50代~60代は、子どもの独立や働き方の変化、定年退職などをきっかけに、ライフスタイルが大きく変化する時期。家庭や仕事の環境が一新する中で、「今の住まいがこれからの暮らしに合っているだろうか」と考え始める人も少なくありません。

人生100年時代といわれる今、60代以降も長い未来が待っています。住まいを見直すことは、人生を前向きに楽しむための選択肢のひとつといえるでしょう。独自の調査データや、住み替えを実践した人たちの声をもとに、50代~60代の住まいの選択について考えます。

なぜ、50代~60代で住み替えを考える人が多いのか?

SUUMO編集長の池本洋一氏によると、ここ最近は、50代~60代の住み替えマーケットが盛り上がってきたといいます。その背景にあるのが、ライフスタイルや住まいに求める価値観の変化。子どもの独立や働き方の変化などによって、これまでの住まいが今の暮らしと合わなくなり、「部屋が余っている」「家や庭の管理が大変」「車がないと暮らせない環境は不安」といった悩みを感じ始める人も。実際に、居住年数が長くなるほど、住生活満足度が低下するというデータもあるといいます。「加えて、都市部では住宅価格が高く、『自宅がこの値段で売れるなら住み替えてみよう』と考える人が増えたのも要因のひとつです」(池本編集長)。
人生100年時代、子育て期よりその後の時間の方が長いもの。住宅ローンが組める年齢で、気力・体力ともに充実している50代~60代は、住まいを見直すタイミングとして注目されているのです。

50代~60代は、どんな住まいを求めている?

SUUMOリサーチセンター「50代・60代の中古住宅への住み替え調査」によると、前住居がマンションだった人と一戸建てだった人とでは、新しい住まいを探し始めたきっかけに違いがあることがわかりました。

●【前住居種別】今の住居を探し始めたきっかけ

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

出典:リクルート「50代・60代の中古住宅への住み替え調査」

前住居がマンションだった人は、「自然環境が豊かな場所に住みたい」「憧れのエリアで暮らしたい」「趣味を楽しめる環境がほしい」など、今よりも暮らしを楽しみたいという思いから、住み替えを考えるケースが多いようです。
一方、前住居が一戸建てだった人は、「庭の手入れが負担」「階段の上り下りが大変」「使っていない部屋が増えた」など、住まいの維持管理や身体的負担を軽減したいという理由が多く見られました。

●コメント

  • 趣味の釣りをするのに便利な街に移りたかった(前住居/マンション、60代、夫婦のみ)
  • 玉川上水緑道を犬と散歩する生活がしたかった(前住居/マンション、60代、夫婦のみ)
  • 部屋が多く、掃除などの手入れが大変だった(前住居/一戸建て、60代、夫婦のみ)
  • 設備の劣化が目立ち、手間のかからないマンションへの住み替えを希望した(前住居/一戸建て、60代、夫婦のみ)

現在の住まいで「心から嬉しい、楽しい」と感じる瞬間は?

同調査では、新しい住まいで「嬉しい」「楽しい」と感じる瞬間についてもアンケートを実施。ここでも、前住居による違いが見られました。

●【前住居種別】現在の住まいで「心から嬉しい、楽しい」と感じる瞬間

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

出典:リクルート「50代・60代の中古住宅への住み替え調査」

前住居がマンションだった人は、「周辺環境・自然・眺望」がトップ。海が見える、夜景を楽しめるといった、自然環境や景色への満足度が高いことがうかがえます。
一方、一戸建てから住み替えた人は、「周辺環境・自然・眺望」と「生活利便性」が同率でトップ。「安心・ストレス/身体負担軽減」も、マンションから住み替えた人と比べて約2倍高く、駅やスーパーに近いといった便利さと、庭の管理といった負担軽減を実感していることがわかります。

●コメント

  • 都心の高層ビルを眺めてくつろぐのが楽しい(マンション→マンション、60代、子どもあり)
  • ベランダから相模湾に浮かぶ江ノ島を見て朝日を浴びるとき(マンション→マンション、60代、夫婦のみ)
  • 駅やバス停が近く、車なしでも不便なく生活できる。ゴミ問題からも解放(一戸建て→マンション、60代、子どもあり)
  • ゲリラ豪雨のたびに感じていた浸水への不安がなくなった(一戸建て→マンション、50代、子どもあり)

