8月優待人気トップ「イオン」は今年、株価が急落しています。イオンは総合小売業のリーディングカンパニーとして成長するビジネスモデルを確立していると判断しており、中長期的な成長性を考慮すると、私は、現在の株価水準は投資を検討する良い機会だと考えています。


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 日経平均株価の上昇が続き、「日本株はもう高くて買いにくい」と思う人もいます。逆行して下落している好業績銘柄に目を向けてみましょう。


イオン株が急落

 今年に入り、イオン(8267)が急落しています。急騰している日経平均と正反対の動きです。


イオン株価推移:2018年1月4日~2026年6月24日
8月優待人気トップ「イオン」株価急落、「仕込み時」と判断する三つの成長理由(窪田真之)
出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成

 株価急落の主な理由は、以下2点だと思います。
【1】去年(2025年)人気過熱して株価が急騰していたため、反動が出た
【2】今年は半導体・AI関連株の人気沸騰。テーマに乗らないイオンは売られやすい


 私は、イオンは総合小売業の勝ち組として成長するビジネスモデルを確立していると判断していて、2018年以降、投資判断「買い」を続けてきました。


 ただし、2025年には株価が急騰して過熱感が出たため、2025年3月13日(株価1,294.3円)以降は、買いレポートを出すのを停止していました。今年に入ってからの急落で6月24日に株価が1,318.5円となったので、これからまた、買い推奨レポートを出していきます。


 イオンは「株主優待」人気銘柄として有名です。楽天証券「株主優待検索」で長年、2月・8月の優待銘柄で人気トップ【注】の座を維持しています。優待を楽しみながら、長期投資するのに良い銘柄と考えています。


【注】2月・8月優待で人気トップ


 2月・8月に株主優待を得る権利が確定する銘柄は194銘柄です。

楽天証券のお客さまで保有している株主の数が多いほど「人気が高い」と判断し、保有株主数の上位銘柄をランキングしています。


 2月・8月優待で、人気トップはイオン、第2位はクリエイト・レストランツホールディングス(3387)、第3位はビックカメラ(3048)、第4位は良品計画(7453)、第5位はセブン&アイホールディングス(3382)です(6月24日時点)。


イオンの株主優待内容:買い物返金カードなど
8月優待人気トップ「イオン」株価急落、「仕込み時」と判断する三つの成長理由(窪田真之)
出所:楽天証券「株主優待検索」、情報提供元ミンカブ・ジ・インフォノイド

イオンの投資判断は「買い」

 イオンは、総合小売業の勝ち組として成長していくビジネスモデルを完成させたと考えており、投資判断「買い」としています。


 今年に入ってから株価が急落しましたが、業績は好調で、表にもあるように、今期は前期に続き営業利益で最高益を更新する見通しとなっています。


イオンの連結売上高、営業利益、純利益:2026年2月期(実績)~2027年2月期(会社予想)
8月優待人気トップ「イオン」株価急落、「仕込み時」と判断する三つの成長理由(窪田真之)
出所:同社2026年2月期決算短信より作成

 イオンは、構造改革が進み、成長への期待が見えてきたと評価しています。ただ、今後の課題もまだ残っています。課題についてコメントする前に、まずイオンの成長につながると筆者が期待する三つのポイントについてコメントします。


【ポイント1】アジアでの成長加速へ

 イオンのアジア事業は、中国が伸び悩む中、ベトナム事業の成長が加速してきました。ホーチミン、ハノイに加え、中部の中核都市フエに出店しています。


(参考)イオン2026年2月期の地域別営業利益
8月優待人気トップ「イオン」株価急落、「仕込み時」と判断する三つの成長理由(窪田真之)
出所:同社決算補足資料(また、少数点以下切り捨てにより合計が100にならない場合があります)

 表の地域別営業利益の構成比で、海外は22%に達しています。海外の利益構成比が3割を超えると、海外で成長する小売企業として投資家の見る目が変わります。これまで、イオンはドメスティックな(国内中心の)小売業と見なされていましたが、先行き海外で成長していく小売業と見られるようになると考えています。


 なお、表の地域別利益は、イオンリテール(小売事業)だけでなく、総合金融、ディベロッパー(テナント収入)事業の利益を加えたトータルでの海外利益の構成比です。海外も国内と同様、小売事業だけの収益性は低いが、総合金融、ディベロッパー事業を加えて、収益性を高めるスタイルを確立しつつあります。


【ポイント2】ヘルス&ウエルネス、総合金融・ディベロッパー事業で高収益を稼ぎ、成長するビジネスモデルを確立

 イオンは、総合小売業として生き残り、成長するビジネスモデルを確立したと判断しています。総合スーパーが、専門店(ユニクロ無印良品、ABCマートなど)に押されて衰退していったのは過去の話。


 今は、郊外に造られたイオンの巨大なショッピングモールは、地域でもっとも競争力の高い小売業の一つになっています(セブン&アイの「セブンパーク」も同様に高い競争力を持つ)。


