本紙は8月4日、コモディティチームとして、イリノイ州の大豆農場を視察した。「サステナビリティと農学」をテーマにしたパネルディスカッションで、イリノイ州は全米最大の大豆生産州となり、高品質できれいな大豆を生産していることが強調された。
同州では農場保全のために、耕起を減らす、養分管理の最大限効率化、カバークロップ利用の3点が主に行われている。必要な場所への播種や適切な場所に養分を投入する精密農業も進歩しているといい、カバークロップも精密な方法で導入できるとした。農機の投入を記録できる技術もあり、透明性の維持だけでなく、収量改善や土壌の健全性の改善にも役立つとしている。米国大豆がサステナブルな方法で生産されていることを証明するSSAP(アメリカ大豆サステナビリティ認証プロトコル)については、他国産と比べてカーボンフットプリント(CFP)が低いことなどを含め、第三者データや文書で証明し、サプライチェーンに全体に伝えられる利点が改めて強調された。
【USSEC主催・米国視察〈4〉】イリノイ州は全米最大の大豆生産州、品質さらに向上
農場主ライアン氏
農場主ライアン氏
農場主のライアン・フリーダース氏はあいさつで、「イリノイ州ウォーターマンで7代続く農家だ。このような会合を開き、皆さんを農場へ招待する理由はシンプルで、子どもたちに8代目として農業を継いでほしいからだ。そのためには、皆さんに私たちの農産物を買ってもらうことが必要だ」と話した。同地域について、「私たちは本当に美しい場所で農業を営んでいる。この地域の農地は1831年頃に開拓されて以来200年近く、一度も途切れることなく農業が続いている。しかも現在は、当時よりも良い作物を生産している。使用する肥料は以前より少なく、品質はさらに向上している。本日のツアーでは、農業がどのように変化してきたか見てもらい、農家が今まで以上に良い農業を行っていることも知ってもらいたい」と呼びかけた。

【USSEC主催・米国視察〈4〉】イリノイ州は全米最大の大豆生産州、品質さらに向上
イリノイ州の農場の大豆畑
イリノイ州の農場の大豆畑
アメリカ大豆輸出協会(USSEC)のジム・サッターCEOがあいさつした。「『ソイコネクスト』のために米国へ来てもらい、さらに本日の農場見学にも参加してもらい感謝する。ライアンと家族の皆さんにも感謝する。普段からとてもきれいな農場だが、本日のために特に素晴らしい状態に整えてくれた。イリノイ大豆協会(ISA)にも感謝したい。USSECには各州の関連団体があるが、その中でもイリノイ州は、全米最大の大豆生産州となる。イリノイ州の皆さんはそのことを大変誇りに思っている。今回の農場見学の実現にはISAが大きく貢献してくれた」と謝辞を述べた。

〈ISAの農業担当ディレクター、USSECサステナビリティ担当、輸出業者が登壇〉


「サステナビリティと農学」をテーマにしたパネルディスカッションでは、ISAのアイリーン・パブスト市場開発マネージャーが司会を務め、ISAのアビゲイル・ピーターソン農学担当ディレクター、USSECサステナビリティマネージャーのタリク・エルリ氏、輸出業者であるデロング社のオースティン・デロング氏が登壇した。
【USSEC主催・米国視察〈4〉】イリノイ州は全米最大の大豆生産州、品質さらに向上
パネルディスカッション
パネルディスカッション
自己紹介でISAのピーターソン氏は、「ISAで生産に関わる仕事をする際、中心になるのは農場を保護することだ。私たちは作物と、作物を育てるための資源を守りたい。その過程で農家が利益を確保できるようにしたいと考えており、研究に多く投資している。より良い大豆を作るために何が必要かについて研究している。
最終的には農地や資源を適切に管理していくことも重要なので、土壌と水質にも重点を置いている。イリノイ州の環境を健全な状態に保ち、農家が自分たちの農場を何世代にもわたって利用できる資源として維持できるような判断をしていけるようにしたい」と述べた。

USSECのエルリ氏は、「さまざまなサステナビリティ関連プログラムに取り組んでいる。その一つが SSAP だ。SSAP は、米国の大豆農家が持つサステナビリティ上の優位性をまとめ、それをバリューチェーン全体に伝えていくための仕組みだ。CFPに関するプログラムにも取り組んでいる。サプライチェーン全体の関係者が、米国産大豆のCFP上の優位性を理解できるようにすることを重視している。世界各地のバイヤーと協力し、米国産大豆のサステナビリティ上の強みが、購入判断の中で重要な要素になるよう取り組んでいる」と述べた。

