6月に入り、今年も熱中症への警戒が強まっています。特に心配なのが高齢者です。

今年5月中旬の1週間に熱中症で救急搬送された人のうち、半数以上が65歳以上でした。特に、グループホームなどの高齢者施設では、夏場はずっとエアコンを動かし続ける必要があります。

真夏でも地下はひんやり

そんな中、今年2月に東京・板橋区にオープンした複合施設「トックマルット」に入るグループホームでは、一年中温度が安定している地面の下の熱を利用する「地中熱空調」という仕組みを導入しました。一体どんなシステムなのか。このシステムを開発した、地中熱エネルギー事業などを展開する、株式会社イノベックス 福宮健司さんに聞きました。

株式会社イノベックス 福宮健司さん

地中熱は、地表部分0から10Mくらいまでは外気温の影響を受けて、夏は暑いし冬は冷たくなってしまうんですが、そこから下は、実は夏でも冬でも、大体関東地方でしたら15度から18度の安定した熱が一年中そこにあります。夏にしてみたら18度というのは非常に冷たい。冬にしてみたら18度ってのはとても暖かいので、これを熱源にして特に空調などに使うと、空調の室外機の代わりを地中がしてくれるので、安定した熱エネルギーを自分の土地から調達することができる。これが地中熱の一番のいいところです。

安定した地下と熱をやり取りするために、深さ100メートルの穴を掘って、パイプを通し、水を循環させます。普通のエアコンが外の暑さ・寒さの影響を受けやすいのに対し、地中熱はこのパイプの水を通じて常に安定した温度を利用するため、猛暑や厳しい寒さといった過酷な環境の時ほど、強みを発揮する仕組み。

ただ、従来はこの穴を何本も掘る必要があり、狭い都内では導入が困難でした。しかし、今回導入された独自システム「サーチェス」は、地下水も活用して、熱を集める性能を4倍から5倍に高めました。

そのため、本来15本ほど必要だった深さ100メートルの穴がたった3本、駐車場2台分ほどのわずかなスペースで済んだそうです。

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地下から熱を取り出すパイプ(駐車場に埋められている)〉

実際に私も現場のグループホームに行ってみましたが、一般的なエアコンの室外機が並ぶ光景はなく、耳につくような大きな音もほとんどありませんでした。

東京の足元に暑さ対策? 地下の熱を使う最新空調

〈屋上に設置された地中熱空調の機械〉

24時間冷やし続けるために

では実際に、地中熱空調を導入した施設では、どんな狙いがあったのでしょうか。東京・板橋区の複合施設「トックマルット」を開発・所有する、有限会社徳嶋興業 代表取締役 塩野 誠一さんに聞きました。

有限会社徳嶋興業 代表取締役 塩野 誠一さん

もちろん最近暑いので、どうしてもクーラーは必要ですが、室外機の排熱を少なくしながらっていうことでいくと、やはり地中の方に捨てることにすれば、とってもエコでもあるし、いいことずくめかなと思って導入しました。グループホームは24時間ね、夜中だから切りますってわけにいかないので、一日中同じ温度にしなきゃいけないですし。普通室外機だとただ単に熱を捨てるだけですけど、お湯取れるっていうのは大きいかなと思っています。 

一般的なエアコンは、部屋を冷やすときに出た熱を、外へ熱風として吹き出しますが、このシステムは、その熱で水道水をあらかじめ温め、お風呂やシャワーのお湯づくりの下準備にも活用しています。室外機から街中に熱風を出さないため、都市部に熱がこもるのを和らげる効果があるだけでなく、今回の施設では、一般的なエアコンと比べて年間およそ48トンものCO2排出量を削減できる試算など、環境負荷を抑える仕組みです。ただ、気になるのは導入コスト。初期費用は一般的なエアコンより高くなりますが、東京都の補助金を利用できるほか、システム自体の省エネ性能が非常に高いため、設備の法定償却年数である15年の範囲内には、元が取れる見込みだそうです。

東京の地下を見える化

こうした地中熱は、実は東京都も普及を後押ししており、都では「東京地中熱ポテンシャルマップ」というものを公開しています。一体どんなものなのか、東京都産業労働局 産業・エネルギー政策部 石島 英樹さんに聞きました。

東京都産業労働局 産業・エネルギー政策部 石島 英樹さん

地中熱ポテンシャルマップとは、地域の地盤環境、地質であったり、地下水の状況とか、温度とかそういった情報をもとに、潜在的な地中熱の利用可能性、いわゆるそのポテンシャルが高い地域、低い地域を示したマップということになります。基本的に地中の状況なので掘ってみないとわからないっていうところがあるんですがこのポテンシャルマップは、あらかじめそれぞれ各地域の地下の状況がどういうふうになってるかっていうものを示してるものになりますので、地中熱利用を検討する際の参考にはなるかなというふうに考えております。

東京の足元に暑さ対策? 地下の熱を使う最新空調

実際にマップを見ると、都内では多摩地域のほか、山手線の内側のような大都会の真ん中も、ポテンシャルが比較的高いエリアがあるそうです。地中熱は、粘土や砂のような柔らかい地盤より、硬い岩盤のほうが熱が伝わりやすい性質があります。山手線の内側は丘陵地で岩盤の層がある場所も多いため、熱を使いやすい傾向があるそうです。地中熱ポテンシャルマップはウェブで無料公開されていて東京以外にもさまざまな自治体が公開してます。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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