公式試合球「トリオンダ」 Photo/Getty Images
最新テクノロジーを搭載 試合運営を支える重要な役割も
2026 FIFAワールドカップでは、スタンドへ飛び込んだ試合球を観客がすぐにピッチへ投げ返す光景がおなじみとなっている。野球のように記念品として持ち帰ることはできないが、その背景には最新技術を搭載した試合球ならではの理由があるようだ。
FIFAの大会では、観客が試合球をキャッチした場合、スタッフの指示に従って速やかにピッチへ返却することが求められている。記念に写真を撮るファンもいるものの、ボールを持ち帰ることは認められていない。
イングランドから観戦に訪れたジャック・グッドウィンさんは、「これだけお金をかけて来たのだから、キャッチしたボールくらいは持ち帰らせてほしい。父と来るために家を買う資金まで使ったんだ」と冗談交じりに話している。
FIFAは返却を義務づける理由について公式な説明をしていない。しかし、サッカー史研究家のチャールズ・カットン氏は、「昔は1試合に1個しかボールがないことも珍しくなかった。スタンドへ入れば回収しなければ試合を続けられなかった」と説明。現在は複数のボールが用意されているものの、その慣習が今も残っている可能性があるという。
加えて、現在の試合球は単なるボールではない。
今大会で使用されているアディダス製公式試合球「トリオンダ」には500Hzのモーションセンサーが内蔵されており、VARが用いるシステムとリアルタイムで連携。ボールが蹴られた瞬間や位置情報を送信し、オフサイド判定やゴールライン判定などをサポートしている。
ジョージア工科大学のジャッド・レディ教授は、「ボールには無線送信機や加速度センサーが搭載されており、蹴られた力などのデータを取得している」と説明。同大学のマノス・テンツェリス教授も「センサーの精度は99.99%」と、その高性能ぶりを紹介している。
もっとも、このシステムはスタジアム内の設備と連動して初めて機能するため、スタジアムの外へ持ち出しても電子機能はほとんど利用できない。また、試合前にはワイヤレス方式で充電する必要があるなど、管理にも手間がかかるという。
いずれにしても、理由は定かではない。
ただ、W杯の試合球はテクノロジーの進化によって試合運営を支える重要な機材へと変化し、単なるボールではなくなっている。ファンにとっては魅力的な記念品だが、少なくとも現状では「キャッチしたら返却」がワールドカップでは当たり前のルールとして続いていきそうだ。

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