デロング社のデロング氏は、「当社は6世代続くアグリビジネス企業だ。私は輸出営業グループに所属し、特にコンテナ輸出を担当している。私たちは自分達をフルサービスの輸出会社と呼んでいる。単に商品を買って、コンテナに積み、海外へ送るだけではない。
農家や生産者と一緒に種子、農業資材、肥料などの投入資材、穀物の買い付け、カントリーエレベーターなど、幅広い部分に関わっている。サステナビリティ関連の文書作成にも関わっている。顧客からどのような資料を求められているかを確認し、変化していくサステナビリティ要求に応じて、必要な書類や情報を提供している」と紹介した。

〈高品質な大豆を生産、CFPの低さ、データや科学的根拠は SSAP で文書化・裏付け〉


司会のパブスト氏は、「海外の顧客が現在の米国産大豆の生産について最も理解する必要があることは何か」と尋ねた。

ピーターソン氏は、「最も重要なことは、イリノイ州では高品質な大豆を生産しているということだ。加えてきれいな大豆を生産している。収穫時期になると、多くのバイヤーから大豆の外観について質問を受ける。例えば、病害がないか、雑草種子が混入していないか、種子そのものがきれいであるかなどだ。私たちは非常に価値の高い作物を生産している。海外のバイヤーにはイリノイ州の大豆の品質を評価してもらいたい」と訴えた。

エルリ氏は、「先ほど SSAP について触れたが、特に見てもらいたいのはCFPの優位性だ。米国産の大豆は、ブラジルやアルゼンチンなど他産地の大豆と比較してCFPが低い。それを裏付けるデータと科学的根拠がある。


GLOBALG.A.P.など世界的に認知されているさまざまな基準や仕組みとも連携している。米国産大豆の優位性というのは、単にCFPが低いということだけではなく、また、持続可能な方法で生産されているというだけでもない。それらが SSAP によって文書化され、裏付けられていることが重要だ」と強調した。

デロング氏は、「海外の顧客と会話を始める時、米国は特別だという話をする。顧客から求められている多くのサステナビリティ慣行を、米国の農家はすでに実践しているからだ。必要なのは、それを顧客が求める形で正しく文書化してまとめることだ。米国の6~8代と続く家族農場の農家は土地を非常に大切にしており、土地を守りながら作物を生産している。私はまず、農家はすでに土地を大切にし、持続可能な方法で作物を作っているという話を始める。現在はそれを文書化し、認証などを通じて示していく段階にある」と語った。

パブスト氏が海外からのサステナビリティへの要求による変化について尋ねると、エルリ氏は「原料を生産する農家から輸出業者、サプライチェーンを通じて顧客まで一貫したメッセージと検証された共通のプロトコル、文書が必要になっている。それが米国産の大豆を他国の産地と差別化するものの一つだ。SSAP はその出発点となる」と強調した。


「SSAP には、証明書をバリューチェーンの先へ移転する機能がある。輸出業者が輸出証明書を受け取り、それを顧客へ渡す。さらに、その顧客がその先の顧客へつなぐこともできる。すなわち、バリューチェーンの始点から終点まで、特定の数量に対応する情報を追っていくことができる。証明書上でその数量に対応するCFPなどの情報を見ることもできる。SSAP は輸出業者と顧客の双方にとって非常に有効なコミュニケーションツールだ」と説明した。

デロング氏は、「私たち輸出業者から見ると、サステナビリティ認証は次の段階に進んできている。大豆や大豆ミールを販売しているが、その先で重要になるのは、顧客がその原料を使って何を作るのかということだ。そして、その製品が最初に出荷した国とは別の国へ輸出される可能性もある。そのため、サステナビリティに関する情報を、サプライチェーン全体を通じてつなげることが重要になっている。これは最近、輸出業者として顧客と話す際の非常に大きなテーマになっている」と話した。

〈保全農業では耕起を減らす・養分管理の最大効率化・カバークロップ利用から〉


イリノイ州の農家が導入している保全農業についてピーターソン氏は、「私たちはまず、土壌システム全体を考える。その中で主な目標としているのが、耕起を減らす、養分管理を最大限効率化する、カバークロップを利用するという3点になる。
農家と話をする場合、まずこの3点から始める」とした。また、イリノイ州では精密農業が大きく進歩しているという。「精密農業によって、種子を必要な場所に正確に配置することができる。養分管理でも必要な場所に適切に投入できる。カバークロップについても、より精密な方法で導入できる。これらすべてを一つのシステムとして連携させることができる」と説明した。

