となる年間20勝まで「あと2」に迫った。

 サンデーサイレンスが天国に旅立って、20日が過ぎた。希代の名種牡馬の死後、産駒は初めての重賞V。「サンデーがあんな結果になったのは残念だが、この馬に関しては精神的な成長があったのが大きい。オーナーに頼んで買ってもらった馬で出世して、本当にうれしいね」と松元茂調教師は笑みを浮かべる。

 夏の小倉の準オープン戦を連勝した勢いで、一気にG3戦を制覇。次戦に予定するスプリンターズS(新潟)当日には特指競走がないために、岩田康は騎乗できない。「乗り難しいところのある馬。何とかチャンスをモノにしたいし、それなりのジョッキーに乗ってもらいたい。豊が乗ってくれたらいいけどね」とトレーナーが言えば、岩田康も「豊さんに乗ってもらいたい」と声をそろえる。秋のG1第1弾で主役の1頭となったSS産駒のビリーヴ。

すでにG1での騎乗の打診を受けている武豊の答えは、きっと「イエス」に違いない。

 陣営の願いがかない、武豊との初コンビで臨んだスプリンターズSを見事に勝利。短距離界の頂点に立つと、翌年は高松宮記念も勝ち、JRA移籍直後だった安藤勝にG1初タイトルをプレゼントした。

 岩田康はその2年後に地方所属のまま、菊花賞(デルタブルース)でG1も勝利。2006年に中央移籍後はリーディングの上位争いを続け、今も一線級で存在感を示している。

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