50代は暮らしの質向上、60代は日常生活の利便性を追求

年代によって、住み替えに求めるものや、実際に住み替えて感じるメリットに違いが見られた点にも注目です。

●【年代別】今の住居を探し始めたきっかけ

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

出典:リクルート「50代・60代の中古住宅への住み替え調査」

●【年代別】転居して楽しめるようになったこと、今の暮らしで感じるメリット

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

出典:リクルート「50代・60代の中古住宅への住み替え調査」

同調査データによると、50代では「憧れのエリア」「自然環境」「新たな刺激」など、暮らしの質を高める目的で新居を探す人が多数。転居後の暮らしで感じるメリットとしても、周辺環境、自然、眺望の良さに加え、趣味や余暇の充実を挙げています。

60代の住まい選びのきっかけは、「使っていない部屋の見直し」「病院・商業施設への近さ」といった、日常生活の利便性がより重要に。転居して楽しめるようになったことは、「交通や買い物の利便性」「住空間・住宅性能の改善」が高く、将来も快適に暮らせる環境や安心感を重視する人が多いようです。

●コメント

  • 海沿い立地でマリンスポーツを楽しめるようになった(マンション→マンション、50代、一人暮らし)
  • 音楽や映画を楽しめる設備を整え、夜景を眺めながら快適な時間を過ごしている(マンション→マンション、50代、夫婦のみ)
  • 駅やスーパーまで道が平坦なので、買い物や散歩に出やすくなった(一戸建て→マンション、60代、一人暮らし)
  • フラットで広いリビングがあり、夫婦で過ごすにはちょうどいい空間(マンション→マンション、60代、夫婦のみ)

調査データから見えてきたのは、50代~60代の住み替えが「これまでの住まいの不満を解消する(引き算)」ことと、「これからの人生の楽しみを足す(足し算)」ことのバランスで成り立っているということです。
「10年後も今の家を無理なく管理できるか?」「これから何に一番時間を使いたいか?」――そんな問いが頭をよぎったら、それは住まいを見直す絶好のタイミングかもしれません。
ここからは、実際に50代、60代で住み替えを経験した方に、そのきっかけや住まい選びのポイント、現在の暮らしについて、お話をうかがいました。

【ケース1】将来の安心最優先: 入院を機に一戸建てを手放し、駅近マンションへ
【ケース2】子世代との近居: 孫の送迎負担をなくし、移動が楽な環境へ
【ケース3】都市部への回帰: 郊外から利便性の高い街へ移り、スマートに暮らす
【ケース4】ロケーション重視: 結婚を機に、江ノ島を望む眺望の良い家へ

50代~60代の住み替え経験者に聞いた、住み替えた理由と暮らしの変化

【ケース1】Kさん(65歳)の場合。車を手放し、夫婦共通の趣味である野球観戦を楽しむ日々

項目詳細内容家族構成夫婦2人暮らし(夫65歳、妻64歳 ※子ども2人は独立)移動地域東京都東村山市→埼玉県所沢市住居形態の変化一戸建て→中古マンション住み替えの目的入院を機に将来への不安を感じ、車の運転や庭の手入れが不要な駅近マンションで安心を得るため

2人のお子さんが独立し、2年前に妻とともに一戸建てから中古マンションに住み替えたKさん(夫)。以前の住まいは駅から徒歩20分ほどで、品ぞろえのいいスーパーに行くにも車が欠かせなかったといいます。
「将来、車が運転できなくなることを考えると、やはり利便性のいい場所でないと暮らしにくくなると思い、駅徒歩5分のマンションに住み替えました」

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

(撮影/片山貴博)

新居は築約40年、約70平米の大規模マンション。ゆとりある広さですが、もともと荷物が多かったKさんは、住み替えを機にリユースに出すなどして大がかりな断捨離を決行。暮らしをすっきり整えました。

65歳までは再雇用社員としてフルタイム勤務、現在も契約社員として働いているKさん。購入時には80歳までの16年ローンで約1000万円を借り入れ、月々の返済額は約6万円。以前より2万~3万円ほど下がり、その分を趣味や生活費に充てています。
「車も思い切って手放しました。今では電車で数駅の球場に通って、夫婦でプロ野球観戦するのが楽しみ。旅行がてら、北海道まで遠征しようかと計画中です」

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

自室には趣味のプラモデルの道具がズラリと並ぶ(撮影/片山貴博)

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

(撮影/片山貴博)