文書化や記録も重要だという。「現在の農業機械には、ほ場で何を、いつ、どこに投入したか正確に記録する技術がある。これは単に作物がどのように作られたか透明性を示すためだけではない。私たち農学者にとっては、何が機能したか、どの取り組みで収量が改善し、土壌の健全性が改善したのかを知る上でも役立つ。カバークロップも、どの種類を使うか、いつ播くか、どの機械を使うかで違いがある。利用する技術もドローンから播種機までさまざまだ。そうしたものを農家と一緒に使いながら、毎年改善を続けている」と語った。

米国産大豆の輸出競争力についてデロング氏は、「米国は大豆生産、作物生産という点で、国際的なリーダーの位置にいる。市場でサステナビリティと品質の両面で先頭に立つような立場を築いてきたからだ。米国で生産されている作物の品質が高いため、他の国で起きているような問題の多くに直面せずに済む、あるいは対応しやすい立場にある」と述べた。

エルリ氏は、「CFPについて補足すると、USSECではサプライチェーンに提供するデータについて、信頼性の高いデータ源を使うことを非常に重視している。グローバル飼料LCA研究所(GFLI)のデータベースを利用している。オランダのブロンク・コンサルタンツとも協力している。米国産大豆のCFPが低いというのは単なるマーケティング上の表現ではなく、実際に利用しているデータ源によって検証し、それを顧客に伝えている」と説明した。

最大の課題についてピーターソン氏は、「農家が新しい方法を導入するときに、リスクを自分で負わなければならないことだ。そのため、私たちは農家に対して技術支援を行っている。イリノイ州では農地を借りて農業をしている農家も多い。自分が所有していない土地に対して、土地を良くするために新しい取り組みを導入しようと考えた場合、その恩恵を最終的に誰が受けるのかという問題がある。農家がその土地を将来も借りられるとは限らないからだ。農家だけにすべてのリスクや経済的負担を負わせず、こうした取り組みを継続できる仕組みを考える必要がある」と課題を挙げた。

エルリ氏は「数多くの農業慣行を一つの分かりやすいプロトコルにまとめることだ。SSAPは独立した監査を受けており、年間約2万件の監査が行われている。米国産大豆のサステナビリティを支えるものだ」とした。その上で、「私たちの課題は、その内容を分かりやすく伝えることだ。SSAP やその他のツールを使って、農場で行われていることを分かりやすく、使いやすい形にまとめ、サプライチェーン全体で利用できるようにする必要がある」と話した。

デロング氏は、「輸出業者の立場から見ても、課題はサステナビリティに関係する。SSAP は非常に明確で読みやすく、理解しやすい形になっている。サステナビリティの制度の中には非常に複雑で、書類に埋もれてしまうようなものもある。SSAP は世界のサステナビリティ要求に対応する上で有益だ。欧州、アジア、中東など、地域によって求められるものが違い、顧客が求めるものは一つではない。米国の農家が実際に行っている取り組みをまとめる重要な仕組みになっている」と SSAP の利点を述べた。

今後5年間で米国産大豆の需要拡大につながる最大の機会についてピーターソン氏は、「生産側から見れば、最大の機会は遺伝子技術で、大きな可能性がある。もう一つがAIだ。これから農家は1A単位で考えるのではなく、農家がほ場の非常に細かなレベルまで管理できるようになる可能性に注目している」と述べた。質疑応答では、ポルトガルの参加者からEUDR(EU森林破壊防止規則)は欧州にとって大きな課題だが、USSECではどのように考えているか問われた。

エルリ氏は、「現在、SSAP には EUDR の一部の要求に対応するための機能を追加している。サステナビリティ担当ディレクターのチームでは、欧州の顧客向けに地図の機能を導入している。それにより、EUDR のデューデリジェンスで必要になる衛星データなどを利用できるようにしようとしている。EUDRがどのように進み、サプライチェーン全体でどのように実施されるのかが明らかになるにつれて、USSECのツールやプログラムも対応させていく」と対応について説明した。

