先週の日経平均は中東情勢や日米長期金利の上昇を受け、AI・半導体株を中心に大きく下落しました。日足のチャート上では下値を保ちつつも、「両にらみ」の状況で相場のムードに左右されやすい状況です。
売りに押される展開が目立った先週の日経平均
先週末21日(金)の日経平均株価は6万6,016円で取引を終え、前週末の終値(6万8,713円)からは2,697円の下落となりました。
<図1>日経平均の5分足チャート(2026年8月17日~8月21日)
あらためて、図1で先週の値動きを5分足チャートで辿ってみると、週初の17日(月)は6万9,000円台を維持する堅調な推移だったのですが、翌18日(火)から19日(水)にかけては6万5,000円台あたりまで急落する動きとなりました。週末にかけてはやや持ち直しを見せたものの、株価反発と呼べるほどの力強さには欠けていた印象です。
こうした値動きを株価材料と結び付けていくと、週半ばの株価急落は、中東の地政学リスクの高まりと、日米の長期金利の上昇が嫌気され、AI・半導体関連株を中心に売られたことが影響しました。
週末にかけての持ち直しについては、19日(水)に米財務省が米長期金利の上昇にブレーキをかける対策を講じたことがきっかけになったものの、米10年債利回りなどの低下が一時的だったこともあり、本格的な株価反発には至りませんでした。
また、週間の日経平均寄与度ランキングの状況を見ても、下落寄与度の上位に東京エレクトロン(8035)やソフトバンクグループ(9984)、アドバンテスト(6857)、イビデン(4062)などのAI・半導体関連銘柄が多くランクインしていることが確認できます(図2)。
<図2>日経平均寄与度ランキングの状況【週間】
■日経平均の週間下落幅:2,697円(8月14日と8月21日の終値比較)
このほか、上昇銘柄数(77銘柄)よりも下落銘柄数(148銘柄)が多いことや、上昇の寄与度合計(269円プラス)と比べて下落寄与度(マイナス2,966円)の方が圧倒的に大きいことなどからも、先週は全体的に売りに押され気味だった様子がうかがえます。
チャートの「両にらみ」から感じ取れる、相場のムード優位で動く状況
とはいえ、テクニカル分析の視点で日足ベースのチャートを捉えると、「下方向への意識が強くなっている」というわけではなさそうです。
<図3>日経平均(日足)とMACDの動き(2026年8月21日時点)
図3は日経平均の日足チャートとMACDの推移を示したものです。
先週の値動きは前回のレポートでも指摘していたように、株価が上昇基調を強めていくために超えなければならなかった「下値ライン」のハードルを超えることができず、下落する展開となりました。
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それでも週末の株価は75日や25日移動平均線あたりに位置しており、移動平均線がサポートとして機能していたことや、下段のMACDもまだ「0円」ラインより上をキープしているため、売りに押されていたとはいえ、短期的にはまだ相場は崩れていません。
したがって、今週は6万5,000円水準を中心に、上は7万円までの範囲、下は6万円までの範囲内で株価の落ち着きどころを探っていく展開が想定されます。
もっとも、25日移動平均線が75日移動平均線を下抜ける「デッドクロス」が出現していることはネガティブなサインになっていますが、現時点のチャートの形状は「上値も重たいが下値も堅い」印象で、目先の株価が上方向にも下方向にも動きやすい「両にらみ」の状況と言えます。
実際に、現在の相場を取り巻く環境や材料を見渡すと、仮に目先の株価が大きく上昇もしくは下落しても、それぞれの材料が揃っており、どちらも「それなりの理由をつけて説明できてしまう」ため、日足チャートからは「足元の株式市場が相場のムードに流されやすくなっている」ということが読み取れます。
今週の注目イベント:ジャクソンホール会議とエヌビディア決算
そんな中で迎える今週の株式市場ですが、米国の重要イベントに注目が集まります。
そのひとつが27日(木)から29日(土)にかけて開催される「ジャクソンホール会議(カンザスシティ連邦準備銀行主催の経済シンポジウム)」で、そこでケビン・ウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演が行われます。
今後の米金融政策のスタンスを探るヒントとして注目されているわけですが、先週の株式市場が米金利(債券利回り)の上昇が売り材料になっていただけに、発言内容次第では株価を大きく動かすことが想定されます。
もっとも、ウォーシュFRB議長の講演は日本時間28日(金)の23時に予定されており、講演内容を日本株市場が消化するのは翌週31日(月)になります。そのため、今週は「ジャクソンホール会議待ち」ということで、様子見姿勢をもたらす材料として意識されるかもしれません。
そして、ふたつめのイベントは、26日(水)の米株市場の取引終了後(日本時間では27日(木)の朝)に発表される半導体大手のエヌビディア(NVDA)の決算です。
売上や利益の伸びといった業績とともに、今後のAI投資スタンスや次世代半導体の進捗状況、先日打ち出した5,000億ドル規模のAI金融構想の詳細などが焦点になります。
エヌビディアからは引き続き「攻め」の姿勢が打ち出されることが予想されますが、足元の市場の視点は「巨額の投資に見合うリターンが出る速度で、物理的なリソース不足や価格高騰などを克服してインフラを稼働させられるか?」に向かっており、株式市場が好意的に受け止めないことも考えられます。
<図4>米エヌビディア(日足)とMACDの動き(2026年8月21日時点)
図4はエヌビディアの日足チャートに、過去の決算発表のタイミングを書き加えたものです。ここ1年ほどの期間を見ると、決算発表が株価上昇の起爆剤になっていないだけに、今回の決算を通じて、足元の金利上昇への警戒感をカバーし、相場のムードをポジティブ側に引き戻すだけのサプライズや強さ、安心感を示せるかがカギになりそうです。
このほか、クラウドストライク(CRWD)やセールスフォース(CRM)、インテュイット(INTU)などのAI・ソフトウェア関連企業も今週に決算を発表する予定のため、米国株市場の動きに日本株が追随する場面が増えることになりそうです。
中長期のトレンドについても重要な局面
そして、日本株については、「週末28日(金)の日経平均がいくらで終えるか?」も重要になってきます。
<図5>日経平均(週足)とMACDの動き(2026年8月21日時点)
図5は週足の日経平均チャートとMACDの推移を示していますが、週末の株価が注目される理由は3カ月間の値動きの中心線である13週移動平均線の傾きが変化するかもしれないからです。
先週末時点では、13週・26週・52週の3本の移動平均線が揃って右肩上がりとなっており、中長期のトレンドはまだ上昇基調を維持していますが、下段のMACDについては低下が続き、シグナルも下抜けているため、トレンドの勢いが失われ始めています。
そこで、注目されるのが13週移動平均線になります。移動平均線の計算上、新たに計算に加わる株価と、計算から外れる13週間前の株価を比べて、新たに計算に加わる株価が外れる株価よりも高ければ、13週移動平均線の傾きは上方向を維持することができます。
つまり、今週末28日(金)の終値が、計算から外れる13週間前の6万6,329円を下回ってしまうと、13週移動平均線の傾きが下方向に転じてしまいます。
とはいえ、今週の取引で13週移動平均線の傾きが下向きになったとしても、本格的な下落トレンドの局面を迎えるとは限らず、もみ合いが続く時間調整となる可能性もあるため、過度に心配する段階ではありません。ただ、「これまでのように、積極的に上値をトライしにくくなるかも」しれないことは押さえておく必要はありそうです。
(土信田 雅之)

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