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

妻の趣味である洋裁のための部屋も(撮影/片山貴博)

【ケース2】Eさん(60歳)の場合。娘家族の近くへ住み替え。

海辺の暮らしで散歩も満喫

項目詳細内容家族構成夫婦2人暮らし(夫60歳、妻69歳 ※子ども2人は独立)移動地域東京都町田市→神奈川県湘南エリア住居形態の変化一戸建て(2階建て)→ 中古マンション住み替えの目的娘世帯の近くに住んで孫の送迎負担をなくし、移動が楽なマンションで生活するため

6年前に、町田市の一戸建てから、湘南エリアのマンションへ住み替えたEさん。きっかけは、娘家族のサポートをするためでした。「共働きの娘夫婦の子育てを手伝うのに、もっと近くに住みたいと思ったのです。以前は車でも電車でも1時間近くかかっていましたが、今は歩いて15分ほどの距離になりました」

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

(イラスト/杉崎アチャ)

以前の住まいは駅まで坂道が多く、バス便も少ない立地。将来を見据え、交通の利便性がよく、階段のないフラットなマンションの方が安心だと感じたそうです。
また、「いずれ相続する際も、管理負担の少ないマンションの方がいいと思いました」と話します。

購入資金は自己資金2000万円を頭金として入れ、残りは75歳までの約20年ローンを利用。前の住居はEさんと同様「娘の近くに住みたい」というご夫婦が購入したそうで、良好な住居の循環も生まれました。
今のマンションは海に近く、ロードバイクや散歩を楽しむことも。孫が自転車で遊びに来ることも増え、日々の充実を実感しています。

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

(イラスト/杉崎アチャ)

【ケース3】Yさん(60歳)の場合。駅近マンションに住み替えて、利便性と快適性を実感

項目詳細内容家族構成夫婦2人暮らし(夫60歳、妻62歳)※子ども2人は独立移動地域神奈川県鎌倉市→神奈川県横浜市西区住居形態の変化中古マンション→中古マンション住み替えの目的旧居の老朽化や立地の不便さを解消し、生活に便利な都市部のマンションでスマートに暮らすため

6年前、鎌倉市の中古マンションから横浜市西区の中古マンションに住み替えたYさん。

当初はお子さん(次女)と3人暮らしでしたが、現在は夫婦2人で生活しています。
住み替えを考えたのは、買い物の不便さと建物設備の老朽化がきっかけ。
「以前は買い物施設が遠く、妻が大変だとこぼすようになりました。さらに配管の劣化による漏水が2回続き、この先の管理を考えると不安が。60歳を前に、住み替えるなら今だと思いました」

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

(イラスト/杉崎アチャ)

購入価格は4400万円。旧居の売却益も出ましたが、住宅ローン控除を受けるため約1000万円を借り入れ、5年ほどで返済したそうです。定年を迎えた現在は、雇用延長で嘱託として働いています。
「住み替えて驚いたのは住宅性能の高さです。騒音対策として二重サッシにリフォームしたことで断熱性が上がり、冬でも室内は22度ほどあって暖房がいらないほど。水道光熱費も下がったし、駅近になったことでタクシーを使う機会も減り、トータルの生活コストはかなり抑えられています」

住み替えるうえで、資産として将来子どもに遺すことよりも、自分たちが快適に暮らせることを優先したと話すYさん。とはいえ、都市型の駅近マンションを選んだことで、「将来的に売却しやすい安心感がある」と感じているそうです。

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

(イラスト/杉崎アチャ)

【ケース4】Jさん(60歳)の場合。

住み慣れた街で、建物性能をアップデート

項目詳細内容家族構成夫婦2人暮らし(夫60歳、妻55歳)移動地域神奈川県藤沢市 → 神奈川県藤沢市住居形態の変化メゾネット→ 中古マンション住み替えの目的結婚を機に、手狭になった家から江ノ島が見える眺望の良いマンションへ移るため

夫婦2人暮らしのJさんは、1年前、中古のメゾネットマンションから中古マンションへ住み替えました。
「最初は住み替えるつもりはなかったんです。たまたま住宅展示場で、当時の家にどれくらいの資産価値があるのかを相談してみたことがきっかけでした」
ちょうどローンの返済完済のタイミングでもあり、「買い替えるなら、支払い能力のある今」と判断。5年後では体力的に難しくなるかもしれない、という思いもあったそうです。