〈GPSで土壌の生産性を把握して作付管理、大豆の単収は 75bus/A目指す〉


その後、農場見学が行われた。ライアン氏の農場では、農業機械は 500馬力のトラクターを使用しており、収穫・脱穀・選別を行える 24列のコンバインは、大豆とトウモロコシの両方に使っている。GPS技術の導入により、ほ場のマップを作って土壌の生産性の高さが把握できるようになったという。多いところにはA当たり3万8,000の種を、それほど多くないところには2万 8,000ほどの種を播くという。土壌の状態を見て、A当たりの作付を管理している。大豆の単収は5年平均で 73bus/Aだが、今年はそれを上回る 75bus/Aを目指す。トウモロコシは240~260bus/Aを目標にしているという。
【USSEC主催・米国視察〈4〉】イリノイ州は全米最大の大豆生産州、品質さらに向上
トラクターとコンバイン
トラクターとコンバイン
農場の総面積は8万 5,000Aで、「第8世代に良い状態で引き継がせたい」とライアン氏は語る。カバークロップは9月の第1週に飛行機やドローンを使って播く。大豆を収穫すると、カバークロップが冬の間、畑を守る仕組みだ。

農場で収穫された大豆はミシシッピ川に送られ、ニューオリンズから世界市場に出ていく。あるいは鉄道車両に載せ、ニューヨークなどから出荷される。トウモロコシは輸出以外の用途として、25マイル離れた場所にはエタノール工場があり、シカゴにはコーンスターチの会社もあるという。大豆の品質については、「われわれの大豆の品質は一貫して高くなっている。米国と他の競合国を比べると、大豆が損傷してしまう人工的な乾燥を行わない。イリノイ州では良い天候で収穫できる。冬の間気温が下がり、最適な状態を保てる。冬のない地域に比べて良い環境だ」と述べた。

〈最も使うカバークロップはライ麦、マメコガネは一般的、ドローンで食害の程度も把握〉


ISAのピーターソン氏によると、イリノイ州では大豆とトウモロコシをローテーションで植えている。農家は雑草管理を非常に重視している。ラウンドアップなどの除草剤を利用するが、カバークロップも非常にいい働きをしているという。「最もよく使うカバークロップはライ麦で、イリノイ州では越冬することができる。例えば 10月に大豆を収穫した後にライ麦を播くと秋のうちに少し成長し、その後、雪や霜、凍結を経験するが、春になると再び成長を続ける。農学者として言えば、カバークロップそのものを収益作物とは考えていない。農家はカバークロップの収量で利益を得るわけではないからだ。もちろん、カバークロップを取り入れた土壌システムを何年も続けることで得られる効果はあるが、必ずしもすぐに確認できるようなものではない」と説明した。
【USSEC主催・米国視察〈4〉】イリノイ州は全米最大の大豆生産州、品質さらに向上
ピーターソン農学担当ディレクターがカバークロップいついて説明
ピーターソン農学担当ディレクターがカバークロップいついて説明
9月末から 10月頃に収穫を迎えるが、成熟期の異なる大豆を作付けしているという。別々のほ場に成熟期の異なる品種を植えている。これは収穫時期を分散させるためだという。「大豆はできるだけ適切な水分の状態で収穫し、重量を確保したい。ほ場で急速に乾燥して、水分が下がってしまうことは望ましくない。そのため、成熟期の異なる品種を使うことが役立つ」と解説した。
【USSEC主催・米国視察〈4〉】イリノイ州は全米最大の大豆生産州、品質さらに向上
マメコガネ
マメコガネ
Japanese beetle (マメコガネ)は、この地域ではかなり一般的だという。「大豆がどの程度の葉の損傷まで、収量を低下させずに耐えられるのかを専門に研究している昆虫学者もいる。ここで見られる被害は、それほど大きなものではない」と述べた。ドローンや衛星画像の利用についても説明した。「現在ではドローンを飛ばし、葉の食害などを識別することもできる。衛星画像から10%、20%、30%といった被害の程度を把握することもできる。ただ、衛星画像だけに頼ることはない。ドローンであれば、より頻繁に飛ばすことができ、より近いところから植物を見ることができる。こうしたデータは植物の栄養状態を見るためにも利用できる。植物から反射される光の違いによって、栄養素の不足などに気付ける可能性がある」という。

このほか、「地域によって砂質の土壌もあれば粘土質の土壌もある。さまざまな生産者と仕事をしながら各地域に適した品種やカバークロップの利用方法などを研究している」と述べた。

〈大豆油糧日報2026年8月28日付〉
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