シンガー・ソングライターのあいみょん(31)が、11月にメジャーデビュー10周年を迎える。「マリーゴールド」「君はロックを聴かない」などヒット曲を次々生み出し、平成から令和における音楽界を席巻してきた。

9日には、初のベストアルバム「AIMYON BEST ALBUM―唇を追え!―」も発売予定。これまでのキャリアを振り返りながら、楽曲に対する“自信”や今後の目標などについて語った。(松下 大樹)

 日本を代表するアーティストの一人とは思えないほど、気取ることなく庶民的な空気をまとう。「自分が芸能人って言われることに慣れないです。逆に、どうやって慣れるんやろ?(笑)。紅白とかでも、何回もお会いしている方に『わー、芸能人や…』ってびっくりしちゃいますね」。笑い声を含んだゆったりとした話しぶりは、多くの人を魅了してきた数々の楽曲と同じ穏やかさがあった。

 飾り気のない姿は、音楽を好きであり続けるための取り組みが一因かもしれない。「ファンの気持ちを理解したいという意味でも、推し活をしています。私もスピッツさん、平井堅さんが大好き。だから、ライブにめっちゃ行きます。そうすることで音楽が嫌いにならずにいられる」。

曲が売れても、有名になっても、目線はずっと変わっていない。

 メジャーデビューから丸10年という節目。「体感的にはまだ5年くらいの気持ち。『めっちゃお祝いしてもらえるな(笑)』みたいな、実感が湧いてない感じはあります」と、どこか人ごとのように捉えている。

 実は、大事な門出をよく覚えていない。「上京=デビューってことだったんですかね?」と周囲のスタッフに確認するほど。「気づけば11月30日にデビューっていう感じで、『メジャーデビューするぞ』って言われた記憶があんまりなくて…」と振り返った。

 音楽関係の仕事に携わっていた家族の影響で、14歳の時から曲を作るようになった。友人のYouTubeに歌唱姿を投稿したところ、現在の所属事務所がSNSを通じてスカウト。大阪・梅田などで路上ライブを重ねた後、2016年に地元の兵庫から東京へ向かった。

 上京時は新幹線のチケットを買うお金すらなく、叔父が運転するトラックで移動した。「そんな状況でどうやって東京で生活していくんかなって。

『(物価が)高すぎる、やばい!』って生活への不安が大きすぎました。バイトしなきゃとか、お金稼がなきゃっていうところに必死すぎた記憶があります」

 一方で、当時から自分が作り出す楽曲には「今もですけど、自信はずっとありました」と真剣な目で話す。ブレイクするまでは「今世に自分の曲は合ってないのかな」と揺らぎかけた時もあったが、デビュー翌年の17年にリリースした「君はロックを聴かない」で徐々に名が広まり始め、18年に「マリーゴールド」が瞬く間に大ヒット。同年末には初の紅白出場もつかみ、決して過信ではなかった。

 

 「『マリーゴールド』がたくさん聴かれた時は、本当にガッツポーズ。そうなるって信じてましたし、この曲ができた時に『きっと、たくさん聴いてもらえる』と思ってたので、すごく嬉しかったです」

 楽曲制作は、まさに天職。デビュー時から現在まで「作るのが楽しいから作るという感じ」とマイナスな感情を抱いたことはない。「気づいたらギターを持って作ろうとしてますし、もがいて苦しんで生み出す曲はない。10年間でスランプは一度もないです」

 そのため、「曲は一生作るんじゃないですかね」と未来を見据える。「歌える限りはもちろん自分でも歌いたいですけど、提供も好きなので『歌ってくれる人、募集!』ってなっていきそうな気もします。やっぱり、曲作りが好きなので」

 

 9日には「AIMYON BEST ALBUM―唇を追え!―」を発売予定。キャリアを彩ってきた全42曲(通常盤)が収録された初のベストアルバムに「この10年って日本の歴史の中でもいろいろあったと思いません? その10年の中で『みんなが聴いてきた音楽の中に私はいたのかな?』って思っていて、少しでも皆さんの10年に影響を与えられていたらいいなと。

このCDとご自身の10年を一緒に振り返ってもらえたらなって思っています」と願いを込めた。

 まだまだ続くアーティスト人生。「正直に言うと『現状維持が一番幸せ』って思ってしまうくらい、あまり多くを望んでない。でも、大谷翔平さんとかが『現状維持は退化』って言うじゃないですか。厳しすぎません?」と苦笑いを浮かべる。

 だから、あえて目標を掲げてみる。「うーん、何やろ?」。しばらく考え込んだ後、キリッと引き締まった顔で打ち出した。

 「ヒット曲をあと3曲出したいです」

 心の奥にある本音が少しずつ漏れ出る。「あいみょんと言えば『マリーゴールド』、あいみょんと言えば『君はロックを聴かない』とか、そうなれる曲がもう少し欲しい。『もっと有名になりたい』とか、そういうことは全くなくて、自分のことをまだ信じてるってだけです」。胸にあるのは、確固たる“自信”。

自らの可能性に期待をかけながら、音を紡ぎ続けていく。

 ◆あいみょん 1995年3月6日、兵庫・西宮市生まれ。31歳。2016年11月、「生きていたんだよな」でメジャーデビュー。18年、NHK紅白歌合戦に初出場。以降、計7回出場。「愛の花」はNHK連続テレビ小説「らんまん」の主題歌に起用。22、26年に地元・西宮市の阪神甲子園球場でワンマンライブを開催。11月30日から2日間かけて日本武道館公演を開催予定。

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