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

(撮影/片山貴博)

住宅ローンは【フラット35】を利用。今後満期になる保険金やボーナスを活用し、70歳までの完済をめざしています。

新居は、以前と同じエリア内に立つマンション。駅からの距離は少し長くなったものの、きつい坂道もなく、駅前のスーパーにも電動自転車で気軽に行けるそうです。
「以前はメゾネットタイプで、夏場は上階に熱がこもっていたのですが、今のマンションはフラットで過ごしやすい。前の家は築50年のいわゆる旧耐震物件だったので、その不安も解消できました」
広さは3LDK。引越しを機に大量の本も整理し、眺望のいい広いリビングで夫婦2人の時間を楽しんでいます。

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

引越しを機に本の整理を行いましたが、仕事柄多くの本を必要とするJさんの書斎は、依然としてたくさんの本に囲まれています (撮影/片山貴博)

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

ベランダからは江の島の花火大会を見ることができるそう(撮影/片山貴博)

子育てや仕事の“その先”、どう生きる? 50代以降で家を住み替えた人たちが手にした「最高の後半戦」

海辺まで自転車で行ける距離になったため、「手づくりのおにぎりを持って夫婦で海辺へピクニックに行きたい」とJさん(撮影/片山貴博)

50~60代の住み替えで知っておきたい「リ・バース60」という選択肢

住み替えを考える際、気になるのが購入資金の問題です。退職金や住まいの売却益を充てる人も多い一方で、住宅金融支援機構と提携している金融機関が提供する住宅ローン「リ・バース60」を利用する手もある、と池本編集長は話します。

通常の住宅ローンが元本と利息を毎月返済するのに対し、リ・バース60は毎月の支払いが利息のみ。例えば2000万円を金利3%で借りた場合、年間返済額は約60万円、月額では約5万円です。
契約者が亡くなった後は、相続人が売却して返済する仕組みですが、子どもが残債を一括返済することで住み継ぐことも可能です。また「ノンリコース型」を選ぶと、利用者が亡くなった後に相続人が返済をしようとした際、住宅価格が下がって、借りた金額より売り値に不足があっても、その分の返済は不要となるので安心です。

池本編集長は、「子ども世代もすでに持ち家を持っているケースもあり、『親が元気なうちに人生を楽しんでほしい』と考える人が増えている」といいます。
「子どものために資産を残すことを最優先にするより、自分たちが本当に暮らしたい環境や、心地よく暮らせる住まいを選ぶこと。無理のない返済計画であれば、満足度の高い住み替えは十分実現できると思います」

また、リ・バース60は住み替えだけでなく、自宅のリフォームにも利用可能です。将来的なバリアフリー化や断熱改修など、今の住まいをより暮らしやすくする選択肢としても注目されています。
なお、80歳までなど年齢制限が設けられているケースが多いため、気になった時点で情報収集をスタートするといいでしょう。

まずは、「これからどんな暮らしがしたいか」を考えてみる

「50代、少なくとも60代に差しかかったら、今の住まいのままでいいのだろうか、と一度立ち止まって考えてみてほしい」と池本編集長。もちろん、すぐに住み替えを決断する必要はありません。まずは、気になる物件を見に行ったり、リフォーム事例を雑誌やウェブで見たり、住宅展示場を訪れたりと、新しい暮らしをイメージするところから始めればいいと話します。

「旅行先で気になった街をもう一度訪れてみるのもおすすめです。そこで実際に暮らすイメージが持てるかどうか。そういうちょっとした行動が、次の住まいを考えるきっかけになるかもしれません。またAIに『今の自分たちの状況はこうなんだけど、どう思う?』と、子どもや友達感覚で気軽に聞いてみるのもいいと思います。ローンや補助金について、不動産会社に相談するのはハードルが高いと感じる方は、AIにアドバイスをもらうのも有効です」

住み替え経験者の方たちに共通していたのは、「老後のため」だけではなく、「これからの暮らしをもっと楽しみたい」という前向きな思いでした。趣味を楽しめるようになったり、日々の負担が軽くなったりと、暮らし方そのもの豊かに変化していたことが印象的でした。また、将来子どもが引き継ぎにくい住まいを抱え続けないことは、空き家問題の抑制にもつながるかもしれません。住まいを見直すことは、人生後半をより自分らしく過ごすための一歩といえそうです。

編集部おすすめ