イオンは、競争力の高い専門店はテナントとして積極的に取り込んでモールの魅力を高めるとともに、テナント料をとって稼ぐ形としています。テナントとして取り込まない専門店に対しては、プライベートブランド(PB)品を強化することで逆に反撃に出ています。


 それでも、イオンの巨大なショッピングモールで高収益を稼いでいるのは、現時点ではイオンリテール(小売業)ではありません。総合金融(カード事業など)、ディベロッパー事業(テナント料)で高い利益を上げています。小売、金融、ディベロッパーの3事業を合わせて、競争力の高いショッピングモールを造って稼ぐビジネスモデルを、国内でも海外でも確立しています。


 モール外では、ドラッグストア「ウエルシア」がこれまで安定成長してきました。今後の成長余力は低下してきていますが、ツルハを買収したことで、国内のドラッグストア最大手としての地位を生かし、安定的に高収益を稼いでいくと期待しています。


 前期は、ヘルス&ウエルネス、総合金融、ディベロッパーの3部門で、イオンの営業利益の67%を稼いでいます。イオンリテールの収益が低くても、3事業を合わせて、高収益を実現しています。


(参考)イオン2026年2月期の事業セグメント別営業利益
8月優待人気トップ「イオン」株価急落、「仕込み時」と判断する三つの成長理由(窪田真之)
出所:同社決算説明資料より作成(注:事業セグメントに「国際」があるが、これは小売業の海外利益だけ示す。総合金融・ディベロッパー・セグメントの中にも海外利益が含まれています。また、少数点以下切り捨てにより合計が100にならない場合があります)

【ポイント3】小売業の利益拡大のカギとなる価値訴求型PBが始動

 イオンリテール(小売業)の利益率が低いことが、この後で述べる「残された重要課題」です。ただ、収益改善の重要な一歩を踏み出しつつあることに期待が持てます。

それが、「価値訴求型」PB戦略の始動です。


 小売業の競争力を左右するのは、「商品力」です。ナショナルブランド(NB)中心の小売業は粗利が稼げず、値段のたたき合いになって衰退していきます。商品力を高めるには、魅力的なPBの品ぞろえを豊かにしなければなりません。


 ところで、NBからPBへの移行に、2段階あります。二つのステップを完了して、初めて強い「商品力」を持つ小売業といえます。


<ステップ1>NBから、価格訴求型(低価格が売り)PBへシフト
<ステップ2>価格訴求型PBから価値訴求型(ここにしかない優れもの)PBへシフト

 イオンは、ステップ1でかなりの成果を上げましたが、それだけではいずれPB同士の価格のたたき合いに巻き込まれるリスクがあります。そこで今、ステップ2を強化しつつあるところです。


 価値訴求型のPB拡大は始まったばかりですが、着実に成果を上げつつあります。食品や衣料品で成功例が増えています。ただし、「住居余暇」分野でまだ価値訴求PBの成功例が少ないのが課題です。台所用品や日用品・雑貨で商品力を高めるには、まだ時間がかかりそうです。


 PBで高成長を遂げてきた小売業のほとんどが、この2ステップを通ってきています。例えば、ユニクロやニトリ。最初は中国製の安い衣料品や家具を売るブランドと見られていましたが、今は高機能の優れものを売るブランドとして認知され、成長を続けています。


 セブン‐イレブンもそうです。最初はジャンク・フードを売る店と思われていましたが、商品力を高めることで、今はセブンプレミアムという高品質の優れものを売る店と認知されています。


 ステップ2への移行は、一朝一夕にできません。ユニクロやニトリ、セブン‐イレブンの例では、ブランド・イメージを変えるのに10年くらいの歳月を要しています。


 イオンは、「トップバリュ」という価格競争力のあるブランドを持つ小売業として、消費者から高い支持を得ています。これから、価格訴求力だけでなく、価値訴求力でも高い支持を得ることを目指します。ユニクロやニトリのような高いブランド力を得るには、まだ長い年月がかかるでしょう。ただし、その確かな一歩を踏み出したと考えられることが評価できます。


残る課題

 以下、私が重視する二つの課題についてコメントします。


【課題1】イオンリテールの収益改善は道半ば

 既に説明した通り、イオンの重要課題は、イオンリテール(小売業)の利益率が低いことです。収益性を高めるための構造改革は、着実に進んでいますが、まだ十分な成果が出ていません。


 商品力強化・デジタル売上の拡大の他に、セルフレジの導入、省エネ投資、在庫削減などのコストカット策を進めていますが、生鮮品の仕入れ価格高騰・電気代や人件費の上昇に追いついていません。


【課題2】構造改革のための特別損失が大きいため、最終利益は低水準のまま

 収益性の低いスーパーストア事業などの構造改革で、高水準の特別損失が出続ける見込みです。そのため、イオンは経常最高益で高水準の利益を上げても、純利益の水準は低いままです。


 いずれ低採算店舗の構造改革を完了すれば、純利益でも高水準の利益を上げるようになると考えられますが、それにはまだ3~5年を要する可能性があります。


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(窪田 真之)

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